
前田麗子
株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員
第11回
独立したいケアマネに贈る言葉①
私は独立開業した2016年7月からほぼ毎日ブログを書いていました。その内容は,単独型居宅介護支援事業所の運営で四苦八苦している,一人のケアマネジャーのリアルな姿です。
開業当初のブログを読み返すと本当に恥ずかしいのですが,あえて消さずに残しています。なぜなら,「これから独立を考えているケアマネジャーにとって,私の開業当時をありのままに綴ったブログは励みになるのではないか」と考えたからです。
私は独立前の3年間,某居宅介護支援事業所に勤務していました。ケアマネジャー試験に合格する前から憧れていた先輩ケアマネジャーが所属する事業所でお世話になり,ケアマネジャーの仕事について教えていただきました。待遇面も仕事内容もまったく文句のない環境でしたが,いつしか心の中で「ケアマネジャーとして独立してやってみたい」という思いが出てきました。
一度心の中で独立ヘの火がついた人間は,その炎を完全に消すことは不可能なのではないかと思うのです。
独立を考えるケアマネジャーの一番の心の障壁は,「勇気と自信のなさ」なのではないでしょうか。私は勤務時代に独立を考えてから,実際に独立するまでに2年かかりました。「私はきっと成功する」という天使のささやきと,「私のような能力や人脈では到底成功できるわけがない」という悪魔のささやき…。独立を考えた人間は,自分の中の天使と悪魔の声を聞き続けます。
独立に向けた準備について調ベたり,お金の計算をしたりするうちに,「やっぱり独立なんて面倒くさいな」って…人間は弱い生き物です。
ネガティブサボーターの存在
私の場合,「ネガティブサポーター」のおかげで独立をするための決心が固まりました。
応援者のイメージって,「頑張れ!」「あなたならできる!」「大丈夫!」など,ポジティブな言動で相手のことを奮い立たせる存在ですよね。しかし思い返してみると,私の人生の転機となるタイミングの前には,必ず「ネガティブサポーター」とも言うべき存在が現れます。
ネガティブサポーターとは,自分の挑戦や夢に向かいたいけれど,今いる場所が心地よくて一歩踏み出せずにいる状態にいる人間に対して,あえて怒りを誘うような言動を取る人間のことです。そして,私が独立開業する際もネガティブサポーターが現れたのです。
ケアマネジャー2年目の時,ある研修の講師を依頼されました。とてもやりがいのある内容だったため,先方と準備を進めていたのですが,「前田にはまだ早い」という勤務していた会社の意向で,この講師の話を自分が知らないところで断られてしまいました。
会社としては私に恥をかかせないため,最大限配慮をした結果だと思うのですが,私はどうしてもそのことに納得できず,このことがきっかけとなって独立を決意することができました。その時に思ったのです。「自分の人生の操縦捍は自分自身で握りたい」と。
その数日後,社長に独立の意向を伝え,あえて自分の退路を断ち,独立に向けて進み出しました。
単独型居宅介護支援事業所の運営を成功させるコツ
独立後のケアマネジャーには大きく2つの道があると思います。
1つは,自宅を事務所にして"一人ケアマネ"としてやり続けていく道です。2021年度からはケアマネジャーの基本報酬に対する逓減制の緩和もあり,担当件数を45件まで持てるようになりました。経費を抑えることで,自分一人であれば採算を取りながら事業継続はできると考えます。
もう1つは,ケアマネジャーを雇用して事業所として加算を取り,採算ベースに乗せていく道です。これには特定事業所加算の算定が必須です。
私は,最初の2年は"一人ケアマネ"として自宅で仕事をしました。その後,2年10力月目でケアマネジャーを雇用し,3年4力月目でケアマネジャーが3人体制となり,特定事業所加算Ⅲを取得しました。
実は,この2人体制の半年間が事業所経営の一番苦しい時期でした。この2人体制の苦しい期間をいかに短くし,いかに利用者を獲得しておけるか。3人体制となり,特定事業所加算を算定できる夕イミングで赤字を取り返すための準備をいかに整えるか。これが単独型居宅介護支援事業所運営の最初の難関であり,一番の肝であると考えます(図)。
「一人ケアマネ事業所」と「複数ケアマネ在籍事業所」のノウハウはまったく違う
"一人ケアマネ"として仕事をする事業所運営ノウハウと,雇用して複数のケアマネジャーを管理する事業所運営ノウハウ…,私は両方を経験していますが,まったくノウハウが違うと感じています。
「一人ケアマネ事業所」は事業所(ケアマネジャー)としての信用を獲得し,大手や「複数ケアマネ在籍事業所」とは一味違う「強み」を持つことが大切であると考えます。つまり,「手ごわい利用者さんなら〇〇ケアマネジャーに頼れば安心」「すぐに対応してくれて,無理が利く〇〇ケアマネジャーに依頼をする」といったイメージを依頼主に持ってもらうことが大切です。
一方,ケアマネジャーを雇用して管理する立場になった時の運営ノウハウは,"一人ケアマネ"の時とはまったく異なります。ケアマネジャーを管理するだけでも,一人親方気質のケアネジャーたちを管理するには,それなりの管理マニュアルが必要です。
さらに,ケアマネジャー業務以外にも,雇用主としての労務管理や財務管理など,"一人ケアマネ"の時には想像もできないほどの仕事量となりますので,チームで対応できる仕組みづくりが大切です。そして,雇用したケアマネジャーの心身の健康を守るための働きかけをしていくことも必要となります。
(②へ続く)
※本記事は『達人ケアマネ』2021年6-7月号(vol.15 no.5)の誌面に掲載したものです。