会員_ダミー

前田麗子

株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員

第2回

働きやすさと職場環境の追求②





事業所経営は「想い」と「経済」の両輪が必要

 事業所独立に向けての「想い」だけは人一倍強かった私。主婦をしながらケアマネジャーとしての経験を積んだだけで,「経営」についての知識はゼロでした。当時の考えのままに事業所経営をしていたら,当事業所はとっくに消滅していたことでしょう。それくらい危なっかしい経営をしていました。



 介護保険法の法令順守についての意識はありましたが,経営者としての経験や知識はまったくない"ケアマネジメントに対する「想い」だけはあるが,「経済」を回すという意識がない"状態でした。



 ケアマネジャーとして独立する人のほとんどは,「想い」をお持ちかと思います。第一に「想い」がなければケアマネジャーとして独立するなんていう大変なことはできません。特に福祉の世界は,まずは「想い」ありきだと思います。



 しかし,私自身がそうでしたが,ケアマネジャーをはじめとする福祉業界の人は,「経済」を回していく必要性を感じつつも,感覚的な運営をしている人が多いのではないでしょうか。どんな事業も,「想い」と「経済」の両輪を回さなければ「経営」をしていくことはできません。事業は継続してこそ社会資源としての存在価値があるのです。





「業務効率化(みらい方式)」という考え方との出合い

 独立して半年が経過した頃,私は「ケアマネジャーを紡ぐ会」のセミナーに参加しました。同会会長であった宮崎直樹氏によるセミナーの中で,ケアマネジャー業務の「業務効率化(みらい方式)」について学びました(「業務効率化(みらい方式)」については別の回で詳しく述ベたいと思います)。そして私は,同会の趣旨に賛同し,2017年から同会の愛知支部副支部長、現在は同会の副会長という立場で,会の運営や活動に参加しています。



 同会の運営に携わる中で,宮崎氏から単独型居宅介護支援事業所として収益を上げていく方法とノウハウを学びました。どの業界においても,経営をするためには不必要なコストを抑えていく必要があります。しかしながら,私が16年福祉業界で仕事をした中で,ヘルパー,介護福祉士,介護支援専門員,主任介護支援専門員の資格を取得しましたが,一度も介護サービス事業所の経営やコスト管理について学ぶ機会はありませんでした。コストを削減するとは,単に経費(お金)を抑えるだけでなく,ケアマネジャーが業務に費やす時間も含めてコストとして考えなければなりません。



 当事業所の運営は「みらい方式」がべースとなっています。開業から半年というタイミングで「みらい方式」に切り替えができたことで,居宅介護支援事業所の運営をするための「想い」と「経済」の両輪が回りはじめ,次第に「経営」ができる士台をつくることができ,その後,単独型居宅介護支援事業所であっても特定事業所加算を算定できる事業所ヘと進化することができたのです。



女性が働きやすい職場環境の追求

 「女性が働きやすい職場をつくる」これは,私自身が現在の事業所を運営する上で一番重きを置いていることです。なぜなら,私自身のキャリア形成の歴史が,女性の社会進出の壁を乗り越えた経験そのものだと考えるからです。言い換えれば,仕事と家事・育児との両立ができる環境を追求してきたのが私のキャリア形成の歴史です。



 女性の働き方は,年齢により変化をしていきます。結婚前の独身の時,妊娠・出産の時,子どもの幼少期,子どもに学費がかかりお金が必要な時,自分自身に更年期障害が始まる時期,親の介護問題が出てくる時,配偶者が病気になった時…。また,さまざまな事情により離婚をしてシングルマザーとなり子育てをしていく人もいます。



 「家事や子育ては男女平等だ」と言われて久しい昨今ですが,我が家に関して言えば,なかなか「男女平等」とは言い難い状況でした。皆さんも家庭内での役割ごとに,子育てや家事をこなしながら,何とか仕事のやりくりをしているのが現実ではないでしょうか。



 そういう意味においても,「女性が働きやすい職場」は,家庭で母を待つ子どもたちにとっても,また妻が働きに出ている夫にとっても,介護が必要な親御さんにとってもよい職場であると考えることができます。すなわち,「女性が働きやすい職場」とは,すべての人にとって「優しい職場」であると私は考えるのです。



「楽」を追求する事業所運営

 「まずはケアマネジャーが自分自身を満たすこと」。これは,私が当事業所のケアマネジャーにいつも伝えていることです。自分自身が満たされていなければ,利用者が満足する支援は到底できません。



 対人援助職であるケアマネジャーの仕事の喜びは,利用者の生活が改善すること,身体の状態がよくなること,家族の介護負担が減ることです。つまり,相手の変化を自分事のように喜べる…,それがケアマネジャーという職種です。相手のことを自分事のように考えられること,そのこと自体はとても尊いことです。ゆえにケアマネジャーの仕事はとことん追求ができ,終わりがなく,達成感を感じにくい仕事であるとも言えます。



 その日の仕事をその日に終える,その月の仕事をその月に終える。当たり前のことができていないケアマネジャーも多いのではないでしょうか。



 当事業所が考える「3つの楽」というものがあります。それは,仕事に追われない「楽」,身体が健やかである「楽」,ケアマネジャーの仕事が楽しいと思える「楽」です。残業をなくす仕組みをつくるための事業所内ルールをつくリ,その仕組みがうまく回る仕掛けをすることで「3つの楽」を実現し,笑顔で利用者の前に立てる時間を増やし,ケアマネジャーが仕事に誇りとやりがいを持てる働き方を目指しています。



 そのあたりについては,次回以降で,事業所として実際にどのような取り組みをしているのかを具体的に紹介していきます。



※本記事は『達人ケアマネ』2020年8-9月号(vol.14 no.6)の誌面に掲載したものです。

前田麗子2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。