
村瀬崇人
まごころステーションすくらむ 代表 主任介護支援専門員/社会福祉士・精神保健福祉士
第12回
うつと依存,孤独,易怒性の強い方と向き合いながら,「ケアの多様性」について考えた事例②
アセスメントとマネジメントには「テマ」と「ヒマ」がかかる
Cさんとの基礎的な信頼関係ができた後は,丁寧なケアマネジメントに努めました。一つひとつの要素を見ていくと,おそらく前任者が掘り下げられなかったのであろう事柄も多くありました。
そこで,基礎疾患や主治医の治療方針,服薬状況や服薬管理,訪問看護や訪問介護の内容やかかわり方,自宅内の環境整備の状況など,細かいながらも介護支援専門員としてしっかり把握しておくべきこと,見直すべきポイントに注意しながらアセスメントを行いました。次に,その詳細を示します。
精神科医・内科医との連携
Cさんは精神科と内科のそれぞれに通院していたため,筆者は両方の主治医に会いました。内科の主治医からは白血病や両下肢末梢神経障害の治療方針,今後の本人の身体状態の変化についての予測について説明を受けました。精神科の主治医からは,服薬治療の方針について説明を受け,本人に対してできるだけ受容的にかかわるようにと助言をもらいました。
訪問看護ステーションとの連携
介護支援専門員の交代を機に,従前より本人にかかわっていた訪問看護ステーションとも連携を図り,本人の日頃の状態について情報を提供してもらうこととしました。一方で,服薬管理については完全に本人が自分で行っていて,看護師でも全体像が把握しきれないという相談を受けました。それを受けて,筆者はかかりつけ薬局とも連携を図りました。事情を話すと,薬剤師より処方内容について説明を受けられたため,訪問看護ステーションとも情報を共有しました。
福祉用具・住宅改修
自宅内の環境整備や自宅近隣の外出のための福祉用具については,両下肢のしびれや痛み,また,全身の倦怠感など変動性のある本人の身体状態を分析しながら,手すりの設置や歩行器の選定などを一つひとつ行っていきました。自宅内の適切な位置に手すりを取り付け,本人の身体状態に合致した歩行器や歩行補助杖を選定することで,自宅内で動きやすくなったこと,遠くまではいけないが調子が良い時には自宅のすぐ近くにあるスーパーまでくらいなら自分で行けるようになったことにCさんも喜んでくださいました。
訪問介護事業所との連携
訪問介護事業所は,前任の介護支援専門員のころよりCさんの支援を行っていました。しかし,Cさんからヘルパーに対して暴言,無茶な要求,長電話,女性ヘルパーに対する猥褻な発言などが度々あり,その対応にかなり苦慮していました。それでも,事業所側からCさんの支援を断るつもりはないということで,訪問介護事業所の管理者およびヘルパーの姿勢は称賛に値するものだったと思います。筆者は何度かサービス担当者会議を行い,また,管理者やサービス提供責任者,時には現場のヘルパーとコミュニケーションを取り,Cさんと事業所との関係が決定的に破綻しないよう調整しました。
振り回された1年
―「解決」に向かわないもどかしさを覚える
筆者がかかわるようになって1年がたちました。一つひとつのことは介護支援専門員として当たり前の業務を積み上げていっただけなので,そこまで特筆すべきことはありません。ただ,その途中途中で,Cさんによって何度も話をひっくり返され,時間をとられ,振り回されてしまいました。
また,Cさんの感情の振れ幅の大きさについてもあまり変わらない状況です。もちろん,ニコニコと機嫌良く過ごされている時も少なくはなく,ユーモラスで魅力的な一面も大いにお持ちですが,相変わらず時々,突然何かに腹を立てられ,猛烈な勢いで訪問看護師やヘルパーを非難されます。
日常的な飲酒も継続しており,筆者が訪問した際に酩酊していることもありました。また,その状態で筆者の事務所に電話をかけてこられることもあります。酔っておられるので何をおっしゃっているのか正直よく分からないことが多いのですが,ある程度気が済むまで話をされます。
体調も,悪化こそないものの明確に上向きになったわけではありません。また,一度,大量の下血により救急搬送された際には,Cさんが医師の指示に従わず,「死んでもかまわないので入院だけはしない」と言い放ち,筆者が深夜に病院まで迎えに行くといった事態に陥りました。
そのほか,残念ながら,受容的にかかわってくださっていた特定の訪問看護師にCさんが過度に執着され,女性の支援者に対するセクシャルハラスメントにあたるような言動もあったことから,訪問看護ステーションを変更せざるを得なくなってしまいました。
さらには,今のところ問題として顕在化はしていないようですが,最近になりお住まいの地区の「自治会」について不満があるということをおっしゃっているので,何かのきっかけで近隣トラブルなどに発展しないか心配しています。
(③へ続く)
※本記事は『達人ケアマネ』2024年2-3月号(vol.18 no.3)の誌面に掲載したものです。
村瀬崇人●居宅介護支援事業所を開設、運営している。認知症の独居者に対して定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを用いた365日24時間の在宅支援、高次脳機能障害者へのリハビリテーションや就労につながる支援、認知症の人とご家族のためのACP支援、多数の在宅看取りの支援などさまざまなケアマネジメントを手がけた。地域では介護支援専門員協会地域支部長として活動している。