《特集2 記事》医療安全推進室を母体としたRRS





RRSの起動基準と運用方法の決定

 当院のRRSの起動基準は,文献の起動基準を参考にし,当院のドクターハリーの振り返りも行い協議を重ね決定した(表1)。



表1 RRS起動基準




 非医師主導でのRRSは,当院の医師の数が少ないこと,協力を得られる体制が整っていないこと,非医師主導は垣根が低くコールしやすいことを考慮した。すなわち,RRSスタッフと病棟看護師との間に権威勾配が生じにくく,良好なコミュニケーションが取れ,家族情報も含め重要な情報が円滑に共有できる(図7)。



図7 当院のRRSの工夫

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 起動時のフローは,非医師主導で当院の現状を踏まえ作成した(図8)。時間外は医師の通常業務時間でないこと,非医師主導であること,コアメンバーが実働部隊であるため,メンバーの勤務を考慮しRRS起動は日勤帯のみとした。専用のPHS番号を病院に交渉して増やしてもらい,ドクターハリー番号と1番違いとし,コール番号を覚えやすくした。PHSコール対応は,日勤業務の医療安全管理者,師長,臨床工学技士の3人で担当することとし,その他の薬剤師・看護師は勤務表を見てサブメンバーとして当番表を作成している。当番表の作成に当たっては,医療安全管理者が当該病棟の勤務表が出てから次月の当番表をつくることとした。



図8 RRS起動時のフロー

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 運用方法としては,まずRRSコアメンバーのPHSに電話が入ったらサブメンバーに連絡し,いつ現場に行くことができるかを確認し,その後病棟へ向かう。向かう前にはカルテを確認し,状況を把握する。そして,病棟担当者とRRSチームでカンファレンスを行い,患者を実際に観察する。主治医が外来や検査で手が離せない場合でも,一報を入れた上で,検査オーダーなどを指示してもらう。どうしても手が離せない場合は,近くにいる医師にオーダーを依頼している。検査がそろったところで,主治医も交えてカンファレンスし,病棟にとどまるか,救命センターへ移動するかの治療方針を考える。その際,薬剤師もチームに参加するので,薬剤師の目線での薬剤使用の提案を行う。臨床工学技士は,呼吸管理のネーザルハイフローや人工呼吸器の管理に関する提案を行うなど,各職種がそれぞれの専門性を持ってリーダーシップを発揮し活動している。また,DNRを確認し,必要時主治医から説明を行い,家族の十分な納得の上で意思決定を支援している(図9)。



図9 非医師主導のRRSチームの動き

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 病院職員が呼びやすい,垣根の低いチームを心がけており,「呼んでもらってありがとう」の精神で活動している。気軽にコールしてもらえるように,要請基準とフローがすぐ分かるよう,すべての移動式電子カルテにラミネートして取り付けた(写真1)。また,RRSメンバーはモチベーションが高く意欲的に活動してくれるので,医師とのコミュニケーションもうまくいっている。



写真1 RRS要請基準とフローをラミネートして取り付け




RRSを院内に広げるための教育

 2020年10月1日をキックオフと定めて教育を開始した。





医師への教育

 医療安全推進室長に教育,啓発活動を担ってもらった。まず,幹部へ理解を得るため,幹部会議で,RRS立ち上げの必要性,目的を説明し,院長の理解を得た。その後,部長クラスが集まる管理会議でフローチャートや起動基準を含めて説明し,さらに医局会で説明して医師への啓発を行った。新たに着任した医師には,医療安全管理者から説明,啓発を行っている。





看護部への教育

 看護部に理解を求めるため,看護部長・副部長にRRS導入の目的の説明を行った。看護部からは,看護師が少ない中,RRSのための人員の配置は難しいこと,RRSでの勤務希望はしないことが提示された。その後,師長と管理者へ説明し,理解と啓発を行った。





 医療安全推進室が母体となったので,リスクマネージャーサポーター・RSTメンバーに各部署へ教育と啓発を行ってもらうため,必要性,目的,起動基準,起動フローの説明を行った。





*  *  *



 準備期間を1年半費やし,2020年10月1日から当院のRRSを開始することとなった。呼びやすさ,覚えやすさを考え,呼称を「ラピレス」とした。





RRSチーム会議

 RRSチーム会議を月1回開催している。会議では,RRS症例とドクターハリー症例の振り返りを行い,症例検討を実施し,課題を抽出している。RRS症例の振り返りは当該病棟と行い,教育的にかかわっている(写真2)。



写真2 RRSチーム会議の様子




事例紹介

 RRSコールは,2020年度6事例,2021年度4事例であった。事例は表2のとおりである。



表2 RRS症例

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 10事例中5事例が家族にDNARの同意を得る必要がある症例だった。RRSチームとしてDNARの確認を担う役割が大きいことが分かった。どの症例もRRSチームの介入により,患者・家族・医療従事者が納得することができ,予期せぬ急変死亡を防ぐことができた。



今後の課題

 2020年度の開始から6カ月で6事例のRRSコールがあり,相談したい症例があることが分かったが,2021年度に入ってからは8カ月間RRSコールがなかった(表3)。ドクターハリーの振り返りで,病棟側から「ラピレスのことが頭に浮かばなかった」と言われ,認識の低下が見られることが分かった。そこで,2021年11月に再度サポーターへ講義を行った。すると,4カ月で4事例のRRSコールがあったことから,定期的な啓発活動が必要だと感じている。しかし,ドクターハリーは依然としてRRSコールより多く,教育的啓発が必要だと考える。



表3 RRSコールとドクターハリーの件数




 ドクターハリー症例を振り返ると,特に呼吸数の測定ができておらず,急変の前兆の有無が分からなかった。そこで,RSTにて呼吸測定キャンペーンを行っていくこと,呼吸回数測定実施率の推移を調べることとした。



 また,休日・夜間のRRSコールが適応する事例の対応方法の教育が必要であり,アセスメント能力を高めるために,リスクマネージャーサポーターとRSTメンバーのスキルアップを行い,各部署で講義,指導を行うことで強化を図る必要がある。



 当院は,非医師主導のRRSであり,特に良好な人間関係が重要となってくる。また,夜間・休日のRRS事例については,アサーティブコミュニケーションを前提に,主治医・上席医に対してTeamSTEPPS®のSBAR,CUS,2チャレンジルールを駆使して報告を行い,指示をもらうことで対応の遅れが発生することを防いでいかなければならない。



 これからも,職種を飛び越え意見を言い合いやすい人間関係づくりを大切にして活動していきたい。




参考文献

1)新井正康:院内急変を未然に防ぐRRSの考え方,導入・継続のアイデア,患者安全推進ジャーナル,No.52,2018.

2)下林孝好:中小病院でのRRS導入―「チームをつくらないチーム医療」を目指して,患者安全推進ジャーナル,No.52,2018.

3)藤谷茂樹:RRSによって変わる安全文化と気づきのトレーニングによる状況認識力の向上,患者安全推進ジャーナル,No.34,2013.