Free_支援記録の書き方・活かし方

鐵 宏之

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員/てつ福祉相談室 管理者
主任介護支援専門員 社会福祉士



第3回

各種記録法とケアマネジャーに最適な記録法①





 第1回・第2回は,記録が大事と言われ続けていながらも,介護福祉士や社会福祉士といった基礎資格習得時に記録を学ぶ機会がほとんどなく,ケアマネジャーの法定研修においても同様に記録を学ぶことがほとんどないという現状と,そもそも記録にどのような役割や意義があるのかについて説明しました。



 今回は,私が埼玉県介護支援専門員更新研修(専門Ⅰ・Ⅱ)のファシリテーターをする中で,多くのケアマネジャーがどのような記録を書いているか,いわば記録の現状とその特徴,問題点を示します。そして,その問題点を踏まえて,各種の記録法について解説します。



現状のケアマネジャーの記録(叙述記録,圧縮叙述記録)

叙述記録

 ケアマネジャーが使用している一般的な記録法です。「叙述」という言葉には,[物事について順を追って述べること。また,その述べたもの](デジタル大辞泉)という意味があります。叙述記録は,時間の経過に沿って,起こった出来事だけを記録者の説明や解釈を加えずに記述する文体であると言えます。



 具体的にどのような記録になるのか,ケアマネジャーの訪問時の記録を例示します。



【叙述記録の例】

7/20 11:00~12:00 自宅訪問

 居室内は衣類が散乱しており,コバエが飛んでおり,エアコンがないようで暑い。本人と妻は床に座っている。膝の痛みを訴えており,歩行が不安定なことや周囲の環境もあり,受診できていないとのこと。食事は,民生委員,友人が買い物に行くが,お金がないということでカップ麺やコンビニ弁当が中心とのこと。暑さもあり,熱中症の危険がある。歩行時のふらつきあり。本人は通院の負担を口にするため,送迎対応可能な医療機関があることを説明すると,お願いしたいとのこと。



 訪問場面で考えると,玄関を開け,利用者とのやり取りを終え,玄関を閉めるまでの客観的事実を時系列で記録します。



圧縮叙述記録

 叙述記録を簡略化することにより文字数を減らす記録法です。記録時間を少しでも短くすることが目的です。



【圧縮叙述記録の例】

7/20 11:00~12:00 自宅訪問

 坂の途中のアパートの2階で夫妻と面会。室内散乱し,暑い。床に座り,膝の痛みの訴えあり。受診できていないとのこと。食事は,知人らが買い物に行くが,お金がないため,カップ麺やコンビニ弁当が中心。通院負担のため,送迎のある医療機関にかかりたいとのこと。



2つの記録の問題点

 前回示した記録の役割や意義,また老企第29号の居宅介護支援経過の位置付けから,これらの記録の問題点について考えていきます。



①主語が不明確
 この記録では夫妻が登場しますが,叙述記録では誰について書かれた記録なのか不明確です。


②本人,家族の言葉が不明確
 「~とのこと」という表現で書かれていますが,ケアマネジャーが本人や家族の言葉を解釈して書き直した内容です。


③ケアマネジャーの実践が不明確
 叙述記録では客観的事実を記載するため,ケアマネジャーが何をしているのかが不明確な記録になりがちです。


④ケアマネジャーの実践の根拠が不明確
 ③に関連しますが,記録から根拠を読み取ることができません。


⑤支援の目的が不明確
 ケアマネジャーがどのような目的で支援を行い,それを記録に残したのか,その意図が読み取れません。


⑥情報量が多くなるほど,まとまらず時間がかかる
 初回訪問やサービス担当者会議,退院カンファレンスのように情報量が多い場面では,時系列で思い出しながら記録すると,さまざまな話題が飛び交うため,整理して記載することが困難です。また,思い出すこと自体に時間がかかり,情報の抜け落ちが生じやすくなります。



 圧縮叙述記録に至っては,①~⑤すべてがさらにあいまいであり,ケアマネジャーがどのような支援を行っているのか読み取ることが困難です。



実務における問題点

支援の統一性に支障を来す

 居宅介護支援は,ケアマネジャー個人と利用者が契約するのではなく,事業所と利用者が契約します。このことは,担当者でなくとも同様の支援が行えることが求められていると言えます。担当者不在である時,他のケアマネジャーが対応しますが,どのような支援を行っているのかを叙述記録から読み取ることは困難です。管理者は事業所の他のケアマネジャーがどのような支援を行っているのかを把握している必要がありますが,やはり叙述記録からではそれを読み取ることが難しいです。



支援の継続性に支障を来す

 事業所内での異動や入退職などにより,ケアマネジャーが変更となる場合があります。また,介護予防支援から居宅介護支援へ,あるいは居宅介護支援から介護予防支援へ変更になる場合もあります。後任者は前任者の支援を踏まえることで利用者への影響が生じないよう配慮しますが,叙述記録では前述の①~⑤のような問題点があり,前任者の意図や方針を読み取ることが難しく,支援の継続性に支障を来す恐れがあります。



構造化記録

 このように,叙述記録は支援場面において使いにくい点が存在しています。もちろん,場面ごとに記録法を使い分けることは必要です。次は,叙述記録の問題点を解決する方法として,医療現場で活用される記録法を紹介します。



問題志向型記録(Problem Oriented System)(SOAP記録)

 医療現場で使用されている記録法です。これは,1968年にウィード(Weed, L.)らが診療記録システムとして開発した問題志向型システムを,1973年に日野原重明医師が日本に紹介し,看護記録システムとして普及が進んでいきました。



 問題志向型記録は,問題(#)に着目し,次の4項目に整理して記録する方法です。S,O,A,Pの4文字からSOAP記録と言われています。

S(Subjective data):主観的情報(本人の言葉)
O(Objective data):客観的情報(事実として確認できる情報)
A(Assessment):評価,判断(SとOから導かれる根拠)
P(Plan):計画(治療方針)



【問題志向型記録の例】

#右膝の関節痛
S:先日バランスを崩してひねってしまい,病院で湿布と痛み止めをもらってきた。
O:右膝に湿布を貼り,すり足で室内を歩行。
A:やや不安定であるが,室内移動に支障はない。
P:治療経過を確認,転倒への注意を促す。



フォーカスチャーティング®

 1981年にランピー(Lampe, S.)らが開発した看護記録であり,1994年にランピー自身により日本に紹介されました。次の4項目に整理して記録します。

F(Focus):焦点(着目点)
D(Data):主観的・客観的情報
A(Action):介入
R(Response):反応

 特徴としては,SOAP記録が問題に着目するのに対し,フォーカスチャーティング®は問題以外の出来事にも焦点を当てることができます。暮らしや強さ,個性といったことも記録にすることができます。また,情報をDataとして一つにまとめていること,Actionとして行ったこと,その反応をResponseとして記載できることが特徴です。



【フォーカスチャーティング®の例】

F:右膝の関節痛
D:すり足で室内を歩行。先日バランスを崩してひねってしまい,病院で湿布と痛み止めをもらってきた。右膝に湿布を貼っている。
A:転倒に気を付けて歩行してください。
R:多少痛いけど,歩くのは普段と変わらない。でも,気を付けるよ。



* * *


 SOAP記録もフォーカスチャーティング®も,項目ごとに整理して書けることが特徴です。#やFにより,その記録が何について書かれているかが分かります。項目の意味が決まっているため,どこに何が書かれているのかが一目で分かります。これにより記録の書き方が統一され,書き手も読み手も分かりやすい,記録の標準化がされていると言えます。



 こういったことから,SOAP記録やフォーカスチャーティング®でよいのではないかとして,実際にこれらの記録法を活用している事業所もあるかと思います。しかし,これらの記録法は,現在では使い勝手の悪い点がいくつか指摘されています。



SOAP記録の使いにくい点

①問題以外のことを記録にしない。
 問題以外のこと,例えば,本人らしさや強さといったことを記録にできません。問題がないと,「特変なし」といった記録になる恐れがあります。


②無意識に問題に着目する思考になる恐れがある。
 問題探しをすることで,個人の持つ強さや生き方を意識しなくなります。


③記録から実施したかどうかを読み取れない。
 A(Assessment)やP(Plan)に実施内容を記載している場合も多く,その統一がされていないと混乱が生じる恐れがあります。



フォーカスチャーティング®の使いにくい点

①Dataに主観的情報と客観的情報をまとめて記載することにより,記録の内容が判別しにくい。


②支援の根拠を示す項目がない(根拠を示せない)。


③今後の支援の方針を記載する欄がない(記録の継続性に難がある)。



* * *


 これらのことから,SOAP記録やフォーカスチャーティング®の弱点を克服し,両記録の利点を活用した記録法として生活支援記録法が開発されました。



※本記事は『達人ケアマネ』2020年4-5月号(vol.14 no.4)の誌面に掲載したものです。

(②へ続く)



引用・参考文献

1)副田あけみ,小嶋章吾編著:ソーシャルワーク記録―理論と技法 改訂版,P.47,誠信書房,2018.

2)前掲1),P.54.

3)前掲1),P.56 ~57.

鐵 宏之2004年3月日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科卒業。知的障がい者施設の支援員,有料老人ホーム介護職員,デイサービスおよびショートステイの生活相談員,管理者を務め,2011年3月介護支援専門員を取得。2012年9月より居宅介護支援事業所にて勤務。2018年2月新座市で独立型居宅介護支援事業所の「てつ福祉相談室」を開設。埼玉県介護支援専門員更新研修ファシリテーター,介護職員初任者研修講師,ケアマネジャー向け研修,株式会社ウェルモのCPA(AIを使ったケアプラン作成)のアドバイザー,産業ケアマネジャーを行う。生活支援記録法との出合いは2016年5月,埼玉県立大学IPW専門職連携講座に通っている際に,開発者である嶌末准教授から「鐵さん,これ面白いからやってみて」と渡された1枚のA3用紙に書かれた記事がきっかけ。2018年1月より,現場向けの学びの機会が必要と考え独自のプログラムを考案,各地で研修や勉強会を始める。2018年1月~2019年7月時点で全国30カ所,1,000人以上の医療,介護,福祉,教育関係の専門職に生活支援記録法の勉強会を開催。