医療安全推進室を母体としたRRS
〜院内急変死亡0を目指して
高山赤十字病院

松野幸子
看護係長/医療安全管理者
専従リスクマネージャー

柚原真奈美
救命救急センター 看護師
当院の紹介
当院は,岐阜県山間部の飛騨2次医療圏に位置している。飛騨2次医療圏は岐阜県の4割の面積を占めており,人口は2022年2月1日現在で136,023人である(図1)。
図1 高山赤十字病院の医療圏"飛騨"

当院は病床数394床(一般病棟275床,救命センター16床,新生児センター10床,回復期リハビリテーション病棟45床,地域包括ケア病棟48床),付帯施設として老人保健施設100床を有する2次医療圏の中核病院である(資料,図2)。
資料 当院の概要

図2 当院の病床機能

RRS立ち上げのきっかけ
2018年度日本赤十字社医療安全目標において,Rapid Response System(以下,RRS)立ち上げへの取り組みを行うよう通達が出され,全社的に取り組みを開始することとなった。当院の医療安全推進室長は,日本赤十字社の医療安全対策部会に携わっており,当院での導入に積極的だった。また,2019年中部ブロック赤十字病院医療安全推進室会議でもRRS導入の議論が行われた。会議の中で,どのように導入していくのか,実体験を聞くことでイメージができた。
2015年10月1日から施行された新しい医療事故調査制度に伴って,予期せぬ死亡については,振り返り,対策立案を行い,報告を行うことが要求されている。予期せぬ死亡は,患者家族,かかわった医療者にとってもつらい出来事でもある。一方で,当院には急変を未然に察知する具体的な基準がなかった。ドクターハリー(院内救急コール)は根付いてきているが,患者の状態が悪化してから招集を行うのではなく,RRSを導入することで予期せぬ死亡減少につなげたいと考えた。
RRS導入の目標を次のように掲げ,準備を行った。
・院内急変死亡0を目指す。
・RRSは危険を予知しその気づきを院内に発信するための教育チームとなり,院内急変の突然死防止の安全文化の醸成を目指す。
RRS導入に向けての準備
2018年から資料収集を開始し,2019年4月から医療安全推進室長(呼吸器内科医師),医療安全管理者(看護師)を中心に,協力してもらえそうな救命センターの看護師3人(うち1人は救急看護認定看護師)を加え,RRSコアチームを結成した。
RRSを開始するために,KJ法で当院の現状を整理・分析し方向性を決定した。KJ法から導き出した方向性と課題は次のとおりである。
①母体をどこの所属とするか
②当院に合った起動基準の作成
③非医師主導にした場合のメリットとデメリット
④コアメンバーの人選をどのように行うか
⑤過去のドクターハリー症例で病態の変化に気がついていたかを振り返ることで8時間前の兆候の検証
⑥呼吸回数測定の検証
⑦勉強会の必要性と方法
⑧文献検索
⑨コアメンバーの学習
RRSの理解
まずはコアメンバーが,文献を集め会議で読み上げたり,医療安全推進室長からの講義を聞いたりするなど,RRSとは何かを理解することから始めた。
母体の所属についての検討
本来は救命救急部が母体となるところだが,人員の問題などがあり医療安全推進室を母体にすることとし,医療安全推進室長と医療安全管理者を中心に組織づくりを行った。組織づくりに関しては,コアメンバーの増員が必要であり,また多職種での構成が望ましいと考えた。そこで,救命救急センターでの経験があり,かつ呼吸サポートチーム(respiratry support team:RST)のメンバーの中から師長1人,看護師2人,臨床工学技士1人,薬剤師3人を加えた。コアメンバーには,参加したいという思いがあるメンバーが集まった。
最終的に,コアメンバーは医療安全推進室長(副院長兼呼吸器内科医師),救命救急センター勤務経験のある医療安全管理者を含む看護師7人,臨床工学技士1人,薬剤師3人で構成した(図3)。人選をするに当たって,普段から医療安全管理者としていろいろな部署に出向き,コミュニケーションをとり,信頼関係を築いていたことが大切だったと感じた。
図3 コアメンバー
過去のドクターハリー(院内救急コール)事例の検証
2012年度から2019年度のドクターハリー事例を分析した。心肺停止全59人中,心拍再開した患者は34人,その後,生存・退院した患者が10人であり,ドクターハリーは医療安全上非常に重要なシステムであることを再認識した(図4)。しかし,心拍再開後死亡した患者34人の生存時間の割合を見ると,半数以上が1時間以内に死亡に至っていた(図5)。
図4 当院のドクターハリー分析①(2012~2019年度)

図5 当院のドクターハリー分析②(2012~2019年度)

ドクターハリーで接触時,心肺停止全59人中,結果的に8割以上が死亡に至っている(図6)。せっかく心拍再開しても結局すぐ死亡に至ってしまうことに強い憤りを感じると共に,助かる命のためにもRRSが必要であることが分かった。
図6 当院のドクターハリー分析③
