会員_ダミー

前田麗子

株式会社わがんせ 代表取締役/あすなろケアプラン 管理者 主任介護支援専門員
ケアマネジャーを紡ぐ会 副会長 岡崎市議会議員

第1回

働きやすさと職場環境の追求①





 私自身,別の居宅介護支援事業所で3年働いた後に独立したわけですが,開業当初のケアマネジャーは私一人で,利用者は0人からのスタート。事務所は自宅マンションの一室,「タンス部屋」が私のオフィスでした。



 資本金は夫から借りた現金100万円のみで,夫には「この金がなくなったら,無理せずに事業をやめること」と念を押されていました。つまり,当初は「コネなし」「実績なし」「カネなし」の状態,あるのは「私はきっと成功する」という根拠のない自信のみでした。



 独立後はさまざまな出会いがあり,多くの学びと数々の失敗を経て,何とか今の形態で仕事ができるようになりました。また,独立後に心がけたことは,介護業界以外の人たちとも積極的につながるこということです。その結果,「介護業界の常識は世の中の非常識であるかもしれない」ということに気づくことができ,介護業界以外で得た知見を居宅介護支援事業所の運営に活かすことができたと考えています。



 本連載を通じて,一人の主婦ケアマネであった私自身が手探りで単独型居宅介護支援事業所運営を行いながら得た学びを紹介することで, 改めてケアマネジャーが「仕事に誇りとやりがいを持ち続けられる環境とは何か?」について考えていただける機会となるのではないかと考えています。





単独型居宅介護支援事業所であることのメリット

 当事業所は単独型居宅介護支援事業所といって,訪問介護事業所や通所介護事業所などの併設サービスを持たない,法人内には居宅介護支援事業所のみが存在する形態で事業を行っています。



 ご承知のとおり,介護保険においてケアマネジャーは公正中立な立場で,多様な事業者から保健医療サービスおよび福祉サービスを必要とされる利用者に提供されるように努めなければなりません。



 同一法人内に併設事業所がないという点で,単独型居宅介護支援事業所は介護保険においてケアマネジャーが真に公正中立な立場でいられる事業形態であると考えます。おおげさに言えば,単独型居宅介護支援事業所として運営に成功することは,ケアマネジャーとしての成功の証であると考えます。



 単独型居宅介護支援事業所は,①ケアマネジャーとして「公正中立」を守れる,②利用者に対して「不必要なプランを作成しない」,③国にとっては「社会保障費の削減」ができるという3つのメリットがあります。これらのことからも,単独型居宅介護支援事業所こそがケアマネジャーが誇りを持って仕事ができる環境であると私は考えます。




単独型居宅介護支援事業所の採算ベース

 全国の居宅介護支援事業所の中で,単独型で事業を行っている事業所は全体の約1割です。この数字は,いかに単独型居宅介護支援事業所の経営が安定しづらいかということを物語っています。



 実際,単独型居宅介護支援事業所としての採算ベースは,事業所の利用者の人数が100人を超えてからやっと黒字化できると言われています。それ以降は,利用者の人数が増えるごとに利益率が上がる仕組みです。



 一人のケアマネジャーが35人の利用者を担当するとして,ケアマネジャーが常勤3人でようやく利用者100人を越えることができます。つまり,単独型居宅介護支援事業所は,常勤3人以上の体制が整って初めて採算ベースに乗せることができるビジネスモデルなのです。常勤3人体制が整うことで,事業所として特定事業所加算を算定できるか否かが,単独型居宅介護支援事業所運営にとって大きな分かれ道であると考えられます。



 事業所当たりの利用者人数が100人を超えて,単独型居宅介護支援事業所を安定的に経営するためには,ケアマネジャーが多く在籍できる環境を整えることが必要なのです。




私が独立したわけ

 ここで少し,私自身の話をします。大学生と高校生の2人の子ども,2匹のミニチュアダックスフンド,そして夫が一人いる主婦兼社長業,加えて現役ケアマネジャー、これが現在の私です。



 私の親は近くに住んでいないため,子育てをしながら,子どもの成長に合わせて,また家庭の事情に合わせて仕事をしてきました。子どもが小さい時はパート勤務でのホームヘルパーや特別養護老人ホームの介護職員を経験し,ケアマネジャーの資格を取得後は常勤職員として働きました。そして,居宅介護支援事業所に就職する際の面接で「子どもさんを職場に連れてきてもいいですよ」と上司に言っていただけたことが決め手となり,私はその職場を選びました。



 私はある夏の日(子どもが夏休みだったため),まだ小さかった長男を連れて職場に行きました。すると「なぜ彼女だけが(子どもを職場に連れてくることが)許されるのだ」と別の職員から上司にクレームが入ったのです。そのことで,子どもを職場に連れていくことが許されない状況となりました。そのため,子どもは夏休みの期間中,私が朝8時前に家を出てから夜7時前に自宅に戻るまで,ずっと家で留守番をしていました。



 子どもとの時間を取れないのは,働く母親にとってはとても心苦しい問題です。そのころの私は,働くことに罪悪感すら感じていました。頑張って取得したケアマネジャーの資格を活かして,大好きなケアマネジャーの仕事をとことんやりたいのに,子どもたちを犠牲にしてしまっているかもしれない…。そんな思いが募る中,「働きやすい職場がないなら,私が自分でつくろう」「自分自身が満たされて納得した環境で仕事をしたい」と考えるようになりました。これが,私が独立することになった大きな理由です。

(②へ続く)



※本記事は『達人ケアマネ』2020年8-9月号(vol.14 no.6)の誌面に掲載したものです。

前田麗子2016年7月居宅介支援事業所「あすなろケアプラン」を開業。ケアマネジャー業務の傍ら,自らの独立のノウハウ,事業所運営ノウハウを基に,2018年より「ケアマネジャーを紡ぐ会」などでケアマネジャーに向けて講演活動を開始。2020年10月より岡崎市議会議員。