
前田麗子
株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員
第10回
世の中が変われば働き方が変わる②
平時の働き方は徹底した業務効率
開業当初,"一人ケアマネ"だった当事業所も,現在は4人のケアマネジャーが在籍しています。私を含め,皆が仕事と家庭の両立をしながら働いています。
私自身が痛感していることに,女性が仕事と家庭の両立を上手にしていくためには,いかにタイムマネジメントができるかということがあります。ですから,当事業所では業務管理を徹底した上で,なるべく「時間」と「場所」に縛られない働き方ができるための工夫をしてきました。
ケアマネジャーの3大道具はパソコン,電話,FAXではないでしょうか。FAX使用の是非についてはここでは述ベませんが,事実これらが使えなければケアマネジャーとして仕事をすることができません。逆に,パソコン,電話, FAXに縛られない働き方ができれば,「時間」と「場所」に縛られない働き方ができるということです。
当事業所では,平時からクラウドを活用して仕事をしてきました。パソコンはノートパソコンを支給し,ケアマネジャー業務ソフトや社内文書の保存についてもクラウド保存ができるシステムを活用しています。
電話もクラウドフォンを活用しています。会社から支給しているスマートフォンとクラウドフォンを連動させることで,誰も事務所にいない時に外部から電話がかかってきても,あたかも事務所にいるかのように電話を受けることができます。
さらに,別の担当者宛てにかかってきた場合は,スマートフォン同士の内線で呼び出すことができるようになっています。もしも内線に出なければ,伝言メッセージを入れるなり,折り返しの指示をLINEで残すなりしています。
FAXについては,基本的には事業所に設置してある複合機を利用していますが,外出先や自宅からFAXの送受信ができるように,インターネットFAXを予備で契約しています。
パソコン,電話, FAXの使い方を工夫することで,あたかもクラウド上にもう一つの事業所を置いているような感覚になります。コストがかかると思うかもしれませんが,事務員を雇うことを考えればコストは格安ですし,何より長い目で見た時に,ケアマネジャーが業務に追われて疲弊して退職し,新たに採用するコストを考えれば適正な投資であると考えます。
このように当事業所では,平時から常に小さな事業所ができる業務効率について,必要なツールを試しながら,事業所としての最適な環境を探してきました。
非常時でも利用者を誰一人取り残さない事業所運営
先述したように,当事業所では常に職員の働きやすさを追求した業務効率化を試してきていましたので,2020年4月7日の緊急事態宣言が発令される数日前,「どうやら緊急事態宣言が発令されるらしい」という段階で,即日リモートワークへの移行を決めることができました。
組織運営において,最近はボトムアップ型がよいとされています。しかし,緊急時にはトップダウン型運営ができなければ,大事な局面でのかじ取りを間違えてしまう可能性があります。
何を根拠に,何を捨て,何を残すのか。私たちケアマネジャー(居宅介護支援事業所)は,介護保険法や保険者の指導を根拠に,新型コロナウイルス感染症拡大防止のためにどの業務を捨て,どの業務を残すのかを考えてきました。
また,事業所内でもしも感染者が出たとしても事業所の業務を止めてはいけないと,当事業所では職員が分散して出勤できる体制を構築し,リモート下での業務管理の方法を模索してきました。前回述べた3つの「ク」を意識した事業所運営をしてきていたからこそ,結果的にリモートワークに即日移行できる体制が整っていたのです。
進化論を提唱したダーウィンが「変化に最も対応できる生き物が生き残る」と言いましたが,新型コロナ禍を経験し,乗り越える過程こそが,まさに進化論ではないかとさえ思うのです。
世界の誰もが初めて体験するパンデミックにおいて,「正解とは何か」なんて,誰にも言えないことです。ただ言えることは,受け身の指示待ち姿勢では変化の波に取り残され,気がつけば身動きが取れない状態のまま生き残れなくなるという状態になりかねない,ということです。そして,自らの頭で考え,試して,工夫し続ける姿勢がなければ,激動の時代を生き残ることはできないのです。
3年に一度の法改正のたびに,私たちケアマネジャーをはじめ,事業所は変化を求められます。特に単独型居宅介護支援事業所は,常にアンテナを張って事業所運営をしていかなければなりません。
事業は継続してこそ,社会貢献となります。コロナ禍や法改正も乗り越えていける,しなやかで強靭な事業所運営が大切です。事業所が潰れてしまっては元も子もないのです。利用者を誰一人取り残さない事業所運営ができるよう,それぞれが自身で考えて決定していく時期なのではないでしょうか。
※本記事は『達人ケアマネ』2021年4-5月号(vol.15 no.4)の誌面に掲載したものです。