
鐵 宏之
合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員/てつ福祉相談室 管理者
主任介護支援専門員 社会福祉士
第5回
生活支援記録の習得方法①
生活支援記録法では,ケアマネジャーが着目したことを項目ごとに整理して記録することになります。例えば,毎月の訪問をイメージしてみます。
ケアマネジャーは漠然と訪問しているのではなく,さまざまなことに着目して訪問しています。例えば,体調や歩行状態,楽しみ,介護負担などに着目します(F)。援助場面で利用者や家族の状態から新たな課題に着目することもあります。
ケアマネジャーは着目したことについて利用者や家族の言葉(S),そのほかの情報(O)を踏まえてアセスメントを行い(A),アセスメントに基づいた実践(I)を行います。それに対して,利用者や家族の反応(S,O)もあるでしょう。
これら一連のやり取りはその場で完結するのではなく,継続していくものであり,支援の方針を検討します(P)。
このように,援助の場面(訪問や面談,電話など)でケアマネジャーが行っている一連のプロセスを着目点ごとに整理する方法が,生活支援記録法と言えます(図1)。
習得方法①:画像を基に支援を考える
ケアマネジャーとして利用者宅に訪問したと仮定し,その際の支援について考えます。
①画像を用意する
まずは画像を用意します。今回は,私が研修で使用しているもので説明します(図2)。高齢者の写真を使用しているのは,その人の様子をイメージしやすくするためです。写真が用意できない場合は,イラストでも可能です。
本人の言葉であるS,どのような状況であるのかを示すOを設定します。生活支援記録法の構造に慣れるために,SやOの情報を少なくして,Fをある程度絞りやすくするとよいでしょう。慣れてきたら,SやOの情報量を多くすることで,複数のFを設定し一連の支援を考える練習をすることができます。
②ワークシートを用いて支援を考える
ワークシートは,Excelなどで作成していただければ幸いです(資料1)。上段は,左からF→S→O→A→I→(S,O)→Pの順に並んでいます。上段は思考を整理するためのメモ欄として使用します。下段は,支援経過記録を清書するために使用します。次の手順でメモ欄を埋めていきます。
〈上段作成の手順〉
・F欄
画像およびS,Oの情報からケアマネジャーが着目したこと(F)を記入します。最初にFを設定するのは,ケアマネジャーの援助が目的を持って行われているためです。後からFを考えると,それに続くSOAIPが曖昧になる恐れがあります。ただ,当初のFの内容がSOAIPを考えた際により分かりやすい(記録者および他者)言葉に変化することはあります。
・S欄
画像内のS情報から,Fに関連する部分を抜き出します。構造化記録は着目点ごとに整理して記録をする方法であり,実際の援助にあるような時間の流れを無視して記録します。例えば,さまざまな話題が飛び交う援助場面で,体調に関するSを抜き出してまとめるなどです。
・O欄
画像および画像から読み取れるO情報から,Fに関連する部分を抜き出します。設定したFに関連した情報を意識することで,不要な情報を記載せずに済みます(情報の整理ができる)。文字情報だけでなく,画像からも読み取れる情報が多くあります。実際の援助において,S以上に多くの情報が存在しており,それらを意識することができるようになります。
・A欄
SやOの情報からケアマネジャーとして検討したこと,判断したこと,支援の根拠を書き込みます。設定したFに関係するSとOについてのAとなります。根拠を言語化する練習となります。
・I欄
情報(S,O)からAを踏まえ,ケアマネジャーとしてどのようなI(実施,働きかけ)をするのか記載します。Iはその場面で行った援助を想定して記載します。
・P欄
Fについて今後の方針を記載します。Iは行ったこと,Pは今後,ということを区別できるようにしてください。
※新たなFを検討する際は,これを繰り返します。上段は思考整理のためにメモとして使用します。上段に事細かく記載することのないよう気をつけましょう。
〈下段の作成〉
上段のメモを基に下段清書欄にFSOAIPの順で記入していきます。メモを丸写しするのではなく,メモを基に具体的に記入することを意識します。
・Aはケアマネジャーの思考であり,援助の根拠となります。他者がそれを理解できるように具体的に記載しましょう。
・Iは実践の証明と言える項目です。自ら実践を理解するだけでなく,他者もケアマネジャーの実践が理解できるように具体的に記載します。
・Pは援助の方針を明確にするためのものです。一連の援助を踏まえ振り返りを行い,今後の方針を具体的にします。
〈下段作成時に意識できる効果〉
上段で思考整理をすることにより,下段はスムーズに清書することができます。また,上段を基に下段を清書することにより,場面(状況)を振り返ることができます。これが再アセスメントとなり根拠がより具体的となります。
資料2に,上段と下段の記入例を示します。
※本記事は『達人ケアマネ』2020年6-7月号(vol.14 no.5)の誌面に掲載したものです。
(②へ続く)
鐵 宏之●2004年3月日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科卒業。知的障がい者施設の支援員,有料老人ホーム介護職員,デイサービスおよびショートステイの生活相談員,管理者を務め,2011年3月介護支援専門員を取得。2012年9月より居宅介護支援事業所にて勤務。2018年2月新座市で独立型居宅介護支援事業所の「てつ福祉相談室」を開設。埼玉県介護支援専門員更新研修ファシリテーター,介護職員初任者研修講師,ケアマネジャー向け研修,株式会社ウェルモのCPA(AIを使ったケアプラン作成)のアドバイザー,産業ケアマネジャーを行う。生活支援記録法との出合いは2016年5月,埼玉県立大学IPW専門職連携講座に通っている際に,開発者である嶌末准教授から「鐵さん,これ面白いからやってみて」と渡された1枚のA3用紙に書かれた記事がきっかけ。2018年1月より,現場向けの学びの機会が必要と考え独自のプログラムを考案,各地で研修や勉強会を始める。2018年1月~2019年7月時点で全国30カ所,1,000人以上の医療,介護,福祉,教育関係の専門職に生活支援記録法の勉強会を開催。