
前田麗子
株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員
第9回
世の中が変われば働き方が変わる①
コロナ禍当時,私が運営している「あすなろケアプラン」(以下,当事業所)の職員の働き方は大きく変化しました。世の中の状況に合わせて最適な働き方を選択できるシステムを構築したのです。
平常時の働き方と新型コロナウイルス感染拡大防止を最優先する緊急事態宣言発令下での働き方は大きく変わります。何を根拠にして,何を捨て,何を残すのか。初めての緊急事態宣言が発令された時,当事業所は迅速にリモートワークを行う体制に移行することができました。
これまで蓄積した事業所運営と業務効率化のノウハウだけで,即日にリモートワークを行う体制を整えることができ,社内ルールを決めることができました。今回は,新型コロナ禍で大きく変化した当事業所のケアマネジャーの働き方についてお伝えしたいと思います。
環境の変化に対応する
進化論の提唱者ダーウィンは,「変化に最も対応できる生き物が生き残る」という言葉を残したと言います。つまり,環境の変化に対応しきれなかった生物は生き残れない…ということなのですが,これはケアマネジャー自身をはじめ,居宅介護支援事業所の運営においても大変重要であると私は考えます。
人類がかつて経験したことがないパンデミックという事態の中でも,介護を必要とする利用者は変わらずいますし,それを支える介護家族,サービス事業所は止まるわけにはいきません。ケアマネジャーだって,動きを止めるわけにはいきません。状況に合わせて変化をしていくしかないのです。
そこで私が提唱するのが,ハイブリッド型の働き方ができる事業所づくりです。ハイブリッドとは,「異種のものの組み合わせ・かけ合わせによって生み出されるモノあるいは生き物を意味する語」1)とされます。この考え方を基に,実際にコロナ禍において当事業所が行った具体的な取り組みを紹介していきます。
3つの「ク」
話は当事業所の開業当初にさかのぼります。当事業所には,開業当初から大切にしてきた考え方があります。それは,居宅介護支援事業所の運営において意識してきた3つの「ク」です。
「クイック」:素早い対応ができる体制づくり
「クオリティ」:利用者の満足度を下げないサービス
「クリーン」:運営基準を意識した公正中立な運営
「クイック」
開業当初,私が"一人ケアマネ"としてやってきた時代に最も欲しかったものは「信用力」でした。仕事を獲得するために必要なものは「信用力」です。「大手の居宅介護支援事業所にはなくて,(当時一人ケアマネだった)あすなろケアプランにあるものは何か?」を常に意識しながら仕事をしてきました。
特に意識をしたのは「クイック」,つまり,仕事のスピード感です。開業当初,要支援の利用者がほとんどでしたので,地域包括支援センターから利用者を紹介してもらえるよう,あざといくらいのアピールをしたものでした。
「信用力」をつけるには相手の脳みその中に良いイメージをつくってしまえばよいと考えました。そのため,例えば地域包括支援センターの職員も参加するサービス担当者会議の時などは,会議に出かける前にすぐにFAXができる準備をしておいて,会議終了後直ちにケアプランと担当者会議の要点をFAXで送りました。
私と一緒に会議に出て,一緒に利用者宅を後にしたにもかかわらず,担当者が自分の机に戻った時にはすでにFAXが届いている状態にしたのです。そうすることで,「あすなろケアプランの仕事は早いぞ」というイメージを相手の脳みその中につくってしまうという作戦でした。
「クオリティ」
仕事が早くても雑だったり,落ち度があったりすれば,利用者の満足度を下げてしまいます。また,"一人ケアマネ"だったことで特に意識したことが,「連絡のつきやすさ」でした。相手の脳みその中にネガティブなイメージをつくらないように,「電話連絡がつきやすくするにはどうしたらよいか?」を常に考えてきました。
開業当初,"一人ケアマネ"だった私は,固定電話にかかってきた電話をスマートフォンに転送できる「転送サービス」を契約しました。また,転送されてもすぐに出られない時でも,手が空けばすぐに折り返すようにして,「一人ケアマネだけど連絡がつきやすい事業所」であるというイメージを相手の脳みその中につくるようにしました。
さらに,モニタリング中にサービス調整が必要になった時は,利用者に許可を得てからあえて利用者の前で事業所に電話で連絡し,段取りや調整をするようにしました。これも相手の脳みその中に「私の用事をすぐにやってくれるケアマネさん」というイメージをつくってしまう作戦でした。
「クリーン」
3つ目は「クリーンな事業所運営である」ということを最大限に意識しました。開業当初,"一人ケアマネ"をやっていると,さまざまな事業所が「おいしい話」を持ってきます。特に気をつけなければならないのが,まとめて数件紹介してくるようなケースです。「〇〇ケアマネさんがしっかり仕事をしてくれないから〇件分まとめてあすなろさんにお願いするよ」というような話です。
こういった話に限って,紹介されたケースをよく見てみると,限りなくブラックに近いグレーなサービス提供を行っていたりするのです。開業当初の「まとめての紹介」は,喉から手が出るほど欲しいものです。しかし,こういう時こそ初心に立ち返り,「どうして苦労してまで単独型居宅介護支援事業所を開業させたのか」について考えれば,おのずと答えが出てきました。
公正・中立であること,介護保険法に忠実であること。迷った時は,常に「赤本」「青本」(介護報酬の解釈」社会保険研究所)を読み直し,運営基準第13条を確認することが大切です。また,疑問,質問などは保険者に聞くという姿勢も大切です。遠回りなようで,クリーンに仕事をすることが最大の「信用力」アップにつながったように思います。
※本記事は『達人ケアマネ』2021年4-5月号(vol.15 no.4)の誌面に掲載したものです。
引用・参考文献
1)実用日本語表現辞典 https://www.practicaljapane5e.com/(2021年2月閲覧)
前田麗子●2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。