会員_あすなろケアプラン発! ケアマネジャーの働き方改革

前田麗子

株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員

第12回(最終回)

独立したいケアマネに贈る言葉②





ケアマネジャーは「助けたい病」にかかっているかもしれないと自覚せよ

 2021年度の法改正から,ハラスメント防止についての項目が新たに加わりました。事業所内におけるハラスメント防止についてはもちろんですが,近年は利用者や家族からのハラスメントが問題となっています。



 2016年に独立開業した当初,私の一番の懸念は利用者獲得でも経営的な不安でもなく,実は「利用者からのハラスメントに対して一人ケアマネで対応しきれるか?」ということでした。



 "一人ケアマネ"で独立すると,大手事業所では受けてもらえないような,少し特殊なケースが舞い込むことがあります。



 当事業所の新規利用者第1号のキーパーソンには,手の指が10本ありませんでした! 内心震え上がりながら初回訪問をしました。気に入らないことがあるとキーパーソンが恫喝し,もう一人の体重100kg超えの舎弟と思わしき人にアパートの出口をふさがれて…。



 それでも,「ケアマネジャーは利用者の立場に立ち,徹底的に寄り添いなさい」というケアマネジャー教育に縛られて,任務を全うすることしか頭にありませんでした。



 当時は,ちょっとした相談ができる同業ケアマネジャーがいなかったため一人で抱え込んでおり,自宅を事業所にしていたため身の危険を感じる時もありました。



通常のクレームと悪質クレームが存在する

 私は,ケアマネジャーになるまでにホームヘルパーの勉強をして,介護福祉士の国家資格を取り,その後ケアマネジャー資格を取得しました。これまで数々の法定研修を受けてきましたし,多くの介護に関するテキストを目にしてきました。



 介護職は,「利用者さんに徹底的に寄り添いなさい。傾聴しなさい」と繰り返し教育されます。ケアマネジャーは相談援助職です。相談援助職は,クライアント(利用者)の成長を自分事として喜ベるという優れた資質の持ち主が多いと言われています。



 つまり,ケアマネジャーという仕事を選ぶ人たちは優しい人たちなのです。優しいがゆえに,「どんな利用者も救わなければならない」という呪いにかけられているかもしれません。



 私はこれまで,ケアマネジャーとして数々のクレームを経験しました。その多くは,こちら側の改善点を教えていただき,さらに信頼関係が築けるようなありがたいクレームです。クレームが事業所を育ててくれる時もあります。



 しかし,通常の方法では対応しきれない「悪質クレーム」というものが存在します。毎回電話のたびに1~2時間,自分が疲れるまで執拗に担当ケアマネジャーを攻撃してくる方がいることは,残念ながら事実です。



 このような悪質なクレームから,ケアマネジャーの心を守ることを真剣に考えていかなければならない時期なのではないでしょうか。



 特に,独立して"一人ケアマネ"としてやっていく際には,自分の心身を守ってくれる事業所はなくなります。ケアマネジャーの心が潰れない方法について学んでいかなければなりません。



ケアマネジャー同士つながることの大切さ

 私は会員数2,500人(2021年5月時点)の「ケアマネジャーを紡ぐ会」(以下,紡ぐ会)という団体の副会長をしています。紡ぐ会では,ケアマネジャーに向けて,ケアマネジャーが本当に必要とする研修を行っています。全国のケアマネジャー同士がつながり,業務効率化ができることで心身の負担軽減ができ,ケアマネジャーが自らの仕事に誇りを持てるための活動をしています。



 私は独立開業後の2016年12月に,紡ぐ会の会長である宮崎直樹氏の業務効率化研修を受講し,その後,紡ぐ会の趣旨に賛同して運営にかかわるようになりました。2017年からは,私自身も紡ぐ会の研修講師として活動を開始しました。私の担当パートは,主にチームビルドやハラスメント防止など,ケアマネジャーに特化した内容の研修を行っています。



 オンラインセミナーを開催すると,今では全国のケアマネジャーが研修に参加してくれます。セミナー終了後の懇談会では,参加された皆さんが「ケアマネジャー同士でつながる場があり,悩みを相談できることで明日からも頑張れます」と話してくれます。



 さらに,ケアマネジャーを取り巻く現状を改善すべく,ケアマネ議員(愛知県岡崎市議会議員)として現場の声を行政に届けるための活動を行っています。



 ケアマネジャー同士でつながり,声を上げていくことで,「ケアマネ不要論なんて言わせない。我々ケアマネジャーの存在意義を高めていく」という意識を持つことが必要であると考えます。ケアマネジャーが自分たちで声を上げなければ,ケアマネジャーの地位向上は望めないのです。



本連載のおわりに

 本連載は今回が最終回です。5年前,私は"一人主婦ケアマネ"で,独立開業についてのノウハウも経営に関する知識も全くありませんでした。実践しながら学び,失敗しながらコツをつかみました。たくさんの人に助けてもらいながら,単独型居宅介護支援事業所の運営について自分なりのノウハウも蓄積されました。



 開業当初は,ずっと"一人ケアマネ"として気楽にやっていくつもりでしたが,気がつけば6人のケアマネジャーを抱える事業所の経営者となり,2021年は2店舗目の開業に挑戦することになりました。



 ケアマネジャーの仕事は,一人でやるのも楽しいですが,大勢でやるのはその何百倍も楽しいものです。ケアマネジャーとしての喜びも苦しさも,一番理解できるのはケアマネジャー同士です。



 単独型居宅介護支援事業所にはケアマネジャーしかいません。だからケアマネジャーにとって一番働きやすい環境を追求できる事業形態が,単独型居宅介護支援事業所であると私は考えます。



(おわり)



※本記事は『達人ケアマネ』2021年6-7月号(vol.15 no.5)の誌面に掲載したものです。