Free_支援記録の書き方・活かし方

鐵 宏之

合同会社鐵社会福祉事務所 代表社員/てつ福祉相談室 管理者
主任介護支援専門員 社会福祉士


第12回(最終回)

生活支援記録法の地域ケア会議への活用



地域課題の抽出としての地域ケア会議への活用

現在の地域ケア会議の個別課題解決機能についての私見

 地域ケア会議については厚生労働省の資料1)図1)により,次のように大別されていると言えます。



①自立支援に資するケアマネジメントの支援(自立支援型地域ケア会議)



②支援困難事例等に関する相談・助言(支援困難事例検討型地域ケア会議)



 各自治体によって実施形態や参加者も異なりますが,厚生労働省で示される地域ケア会議の実施マニュアルなどからも読み取ることができます。



 どちらの地域ケア会議も個別課題の抽出と分析を目的としており,それを集約して地域課題を見いだし,地域づくりや政策形成へという流れは共通しています(図1~3)。








地域ケア会議における課題

 しかし,地域ケア会議で検討する事例には偏りが生じており,それが本当に地域課題を広くすくい上げることができているのか,筆者としては疑問を感じています。その理由は次のとおりです。



①自立支援型地域ケア会議の課題:要介護度の低い事例を中心に,ADLの悪化防止に焦点を当てている傾向がある。



②支援困難事例検討型地域ケア会議の課題:認知症,虐待,精神疾患,貧困,家族関係など多くの問題が同時に起こっている。



 ①は介護予防に,②は複雑な多問題に焦点を当てていますが,生活全般に焦点を当てているとは言い難く,抽出される地域課題には偏りがあると言えます(図4)。






 そこで,多くの高齢者の日常を支えるケアマネジャーが,その援助の中で地域課題に焦点を当て,それを記録し,地域課題を集約することにより,①②の地域ケア会議ではカバーしきれない地域における日常の課題を抽出できると考えます。



生活支援記録法を活用した個別課題から地域課題へ

 生活支援記録法のFについては,利用者や家族の課題だけでなく,それが地域における課題の可能性があることを意識することが重要です。



 以下に,地域における課題の例を挙げます。記録の役割を意識し,思考の整理や実践が明確になる生活支援記録法を活用することで,個人として,職場として,地域として支援の質の向上につながることが期待できます。そして,日頃の実践において地域課題を意識することにより,地域課題の解決に寄与することが期待できると考えます。



【課題1】地域のスーパーの閉店

F:商店街のスーパーの閉店



S:最近○○スーパーが閉店したので,歩いて行ける店がなくなって買い物が大変。生協の宅配サービスを頼むことにしたんだけど,自分で選びたいわ。



O:徒歩圏内に商店がなく,最寄りのスーパーまで1km以上ある。



A:スーパーの閉店により買い物機会が失われたことによる意欲低下や,外出機会の減少による体力低下が懸念され,地域住民も同様の状況と思われる。



I:買い物が不便になるだけでなく,出かける機会が減るから地域の方々も困っているでしょうね。



S:そうなのよ。何とかならないかしら。



P:圏域地域包括支援センターに情報提供。



【課題2】コロナウイルスの影響による集いの機会の減少

F:サークル活動の休止



S:福祉センターの麻雀サークルが,対面で行うからという理由で休止することになった。仲間といろいろな話をすることが楽しみだった。皆どうしているだろう。



O:新型コロナウイルスにより福祉センターや公民館などでのサークル活動が軒並み休止となっており,再開のめどが立っていない。



A:交流の機会や意欲低下が見られる。経済活動は再開していることや,高齢者が日常生活で人との接触を控えて自衛している中で,公共施設の使用自粛は適切なのだろうか。



I:当面活動自粛が続く見込みのため,再開まで近所の散歩を続けて足腰が維持できるように取り組んでください。



S:そうだね。散歩はしているけど仲間は元気かな。



P:活動再開見込みを市に確認。活動や意欲の低下の可能性について地域包括支援センターに相談。



【課題3】要介護高齢者の災害時における避難所

F:台風時の避難所



S長女:自宅が川沿いにあるので,先日の台風の際に地区避難所になっている高台の小学校に問い合わせをしたところ,母のような寝たきりの高齢者を受け入れる設備はないと言われました。幸い被害はありませんでしたが…。



O:利用者宅は避難勧告が発令されていたが,避難所には重度障がい者や要介護高齢者が過ごせるような設備がない。



A:市内公共施設では高齢者が過ごせるような設備がなく,災害時の滞在が困難。他地域ではデイサービスなど高齢者施設で台風が過ぎるまで施設滞在を善意で行っていたところもあり,災害時に備え自治体と事業所で協定を結び備えが必要ではないか。



I:体育館は,高齢者や障がい者が避難できる環境ではない。他地域で高齢者の受け入れを取り組んだ事業所もある。自治体としての取り組みも必要なため,相談したい。



S長女:自宅で耐えるのは心配です。受け入れできるようになってほしい。



P:行政,地域包括支援センター,市議会議員に災害時の高齢者や障がい者の事業所の受け入れ体制の制度化ができないか相談する。



まとめ

 これまで6回にわたり要点を押さえた効率的な支援経過記録の書き方や生かし方についてお話ししましたが,本連載は今回でいったん最終回となります。



 指導されないための記録から,支援の質の向上につながる記録を意識して取り組んでいただければ幸いです。



※本記事は『達人ケアマネ』2020年12-1月号(vol.15 no.2)の誌面に掲載したものです。





引用・参考文献

1)厚生労働省ホームページ:地域包括ケアシステム
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link3-1.pdf(2020年10月閲覧)

鐵 宏之2004年3月日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科卒業。知的障がい者施設の支援員,有料老人ホーム介護職員,デイサービスおよびショートステイの生活相談員,管理者を務め,2011年3月介護支援専門員を取得。2012年9月より居宅介護支援事業所にて勤務。2018年2月新座市で独立型居宅介護支援事業所の「てつ福祉相談室」を開設。埼玉県介護支援専門員更新研修ファシリテーター,介護職員初任者研修講師,ケアマネジャー向け研修,株式会社ウェルモのCPA(AIを使ったケアプラン作成)のアドバイザー,産業ケアマネジャーを行う。生活支援記録法との出合いは2016年5月,埼玉県立大学IPW専門職連携講座に通っている際に,開発者である嶌末准教授から「鐵さん,これ面白いからやってみて」と渡された1枚のA3用紙に書かれた記事がきっかけ。2018年1月より,現場向けの学びの機会が必要と考え独自のプログラムを考案,各地で研修や勉強会を始める。2018年1月~2019年7月時点で全国30カ所,1,000人以上の医療,介護,福祉,教育関係の専門職に生活支援記録法の勉強会を開催。