会員_ダミー

前田麗子

株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員

第5回

社内ケアプランチェックの仕組みと協働のコンセンサス①





 居宅介護支援事業所の管理者を一度でも経験した人であれば,ケアマネジャーたちの仕事を管理することの難しさは分かることでしょう。



 ケアマネジャーは,「一人親方気質」という特性を備えている人が多いように思います。ケアマネジャーの仕事を大工の棟梁になぞらえてみましょう。一軒の家を建てる時,棟梁のりーダーシップが発揮されなければ欠陥住宅が建ってしまいます。図面に則って家を建てる,職人たちが迷った時は,設計士の意図を汲み取り,施主の意向に沿って指示を与えることで,発注主の希望どおりの家が完成するわけです。



 この大工の棟梁とケアマネジャーの仕事はとてもよく似ていて,「一人親方気質」で一定のリーダーシップが発揮できなければ,利用者の希望する生活を支えることはできません。一方で,事業所の管理者として一人親方気質であるケアマネジャーたちを見た時に,管理のしづらさがここに現れてきます。



 今回は,個性豊かなケアマネジャーたちの業務の管理方法を,当事業所での社内ケアプランチェックの考え方とやり方を通じて紹介します。



 当事業所のケース管理の書庫内は,現在稼働している利用者ごとに「本ファイル」と「終了ファイル」が並んでいます。現在進行形のケアプランは「本ファイル」内で管理し,更新,プラン変更,短期目標終了などで期間が終了したケアプランは「社内ケアプランチェック」を受けたのち「終了ファイル」に綴じられます。



 この方法は,東京都にある単独型居宅介護支援事業所「介護屋みらい」で取り組まれている「みらい方式」に倣っています(図1)。「みらい方式」は,ケアマネジャー業務の効率化を図る上で大変有効です。しかしながら,同じ方法を当事業所に定着させるまでには紆余曲折がありました。



 「みらい方式」を当事業所の職場に定着させるまでのプロセスそのものが,当事業所における協働のコンセンサスであったと考えられます。






居宅介護支援事業所における
協働のコンセンサスとは?

 一般的に「協働」とは,同じ目的のために対等の立場で共に働くことを言います。また「コンセンサス」とは,意見の一致,合意という意味です。それでは,居宅介護支援事業所における「協働のコンセンサス」とはどういうことなのでしょうか。



 ケアマネジャーの多くが「一人親方気質」であるからこそ,事業所と各ケアマネジャーが対等の立場で双方納得した上で業務を進める必要があります。経験年数やこれまで経験した職場のやり方によって業務の進め方が違うこともあります。しかし,そのことにより各人の業務のやり方にバラつきがあっては,居宅介護支援事業所としてケアマネジャーたちの管理はできません。



 つまり,居宅介護支援事業所における「協働のコンセンサス」とは,介護保険法に則った社内ルールの下,事業所内のすべてのケアマネジャーの合意や納得を得た上で,ケアマネジャーの業務を標準化させることを指すと考えます。





仕事を属人化せず「仕組み」で回す

 私は,ケアマネジャーの仕事は属人化しやすいと感じています。一般的に「業務の属人化」とは,特定の職員が業務を担当することにより,当人以外の人はその業務の内容や進め方が分からなくなってしまう状態のことです。



 まさに当事業所でも職員を雇用した当初,この状態に陥った経験があります。経験年数が多い職員に対して,「〇〇の書類はできていますか?」と管理者が問うて,「できています」と答えられると,それ以上の追求はしにくいものです。この繰り返しでは,管理者自身も管理業務にストレスを感じてしまいます。



 管理者のストレスを回避する視点からも,業務の流れの中でチェックできる「仕組み」をつくり,業務を「仕組み」で回すことが重要であると考えるようになりました。





コンセンサスを得るために必要な共通認識

 とかく,ケアマネジャーの中には,ほかのケアマネジャーに自分のケアプランをチェックされたり,指摘されたりすることを嫌がる人がいます。しかしながら,ケアマネジャー業務上での「抜け・漏れ・忘れ」から起こるミス,これは人間なら誰でも起こり得るものです。



 したがって,ケアプランを相互にチェックすることはケアマネジャーを守り,救うものであるという認識をケアマネジャー自身が持つことが大切なのです。実地指導や利用者などからのクレーム対応の際などには,適正に作成された書類だけがケアマネジャーを守れることがあるからです。



 さらに経営的な視点で言えば,業務上のミスは甚大なコストの無駄遣いにつながりかねないということを,数値やデータを示してケアマネジャーに理解してもらう必要があります。



 皆さんの職場では,一つのミスによる経済的コスト,時間的コスト,求人コストまでを管理者や事業所内のすべてのケアマネジャーが理解できているでしょうか。



 例えば,一人のケアマネジャーが,うっかりしてモニタリング結果を支援経過記録に記載することを忘れたとします。すると,運営基準減算となる可能性が出てきます。



 また,居宅介護支援事業費の返還(経済的コスト),行政ヘの書類作成,提出,国民健康保険団体連合会(以下,国保連)への返還のための業務(時間的コスト),そして,そのことにより担当職員と管理者に肉体的,頭脳的,精神的負担がかかり,職場環境が悪化することで離職につながる可能性も出てきます(求人コスト)。



 これらの処理をする間,本来救えるべき利用者を救う時間が損失するという機会損失コストまで考慮する必要があります。



 当事業所では,これらを社内ミーティングなどの場で,具体的な数値やデータを示すことでケアマネジャーたちに「自分事」としてとらえてもらう機会をつくることがあります。うっかりミスから発生するコストについて具体的な金額を示して,ケアマネジャーたちに理解を促します。



 「なぜ通常業務に加えて,ケアプランチェックが必要なのか」という考えを,すべてのケアマネジャーたちが共有し,コンセンサスを得るための場づくりを行います。ケアマネジャーたちとの合意形成の下,ケアプランチェックを社内ルール化して積極的に取り組む姿勢をつくってもらうのです。



(②へ続く)



※本記事は『達人ケアマネ』2020年12-1月号(vol.15 no.2)の誌面に掲載したものです。

前田麗子2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。