
前田麗子
株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員
第8回
モチベーションの支持と応援(対話ができる環境づくり)②
「場づくり」のための具体的な行動とは?
会議という限られた時間内での成果ではありますが,これは心理的な「安心・安全・ポジティブ」な職場づくりにも通じる概念です。場づくりのために実際にどのような行動をすればよいのかと言えば,まずは①言葉選びと,②表情に気をつけることでしょう。
①言葉選び:肯定語を使うようにする。言葉はできるだけボジティブな言葉を選ぶ。「いいね」「素晴らしい」などを意識的に使うようにしてみる。
②表情:笑顔やうなずきを活用する。
ただ,実際の職場の中では常に肯定ばかりしていられるものではありません。時には相手とは異なる意見を述ベなくてはならない場面もあります。そのような時には,反対意見を伝える前の枕言葉として,「でもね」の代わりに,「それでね」と言うなど,意識的に工夫をしてみましょう。
「安心・安全・ポジティブ」な職場づくりのためにどうしたらよいのかについて,職場のミーティングなどの機会に考えてみるのもよいと思います。
余談ですが,当事業所では互いを「〇〇さん」と下の名前で呼び合っています。社長である私も,スタッフから「れいこさん」と呼ばれています。これは,私から提案したアイデアではなく,スタッフから出てきたアイデアですが,「安心・安全・ポジティブ」な職場づくりのーつの工夫として紹介します。
緊急時や起業直後のスタートアップ時はトップダウン型運営が望ましいと言われますが,平時はボトムアップ型運営をすることで「安心・安全・ポジティブ」な職場,さらには生産性の高い職場となり得ると考えます(図3)。
外発的動機付けと内発的動機付け
モチベーションという言葉の和訳は「動機付け」です。動機付けとはつまり,人が目的や目標に向かって行動を起こして達成までそれを持続させる,心理的過程を表す心理学用語です。
動機付けには「外発的動機付け」と「内発的動機付け」があります(表)。
ケアマネジャーは対人援助職であり,利用者の変化・変容・成長に喜びを感じるという特性があります。それゆえに,外発的動機付けのみで仕事に対するモチベーションを維持することは難しく,自分の内側から湧き上がる達成感や満足感,充実感により仕事を頑張れるという職種です。「利用者からの感謝の言葉で仕事の疲れが吹っ飛んだ」という経験がある人も多いのではないでしょうか?
しかしながら,それゆえに「自分自身を置き去りにしていないか?」と振り返ることも忘れてはいけない仕事であるとも言えるのです。
シャンパンタワ一の法則
皆さん,シャンパンタワ一をご存じでしょうか。シャンパンタワ一は一番上からシャンパンを注ぎ,満杯になると2段目のシャンパン,それが満ちるとさらに3段目,4段目と注がれていきます。
マツダミヒロ氏は著書『起きてから寝るまでの魔法の質問』で,「シャンパンタワ一の法則」として1段目を自分自身と見立てて,まずは自分自身を満たしてから,家族や仕事先の人に奉仕しなさい,と述ベています(図4)。
当事業所はケアマネジャーだけが勤務しています。ケアマネジャーの仕事の大変さはケアマネジャーが一番理解できます。時には利用者や家族からお叱りを受けることもあります。気持ちが落ち込むこと,背負うには重すぎる課題に出くわすこともあります。
私たちのような感情労働者(仕事をする上で,常に自分の感情をコントロールすることが求められ,我慢や忍耐をしたり,明るくふるまったりしなければならない働き方)は, 自分自身が満たされていて,初めて利用者の支援ができるのであり,ケアマネジャーが疲弊していては,よりよい支援はできないと思います。
ケアマネジャーこそ自分自身を満たしていなければいけない仕事であると自覚し,職場の中で対話ができる「安心・安全・ポジティブ」な環境づくりが大切であると考えます。
2011年女子サッカーのなでしこジャパンがワールドカップで優勝した時,試合前に東日本大震災の津波で傷ついた街や人々の映像を観てからピッチに立ったと聞きました。人は自分以外の誰かのために行動した時に,思いもよらない力を発揮できるのです。
ケアマネジャーも利用者の喜びを自分事にできる仕事であると考えます。職場内でケアマネジャーの仕事に対するモチベーションを支持・応援すること,気持ちを分かち合うことで,「安心・安全・ポジティブ」な職場づくり,ひいては生産性の高い職場づくりが実現するのではないでしょうか。
※本記事は『達人ケアマネ』2021年2-3月号(vol.15 no.3)の誌面に掲載したものです。
引用・参考文献
1)マツダミヒロ:起きてから寝るまでの魔法の質問,サンマーケ出版,2009.
前田麗子●2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。