
村瀬崇人
まごころステーションすくらむ 代表 主任介護支援専門員/社会福祉士・精神保健福祉士
第5回
金銭管理が不得意な利用者への支援②
介入の目的と方法の見極めが適切にできるか
さて,ここからは,一定の経過を踏まえ判断したこととは言え,本当にこれで問題がないのかと気にしながらの支援となりました。このように,利用者支援の過程において未解決の課題が残存している状況はあり得ることです。そして,筆者は,このような場合に介護支援専門員が備えるべきことを上記のように整理しています。
次に,この視点に基づき,今回の事例において筆者が具体的にどのような思考をし,実際にどう支援を行ったのかを整理していきたいと思います。
起こり得る問題とその対処法の想定,評価の基準と実施方法
筆者の懸念としては,友人に金銭管理を頼っているAさんが,そのことによって経済的に困窮したり,金銭の絡むトラブルが発生したりしないかという点でした。
そこで筆者は,Aさんが頼っている友人と直接お会いし,介護支援専門員としてAさんを支えていきたい旨をお伝えし,互いの考えや立場を理解した上でコミュニケーションが取れる関係をつくるよう努めました。友人からは現在のような状況に至った経緯や友人が把握されている現在の具体的な状況,また友人のお考えも聞かせていただき,Aさんとの間で何か問題があればすぐに教えていただくこと,Aさんが了承された段階で公的な金銭管理の支援を導入することに理解を得ることができました。
本人と友人の関係性の理解やインフォーマルな人間関係における介護支援専門員の立ち位置に関してやや難しさはあったものの,ここで早期にこのような関係がつくれたのは,結果的にこの事例の解決に対して功を奏したと考えています。
まず,介護支援専門員のかかわりだけでは見えないAさんの日々の生活状況について情報を得られるようになったことは,もちろん有益でした。さらに,それ以上に意味があったのは,晩年になってから複雑な経路をたどったAさんの生活歴について追うことができるようになったことです。Aさんが日常生活においてちょっとした頼りなさを示すようになったのは,専門職支援者がかかわるようになる数年ほど前からで,そのころから,身寄りがいないAさんに対して周囲の知人などが仕方なしにサポートをするような関係が自然発生的にできていたようです。
これを踏まえ,Aさんへのモニタリング時には,経済的な困り事や悩み,不安などが発生していないかを,強引にならないように気をつけながら,積極的に確認するようにしました。面談において,Aさんが経済的な困窮に陥っていないかという客観的な要素はもちろん,それと同程度に重要な点として,Aさんの心理的な要素に注目し確認するようにしました。
実は,この際,介護支援専門員の念頭にあったのは,金銭管理において友人に頼っていることにより不自由が発生している状況があるにもかかわらず,なぜ,Aさんはその不自由さを受け入れてまで「自分ではお金の管理ができない」「自分が持っているとダメ」「信用している人に任せている」といった発言を繰り返され,周囲に対して依存が過ぎるような態度をとられるのか,その根底にあるものを知る必要があるという考えです。
伴走期間と相談援助の展開
さらに,Aさんに対する相談援助の展開としては,このような個別面談だけにとどまりませんでした。というのも,実はAさんに驚かされたのは,この金銭管理の件だけではなかったからです。最初の面談にて,普段は何をして過ごしておられるのかと尋ねると,「近所の八百屋さんで働かせてもらっている」とのことでした。高齢で軽度とはいえ認知機能低下もあり,また生活保護も受給されているAさんが実際に就労しているとは思えませんが,どうやらここにも介護支援専門員からは「見えない」つながりがあることが分かりました。
元々,Aさんは,経済的には困難な課題をお持ちであるものの,身体的にはまだまだお元気で自転車に乗ることもでき,行動できる範囲の広い方です。要介護1の認定がついてはいるものの,実際の心身の状態としてはもう少し軽度のようにも思えます。そういったAさんの「暮らし」は,介護支援専門員が当初思っていた以上に複雑なライフスタイルだったのです。
筆者はこういう場合,まずはとにかく本人と行動を共にし,観察や情報収集の機会を増やし,本人の生活実態や周囲のさまざまな人との関係性をできるだけ深く理解することに努めています。そして,それら「インフォーマルな人間関係」と総称されるものを一つずつ把握し,現実にその場面に赴き,時には相談援助の「場」を本人の自宅から本人がいる「街なか」に移すような取り組みの中で,Aさんを取り巻くさまざまな人間関係がAさんにとってどのような意味を持つのかを考察することにしました。
実際,Aさんが「働かせてもらっている」という八百屋さんに介護支援専門員が赴くと,普段,ご自宅で面談する時とは少し印象の違うAさんが,楽しそうにちょっとしたお手伝いなどをされている様子が観察できました。また,本人の金銭管理の支援を行っておられる友人もしばしば顔を出されているようで,そこにはAさんにとっての「馴染みの関係」があるようでした。
もちろん,給料などがもらえるわけではないのですが,その分,Aさんが困った時には店主が助けてくださったり,また,そうやって毎日でも通える場所があること自体が,Aさんにとって非常に重要な意味を持っているように思えました。
長期的な課題解決につなげる伴走期間の取り組み
すぐに課題解決には到達しないものの,継続してかかわりながら本人の状態と生活の像への理解を深める。この事例において介護支援専門員が選択したのは,そのような援助技法です。それは,Aさんの生活歴,ライフスタイル,価値観,経過をひも解く取り組みであると同時に,本人または関係者の状況や考えに変化はないかを見定めながら,適切な介入ポイントや時期を模索していく過程と説明することができます。そして,そのようなプロセスの中で,介護支援専門員もAさんに対する理解を少しずつ深めることができたと思います。
(③へ続く)
※本記事は『達人ケアマネ』2023年6-7月号(vol.17 no.5)の誌面に掲載したものです。
村瀬崇人●居宅介護支援事業所を開設、運営している。認知症の独居者に対して定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを用いた365日24時間の在宅支援、高次脳機能障害者へのリハビリテーションや就労につながる支援、認知症の人とご家族のためのACP支援、多数の在宅看取りの支援などさまざまなケアマネジメントを手がけた。地域では介護支援専門員協会地域支部長として活動している。