会員_ダミー

前田麗子

株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員

第6回

社内ケアプランチェックの仕組みと協働のコンセンサス②





「抜け・漏れ・忘れ」を社内ケアプランチェックで回避する

 ケアマネジャーを守るのは適正な内容の書類です。業務や書類の「抜け・漏れ・忘れ」を失くすために,当事業所では社内ケアプランチェックを活用しています。つまり,日頃の業務の自然な流れの中で「抜け・漏れ・忘れ」をチェックできる仕組みをつくっています。



 チェックのタイミングは,①毎月の給付管理の時と,②ケアプランの切り替え時(更新,プラン変更,短期目標期間終了時)の2つです。



社内ケアプランチェックのタイミング

①毎月の給付管理の時

 毎月の国保連ヘの伝送のタイミングで,各ケアマネジャーには「給付管理件数チェックシート」(資料1)と「実績加算算定チェック表」(資料2)を提出してもらいます。例えば,初回加算がある場合は,資料1で給付管理件数を前月と比較することで,初回プラン数を把握できます。また,初回加算を算定するための要件が満たされているかは資料2で確認していきます。









 具体的には,アセスメントを実施しているか,ケアプランがあるか,サービス担当者会議を開催しているか,ケアプランの交付はしているか,当月のモニタリングは完了しているか(訪問と記録)を,管理者が資料2のチェック表と実際の書類の有無,そして支援経過記録ヘの記載で確認します。



 さらに,入退院時情報連携加算などを算定する場合の算定要件についても,このタイミングで書類の「抜け・漏れ・忘れ」がないか確認します。給付管理の段階で要件が満たされていないと分かれば,算定しなければよいだけのことです。



 仮に,これらのようなチェックをせずに国保連ヘ伝送をした後で算定要件が満たされていなかったと判明すれば,加算取り下げのためのさまざまなコストがかかります。事前に無駄なコスト回避をするために,給付管理のタイミングでしっかりとチェックを入れることはとても大切なのです。





②ケアプランの切り替え時(更新,プラン変更,短期目標終了)

 当事業所では,ケアプランの切り替え(更新,プラン変更,短期目標終了)ごとにプランを「締め」ます。「短期目標ごとに締めるんですか?」と驚かれますが,あえてそうしています。



 理由は,もしも「抜け・漏れ・忘れ」を発見した後の処理の手間の問題です。時間が経過すればするほど担当者の記憶もあいまいになりますし,「傷は浅いうちに治す」方が回復が早くなります。ケアマネジャーの業務も同じです。



 図2のように,介護サービスはすべてケアプランに連動します。そのため,ケアプラン作成日ごとにアセスメント,ケアプラン(第1~3表),サービス担当者会議の要点(第4表),支援経過記録(第5表),利用票(第6表),別表(第7表),サービス提供事業者の個別援助計画,月次報告書,その他連絡事項などのFAX記録などが存在します。






 これらはケアプランの期間内に該当利用者の給付管理をした根拠を示すことのできる公的な書類です。絶対に「抜け・漏れ・忘れ」があってはいけない書類であるため,ケアプランの切り替えごとに「締め」て,社内のケアプランチェックに出すことを社内ルールとしています。





運営基準減算回避を考慮した社内ケアプランチェック

 当事業所の社内ケアプランチェックは,ケアマネジャーが自分以外のケアマネジャーが「締め」たケアプランを当事業所の規定したチェック表(資料3)に基づいてチェックします。






 ポイントは,①日付の整合性,②一連のケアマネジメントの流れに沿った書類(アセスメント,ケアプラン作成,ケアプラン交付,サービス担当者会議開催,モニタリング記録)の確認と支援経過記録の文言の確認の2つです。



 これにより「抜け・漏れ・忘れ」がないかを確認します。ただし,ここでは決してケアプランの内容に踏み込んだチェックはしません。



 人間であれば,誰しもミスをする可能性があります。ケアマネジャーとしての経験や年齢によっては,同じケアマネジャーだからこそ先輩ケアマネジャーに指摘しづらい人がいるかもしれません。人間関係の遠慮が原因で,チェック漏れが起こり,運営基準減算となり,報酬の返還となっては,どんなによい環境で仕事ができていたとしても,事業所自体が存続できなくなります。



 事業所全体としてミスが起こりにくい「仕組み」を構築し,ケアマネジャーたちはその流れに自然に乗っていけることでストレスなく業務ができるようになります。





社内ケアプランチェックの効果

業務ヘの不安払拭で自信を持って仕事ができる

 当事業所の社内ケアプランチェック表(資料3)は,運営基準減算を回避するための最低限のラインを意識して作成しています。私は,当事業所のケアマネジャーに「業務で"ここまで"はクリアして,浮いた時間は利用者さんの相談支援の時間に充ててください」と常に伝えています。



 属人化しやすく,孤独に陥りやすいケアマネジャー業務において,常に社内ケアプランチェックを意識することで,自身の業務をセルフチェックできます。さらに,浮いた時間を利用者としっかり向き合うために使えることは,ケアマネジャーとして働く上での大きな誇りと自信につながると考えています。





業務の標準化

 業務の「属人化」の対義語は,業務の「標準化」です。業務の標準化とはつまり,マニュアルを整備し,誰でも業務に取り組める状況であることと言えます。



 社内ケアプランチェックをすべてのケアマネジャーが相互に行うことで,事業所内のケアマネジャーの業務の標準化を図ることができます。業務を標準化することで,担当ケアマネジャーが休みの時も,事業所に出勤しているほかのケアマネジャーで対応することができます。休みのケアマネジャーに携帯電話などで連絡を取らなくてもよい体制を整えることができ,それが利用者の利益にもつながります。



 ちなみに当事業所は,先日受けた実地指導で,書類の整備状況についてお褒めの言葉をいただき,社内ケアプランチェックの効果について確信を得ました。当事業所における業務効率化の要は,社内ケアプランチェックであると言っても過言ではありません。



 具体的なやり方については,その都度社内ミーティングに諮りコンセンサスを取っていきます。遠回りで時間がかかりそうでありながら,合意形成の過程における話し合いや対話こそが,事業所のあり方や働きやすい環境づくりに大いに役立つものだと考えています。



 当事業所では,事業所としての業務の合格ラインを示すことで働くすべてのケアマネジャーたちが納得して業務に当たり,安心して利用者との時間をたっぷり取った相談支援業務ができると考えます。それが,ケアマネジャーのセルフイメージを向上させ,自信と誇りを持って仕事ができる環境づくりにつながるものと考えています。



※本記事は『達人ケアマネ』2020年12-1月号(vol.15 no.2)の誌面に掲載したものです。

前田麗子2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。