Free_支援記録の書き方・活かし方

鐵 宏之

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員/てつ福祉相談室 管理者
主任介護支援専門員 社会福祉士


第6回

生活支援記録の習得方法②





習得方法②:実際の記録を生活支援記録法へ変換する

 前回は,生活支援記録法に慣れる方法として習得方法①を説明しました。生活支援記録法の構造に慣れた上で,次は実際の記録を基にケアマネジャーとして支援を振り返り,生活支援記録法へと変換します。



 次のものを用意します。


ワークシート

最近の落ち着いている利用者の訪問時の記録



 初回訪問,カンファレンス,困難事例などは情報量が多く習得のための練習としては時間がかかり過ぎてしまいます。まずは「落ち着いている利用者の訪問時の記録」を用います。



 私の研修では,2人1組で記録に関するワークを行います。このワークは1人でも行うことができます。今回は,事業所内での学びを想定し,2人1組のワークと1人でできるワークについて説明します。





2人1組で行うワーク

 進め方は次のとおりです。


①ペアをつくります。

②持参記録をテーブルに置きます。

③ワークシートをテーブルに置きます。

④質問者,回答者を決めます。

⑤質問1~7まで質問者が質問します(表3)。




⑥回答者は答えながらワークシート上段にメモをします。

⑦回答者がメモ記入を終えたら,質問者と回答者を交代します。

⑧交代後,①~⑥を行います。

⑨両者メモ記入後,下段に清書を記入します。

⑩ほかのFがないか検討し,メモを基に清書します。

※事例検討にならないよう注意してください。



〈ワーク実施時の注意点〉


・用意した記録にFSOAIPの項目を割り当て並び替えない

 従来の叙述記録は,ほとんどの場合,「FSOAIP」の項目が満たされていません。そのため,記録は援助場面を振り返るための道具という位置づけになります。場面を振り返り,何に着目していたのかを明確にし,FごとにSOAIPを整理します。



・Fは「モニタリング」のような大まかな目的は書かない

 モニタリングというようにFが曖昧だと,それに続くSOAIPは書かれる情報が広がりすぎてしまい,読みにくい記録になってしまいます。Fを設定する際は,歩行時の姿勢,嚥下の様子,服薬状況,体調について,妻の介護負担というように具体的に示します。



・事例検討にならないように注意

 質問者は書かれた質問のみを行い,深堀りはしません。場面を振り返り整理された記録にすることがワークの目的です。



・回答者は回答した内容をメモすることを忘れない

 清書する際は,上段メモに書かれた内容を基に文章に直していきます。メモを基に清書する際は,場面を振り返り,再アセスメントしていることを意識すると効果的です。



・記録の変化を共有する

 清書が終わったら,もともとの記録と読み比べを行い,記録にどのような変化が表れたのかを互いに共有します。事業所で複数のペアをつくっている場合,ほかのペアに記録を見てもらい変化を共有することもよいでしょう。





一人で行うワーク

 用意するものは2人1組で行う場合と同じです。記録を見ながら質問票を確認し,ワークシート上段にFごとの内容をメモします。1つ目のFのSOAIPの整理ができたら,次のFについて検討します。ペアで行う場合は質問者と回答者に分かれていましたが,自問自答になります。





実践への活用

 時間の流れに沿って書く叙述記録には特別なスキルは必要ありません。しかし,FごとにSOAIPを整理して記録する「生活支援記録法」を習得するには,着目点ごとに整理するという発想の転換が必要です。そのためにもまずは,前述した方法により「慣れる」ことが大切です。



 事業所内で実践するに当たっては,次のようなアプローチも有効だと思われます。



事業所として支援の質の向上のために記録法を統一するという明確な方針を立てる。

FSOAIPの項目をPC,ノートなどに貼る。

援助場面(訪問,来所,電話など)のメモをFSOAIPで取る(表4)。

Fを意識した声かけを行うことで,話題が逸れず整理された言葉を引き出すことができる。






まとめ

 1カ月間,全利用者の訪問時の記録を生活支援記録法で書けば,必ず慣れてきます。生活支援記録法の構造は特殊なものではありません。ケアマネジャーの思考と実践に即しています。着目点ごとに整理して記載するということを理解すれば,しっくりくるものだと思われます。



 次回は,生活支援記録法による記録を,事例を交えて紹介します。



※本記事は『達人ケアマネ』2020年6-7月号(vol.14 no.5)の誌面に掲載したものです。



鐵 宏之2004年3月日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科卒業。知的障がい者施設の支援員,有料老人ホーム介護職員,デイサービスおよびショートステイの生活相談員,管理者を務め,2011年3月介護支援専門員を取得。2012年9月より居宅介護支援事業所にて勤務。2018年2月新座市で独立型居宅介護支援事業所の「てつ福祉相談室」を開設。埼玉県介護支援専門員更新研修ファシリテーター,介護職員初任者研修講師,ケアマネジャー向け研修,株式会社ウェルモのCPA(AIを使ったケアプラン作成)のアドバイザー,産業ケアマネジャーを行う。生活支援記録法との出合いは2016年5月,埼玉県立大学IPW専門職連携講座に通っている際に,開発者である嶌末准教授から「鐵さん,これ面白いからやってみて」と渡された1枚のA3用紙に書かれた記事がきっかけ。2018年1月より,現場向けの学びの機会が必要と考え独自のプログラムを考案,各地で研修や勉強会を始める。2018年1月~2019年7月時点で全国30カ所,1,000人以上の医療,介護,福祉,教育関係の専門職に生活支援記録法の勉強会を開催。