
鐵 宏之
合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員/てつ福祉相談室 管理者
主任介護支援専門員 社会福祉士
第8回
訪問以外での生活支援記録法の活用②
電話や情報連携ツールによるサービス事業所との連絡調整
〈事例概要〉
90代,女性,要介護2,独居。エレベーターがない団地の3階。高血圧症,軽度認知症がある。
利用しているサービスは次のとおり。
・デイサービス(週3回):食事,入浴,交流
・訪問介護(週6回):3回はデイサービスへの送り出し,その他ごみ出し,掃除,買い物支援
・訪問診療(月2回)
・福祉用具:手すり,車いす
・配食サービス(週4回):昼食
従来の記録法では多くの場合,次のような記録内容になっていると思います。
5月16日 13:00 ~13:05
Aヘルパーステーションより電話
Bサービス提供責任者より。最近お弁当を残すことが多くなっているが,買ってきた総菜やパンは食べることができている。食欲が出ないと話していた,と報告あり。訪問時に食事の声かけを依頼する。
5月16日 13:15 ~13:20
Cデイサービスへ電話
D相談員へ連絡。昼食の状況を確認。全量摂取することができており,本人はみんなで食べるからおいしいとのこと。体重は前月と変化はない。食事の様子と体重推移の確認を依頼する。
5月16日 13:30 ~13:40
Eクリニックへ情報連携ツールで連絡
F医師へ自宅での食事量低下の状況を連絡。食事量と体重の推移を観察してほしいと指示を受ける。
これは,食事に関する複数の事業所とのやり取りの記録です。これらの記録の分かりにくい点を確認していきます。
①具体的な数字の記載がない
例えば,ヘルパーステーションからの報告にある「お弁当を残す」が,週に何回残しているのか,何割程度残っているのかが分かりません。また,情報が不足しているのは,ヘルパーステーションからの報告が不足しているためか,ケアマネジャーの確認が不足しているためかが記録から判断できません。
②ケアマネジャーの援助内容とその根拠が不明確
訪問介護,デイサービスには「食事の声かけ」を依頼し,訪問診療には「報告」しています。しかし,声かけや報告の具体的な内容が不明確です。それら援助への根拠が読み取れません。
③今後の方針が不明確
食事に課題がある人ですが,今後どのような援助を支援者が行うのかが読み取れません。ケアマネジメントは,ケアマネジャー個人と利用者の契約ではなく,事業所と利用者の契約です。記録者となったケアマネジャーだけが支援の内容が分かればよいというものではありません。この記録は,記録者であるケアマネジャーにしか分からない内容と言えます。
一方,生活支援記録法では,次のような記録内容になります。
5月16日 13:00 ~13:05
Aヘルパーステーションより電話
F:自宅での食事状況
O(Bサ責):先週からお弁当を残すことがあります。デイサービスへの送り出し以外の3回のうち,2回は半分程度残しています。買ってきた総菜やパンは召し上がっているようです。最近食欲が出ないということです。
A:総菜やパンを食べることができており,配食サービスのメニューに理由があるのかもしれない。デイサービスでの食事状況の確認も必要。
I:支援時に食欲低下の理由や,どのようなものが食べやすいのか確認してほしい。デイサービスに食事状況を確認したい。
O(Bサ責):ヘルパーに伝えます。
P:自宅およびデイサービスでの食事状況を確認する。
5月16日 13:15 ~13:20
Cデイサービスへ電話
F:デイサービスでの食事状況
O(D相談員):みんなで食べるからおいしいと全量召し上がっています。5月1日時点で体重40kg,前月は38kgです。
A:他者と過ごすことが好きな方で,自宅では食事が楽しめないことで進まない可能性がある。
I:一人で過ごすことで自宅の食事が進んでいない可能性がある。デイサービスでの食事状況と体重の推移を見守ってほしい。
O(D相談員):ご本人に自宅でもなるべく召し上がるよう伝えます。
P:主治医に自宅,デイサービスでの食事状況を報告。
5月16日 13:30 ~13:40
EクリニックF医師へ情報連携ツールで連絡
F:食事状況の報告
I:情報連携ツールにて。デイサービスでは,他者と一緒にいることで食事が進み,全量摂取できている。体重は5月1日時点で40kg,前月は38kg。ヘルパーからは,配食サービスを週2回は半分残しており,総菜やパンは食べていると報告あり*。
O(F医師):しばらくは訪問した際に,関係者で食事摂取の声かけとお弁当や総菜などの摂取状況の確認を行ってください。体重減少が続くようであれば,栄養補助食の処方も検討します。
A:人とのかかわりで食事摂取が改善するかどうか評価する必要がある。
I:訪問介護に支援時の食事の促し,デイサービスでの食事状況と体重推移の観察の継続を依頼したい。
P:訪問介護に支援時の食事摂取の声かけおよび食事状況の確認,デイサービスに食事状況と体重推移の確認の継続を依頼。
*前段階の訪問介護,デイサービスからの報告を踏まえ,ケアマネジャー(記録者)が情報連携ツールを使って医師に報告しているため,イレギュラーな使い方ですが,ここは「I」となります。
このように,一つひとつのやり取りを生活支援記録法で残すことで,自分以外の他者が記録を読んでも,その内容を理解することができます。また,このように記録を書くことで,場面を振り返って再アセスメントすることができ,支援の質向上にもつながります。
ファックスや情報連携ツールによるサービス事業所との連絡調整
〈事例概要〉
80代,男性,要介護5,妻と同居。アルツハイマー型認知症,慢性心不全。ベッド上寝たきりであり全介助。介護は妻が大半を担っている。妻も高齢であり,同じ話を繰り返すことがあるものの,サービスや自分の予定の管理,日常生活や介護に支障はない。
利用しているサービスは次のとおり。
・訪問看護(週2回)
・訪問介護:通所介護,短期入所生活介護の送り出し,迎え入れ
・通所介護(週2回)
・短期入所生活介護
・訪問診療(月2回)
・訪問歯科(月1回)
従来の記録法では多くの場合,次のような記録内容になっていると思います。
5月13日 9:00
GヘルパーステーションH氏よりファックス
本日ショートステイと聞いていたが,奥様よりキャンセルしているということでした。デイサービスやショートステイの予定がはっきりしないのかもしれません。
5月18日 14:00
I訪問看護ステーションJ看護師より情報連携ツールで連絡
本日支援に入ったが,デイサービスでの食事量が少なくなってきたと気にされている。連絡帳を見る限り,食べている様子。言動のつじつまが合わないことがあったり,予定を時折忘れることがあるとおっしゃったりしており,心配している。本人へのケアは問題なく行われている。
これは,ファックスや情報連携ツールの文字を転記しただけであり,今後どのような支援を行うのか不明確な記録です。
一方,生活支援記録法では,次のような記録内容になります。
5月13日 9:00
GヘルパーステーションH氏よりファックス
F:妻の物忘れ
O(H氏):本日ショートステイと聞いていたが,奥様よりキャンセルしているということでした。デイサービスやショートステイの予定がはっきりしないのかもしれません。
A:同じ話の繰り返しはこれまでもあったが,サービスの予定を間違えることはなかった。妻に不調が生じていないか,介護に支障が生じていないか確認が必要。
I:妻の様子および本人への介護に影響が生じていないか気にかけてほしいことを返信。
P:他サービス担当者へ妻の様子確認の依頼,訪問時に状況確認。
5月18日 14:00
I訪問看護ステーションJ看護師より情報連携ツールで連絡
F:妻の物忘れ
O(J看護師):本日支援に入ったが,デイサービスでの食事量が少なくなってきたと気にされている。連絡帳を見る限り,食べている様子。言動のつじつまが合わないことがあったり,予定を時折忘れることがあるとおっしゃったりしており,心配している。本人へのケアは問題なく行われている。
A:先日のヘルパーステーションの報告から,妻の混乱が続いており,様子の確認が必要。
I:妻に連絡を取り,訪問することを返信。
P:訪問時に本人の状態,妻の様子を確認する。
緊急対応・実施したことを記録する場合
これまで,従来型の記録を生活支援記録法に置き換えて記録することの有用性を解説してきました。しかし,すべてのやり取りを生活支援記録法で書かなければならないというわけではありません。
緊急対応の場合は,時間を記録することが重要な場合もあります。また,諸連絡を記録する際,詳細な内容ではなく,実施したことを記録することもあります。そのような場合は,次のような記録を残します。
例)緊急対応など時間を記録することが重要な場合
○月○日 9:15 ヘルパーより電話
支援中に意識消失があり転倒。救急要請を行い,家族が救急車に添乗している。
○月○日 9:45 ヘルパーより電話
搬送先は○○病院とのこと。
例)実施したことを記録する場合
○月○日 13:30 訪問看護へファックス
○○訪問看護へケアプランを送付する。
○月○日 15:00 ○○総合病院へファックス
○○医療相談員へ○○様入院時情報提供をファックス,受領を確認する。
まとめ
これまでお伝えしてきたとおり,ケアマネジャーだけが支援を理解していればよいのではなく,事業所として支援を理解する必要があります。そのためにも,重要な支援のやり取りに関しては,生活支援記録法を用いて誰が読んでも理解できるようにすることが大切です。
※本記事は『達人ケアマネ』2020年8-9月号(vol.14 no.6)の誌面に掲載したものです。
鐵 宏之●2004年3月日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科卒業。知的障がい者施設の支援員,有料老人ホーム介護職員,デイサービスおよびショートステイの生活相談員,管理者を務め,2011年3月介護支援専門員を取得。2012年9月より居宅介護支援事業所にて勤務。2018年2月新座市で独立型居宅介護支援事業所の「てつ福祉相談室」を開設。埼玉県介護支援専門員更新研修ファシリテーター,介護職員初任者研修講師,ケアマネジャー向け研修,株式会社ウェルモのCPA(AIを使ったケアプラン作成)のアドバイザー,産業ケアマネジャーを行う。生活支援記録法との出合いは2016年5月,埼玉県立大学IPW専門職連携講座に通っている際に,開発者である嶌末准教授から「鐵さん,これ面白いからやってみて」と渡された1枚のA3用紙に書かれた記事がきっかけ。2018年1月より,現場向けの学びの機会が必要と考え独自のプログラムを考案,各地で研修や勉強会を始める。2018年1月~2019年7月時点で全国30カ所,1,000人以上の医療,介護,福祉,教育関係の専門職に生活支援記録法の勉強会を開催。