
前田麗子
株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員
第3回
ケアマネジメントの質向上と業務の効率化①
当事業所は基本的に残業がありません
「よいケアマネジャー」と言えば,皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?
利用者が困っていたら,すぐに駆けつけて問題解決をしてくれるケアマネジャー? それとも何時間でも利用者や家族の話を聞いてあげるケアマネジャー? ケアプランや書類の内容が濃く,書類作成が上手なケアマネジャー?
ケアマネジャーとして仕事をしている皆さんの中には,それぞれの「よいケアマネジャー」像があると思います。
利用者や家族に頼りにされ,責任の重い仕事を行うケアマネジャー。それ故に,新人はもちろんのことベテランでも,「本当にこれでよいのだろうか?」と不安になリ,その不安を取り除くために,自身の心と身体の限界を超えてケアマネジャーとしての仕事をしてしまう。そのことが原因で,身体を壊してしまったケアマネジャーがあなたの周りにいらっしゃらないでしょうか?
当事業所は,基本的に残業がありません。担当する利用者数が少ないからというわけではなく,当事業所のケアマネジャーはそれぞれ35人の利用者を担当しています。書類整備の状況はどうなのかというと,先日受けた実地指導においても,書類上の指摘はありませんでした。さらにいうと,書類の整備がしっかりしているとの評価までいただきました。
実際のところ,当事業所の書類は,決してケアプランの中身が素晴らしいわけではないし,支援経過記録の内容が厚いというわけでもありません。ただ,必要な書類,必要な支援経過記録の文言が過不足なくそろっている…それだけのことです。
今回は,当事業所において,それぞれのケアマネジャーが35人の利用者を担当しながらも,心身が健やかで,かつ運営基準も満たした業務をなぜ行うことができているのかについてお伝えしたいと思います。
そもそもケアマネジメントの質とは何か?
ノー残業を語る前に,当事業所が考える「ケアマネジメントの質」について定義づけをします。それは,「法令遵守ができた上で,利用者の満足度を確保できた状態であること」だと考えます。
法令遵守ができている
法令を遵守すること,これがケアマネジメントの質を語る上での大前提であり,ケアマネジャーは介護保険法という法令の中で存在する仕事です。常に法令から外れたことをしてはいけないのはこのためであり,ケアマネジャーの仕事すべてに法令の根拠があるということを意識して業務を行うことが大切です。
運営基準減算を回避する
先述の法令遵守と関連することですが,もしも実地指導で運営基準減算を指摘されたらどうなると思いますか?
その答えはこうです。「運営基準減算として,所定単位数の100分の50に相当する単位数を算定する。また,運営基準減算が2月以上継続している場合には,所定単位数は算定しない」。
つまり,運営基準減算を指摘された当月は,その事業所が担当するすべての利用者のケアプラン料について50%返還。さらに,運営基準減算の要件に気がつかないままでいると,改善されるまでの間,すでに国民健康保険団体連合会からいただいたケアプラン料をすべて返還しなくてはならなくなるということです。
従業員ヘの給与の支払い,事業所経費の支払いが終了しているにもかかわらずケアプラン料を返還するだなんて,そんなお金,会社に残っていないですよね(事業所,潰れます)。
せっかく利用者にとってよいケアマネジャー,よい事業所だと評価されていても,事業所が潰れて消滅してしまっては元も子もありません。事業を継続させること,これは事業者の責務です。だから,私たちは法令を意識して仕事をしなければならないし,業務の中で「運営基準減算を回避するための業務とは何か?」ということについて常に考えていかなければならないのです。
利用者の満足度を上げる
業務に追われていて時間に余裕がないケアマネジャーと,利用者とゆっくり会話をしながら困り事を聞いて解決に導いてくれるケアマネジャー。当然のことながら,後者のケアマネジャーの方が利用者の満足度が上がりますよね。
私は,ケアマネジャーの業務の中で最も大切な仕事は,モニタリング訪問だと考えています。
ケアマネジャーの業務を効率化する最大の目的は,ケアマネジャーが利用者ヘの相談支援の時間をできる限り確保することです。そのために,書類作成業務を効率化すること,その書類の中身が運営基準減算を回避できる内容であることが大切です。
それに向けて,書類作成で何を捨て,何を残すのか? このことについて,事業所全体で業務内容を標準化することが大切なのです。
(②へ続く)
※本記事は『達人ケアマネ』2020年10-11月号(vol.15 no.1)の誌面に掲載したものです。
前田麗子●2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。