
鐵 宏之
合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員/てつ福祉相談室 管理者
主任介護支援専門員 社会福祉士
第2回
ケアマネジャーにとっての記録とは②
記録の意義や役割
記録は大事と言われますが,そもそも記録の意義や役割とは何でしょうか。埼玉県立大学の嶌末憲子准教授は,研修において記録の意義や役割を次のようにまとめています。
①利用者のため(1.利用者支援,2.権利擁護,3.情報共有)
②援助者のため(1.説明責任,2.教育訓練,3.支援の根拠)
③機関のため(1.支援の継続,2.関係機関および関係者との連携)
対人援助全般における記録の役割ではありますが,ケアマネジャーの記録である居宅介護支援経過として,これらの役割や活用の場面について例示していきます。
①-1:利用者支援
居宅介護支援の大前提として,記録は利用者支援のためである必要があります。居宅サービス計画の実施状況を確認するモニタリング,アセスメントシートに書ききれない連続したアセスメントやそれに基づく支援を記録することで,ケアマネジャーが利用者への支援を行っていることの証明にもなります。後述する①-2~③-2までこれを踏まえています。
①-2:権利擁護
認知症や精神疾患,ターミナルケア,脳血管疾患による失語症,その他さまざまな理由によって自らの意思をうまく表現できない方もいます。しかし,うまく表現できないだけであり,その人の意思は存在します。時間をかけて耳を傾けることで確認できる思いもあります。症状が進行する前のその人の思いを記録に残すこともできます。それは意思表示が困難となったとしても,関係者がその人の思いを尊重する際の道標になります。
①-3:情報共有
居宅介護支援はケアマネジャー個人と利用者が契約をするものではなく,事業所として契約を行います。例えば,ケアマネジャーが5人所属している事業所であれば,Aというケアマネジャーが担当であったとしても,B~Eのケアマネジャーも同様の支援ができる必要があります。「担当ではないので分かりません」というわけにはいきません。誰が対応することになっても同じような支援ができるように,分かりやすく,読みやすい記録である必要があります。
②-1:説明責任
記録は,利用者やその家族の求めに応じて開示することとされています。どのような支援を行ってきたかを利用者やその家族に説明する際に記録が活用されます。やむなく訴訟となる場合においても,裁判において記録が重要な証拠となります。居宅介護支援が適切に行われているかどうかについて,行政によるケアプラン点検,実地指導においても記録は重要な情報となります。
②-2:教育訓練
居宅介護支援事業所の管理者は主任介護支援専門員となりますが,管理者にはスーパービジョンの視点が求められています。また,特定事業所加算を算定している事業所においては事業所内での事例検討会等を実施することとされています。管理者は,記録を用いて場面を振り返り,ケアマネジャーの気づきを促すことができます。
②-3:支援の根拠
受付→契約→アセスメント→ニーズ抽出→居宅サービス計画書原案→サービス担当者会議→サービスの実行→モニタリングといったケアマネジメントプロセスを残すために記録が存在します。そこには利用者や家族の意向,その他情報があり,そこからケアマネジャーの専門性を経て実践が行われます。これらが支援の根拠に当たるものです。なぜそのサービスをプランに位置付けたのか,運営基準減算の項目にある複数サービスから選択することができることを説明することも記録に記すことで対応することができます。
③-1:支援の継続
担当者が変更となる場合があります。具体的には,退職や異動,新入職員が担当になるという場合が考えられます。後任者が前任者の支援を踏まえる上で,支援過程が分かる記録が重要になります。予防支援から居宅介護支援に変更,利用者や家族と事業所が何らかの理由で変更を希望する場合もあります。その際,口頭での申し送りやアセスメントシート,居宅サービス計画書(第1表,第2表),週間サービス計画表(第3表),サービス担当者会議の要点(第4表)だけでは支援過程を読み取るには不十分です。支援過程が分かる記録にどのような支援を行っていたのかが明記されていれば,後任者はそれを踏まえて支援に当たることができます。
③-2:関係機関および関係者との連携
居宅介護支援における記録は,現在のところ事業所内共有に完結している場合が多いと思いますが,さまざまな場面で連携のツールとして活用することができます。具体的には入院時の連携があります。医療機関は入院前のその人の状態が分かりません。ADLやIADL情報,居宅サービス計画書(第1表,第2表),週間サービス計画表(第3表),入院前の医療情報を提供する方もいるかと思います。ここに生活の様子,利用者や家族の思い,ケアマネジャーの支援方針が明記された記録を情報提供することにより,医療機関側はケアマネジャーの支援方針を理解した上で治療や退院に向けた支援を行うことができるようになります。また,新規サービス導入時の情報提供として記録を添えることにより,サービス事業所は支援の方針を理解することができます。地域ケア会議や事例検討会においても,ケアマネジャーの支援過程を知ることは円滑な議論につながることが期待できます。
今後は,情報共有として多職種が一つのシステム上で記録を共有する時代がやってくるかもしれません。現に品川区では,行政,在宅介護支援センター,居宅介護支援事業所,居宅サービス事業所,医療機関が一つのシステム上で記録を共有できるようにしています。そうなると,関係者間で読みやすく支援の意図が分かる記録をすることが求められてくるでしょう。
* * *
次回は,ケアマネジャーの記録の書き方における現状の課題と,その解決策として各種記録方法の解説を行います。
※本記事は『達人ケアマネ』2020年2-3月号(vol.14 no.3)の誌面に掲載したものです。
鐵 宏之●2004年3月日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科卒業。知的障がい者施設の支援員,有料老人ホーム介護職員,デイサービスおよびショートステイの生活相談員,管理者を務め,2011年3月介護支援専門員を取得。2012年9月より居宅介護支援事業所にて勤務。2018年2月新座市で独立型居宅介護支援事業所の「てつ福祉相談室」を開設。埼玉県介護支援専門員更新研修ファシリテーター,介護職員初任者研修講師,ケアマネジャー向け研修,株式会社ウェルモのCPA(AIを使ったケアプラン作成)のアドバイザー,産業ケアマネジャーを行う。生活支援記録法との出合いは2016年5月,埼玉県立大学IPW専門職連携講座に通っている際に,開発者である嶌末准教授から「鐵さん,これ面白いからやってみて」と渡された1枚のA3用紙に書かれた記事がきっかけ。2018年1月より,現場向けの学びの機会が必要と考え独自のプログラムを考案,各地で研修や勉強会を始める。2018年1月~2019年7月時点で全国30カ所,1,000人以上の医療,介護,福祉,教育関係の専門職に生活支援記録法の勉強会を開催。