第5回 障がいのある人や寝たきりの人へのレクリエーション (2/5)

片麻痺の人がいる時の工夫

健側の手を使ってもらい励ます

 片麻痺がある人の場合,健側の手が使えます。利き手でなくても,回数を重ね,慣れることで,上手に動かせるようになる人は多いです。また,「以前よりずっと上手になりましたね」という励ましの言葉は,利用者に希望を与え,モチベーションを向上させます。余談ですが,私は言語障害のある人にもよく「以前より声が大きく聞こえやすくなりましたね」「歌がお上手になりましたね」などと声をかけるようにしています。

健側だけじゃあボールは投げられない? そんなことはありません!

 「片手だとボールを持つことさえできない」と,ボールを投げるゲームを諦めていませんか? そんな時は,ビーチボールの空気を少し抜いてください。それだけで少したるみができて,健側の手だけでつかむことができます。

ボールはレクリエーションの現場で大活躍

風船:軽くて柔らかく,口の部分が持ちやすい。体に当たっても危険がない。また,動きが遅いので,高齢者の目にとまりやすい。

ビーチボール:軽くてよく弾み,体に当たってもあまり痛くない。空気を少し抜くことにより片麻痺の利用者でもつかみやすくなる。また,空気を抜くと弾みにくくなるので,目標地点に落ちてとどまりやすい。例えば,床に点数を書いた紙などを置いた場合,普通のボールだと転がって止まりにくいが,少し空気の抜けたビーチボールは止まりやすい(⑤ビーチボール遠投)。

ボール:重さや大きさによりいろいろな用途がある。ピンを倒すボウリングのように勢いよく転がってほしい場合は,テニスボールや少し重めのゴムボールなどの硬くて重いものが良い。また,キャッチボールなどは柔らかくて軽いキャンディボールがお勧め。
 利用者は避けたり逃げたりすることができない人が多いので,当たった場合のことを考え,リスク管理は完璧に行うことが大切です。テーブル卓球などは,鈴が中に入ったボールを使用すると,視覚障がいのある人でも参加できることがあります。介護者がそばで声かけをしてボールゲームを楽しんでもらいましょう。

お手玉:フロアに数字や文字やクイズの紙を置く場合,お手玉を投げると上に上手に乗ってくれることが多い。

その他:パッチワークのように布などで作ったボールも,片麻痺の利用者がつかみやすい。ビー玉や新聞紙を丸めた玉など,レクリエーションで使うボールはほかにもたくさんあるので,用途に応じて活用してほしい。

 一人でできなくても,ペアになってそれぞれが片手でできる役割を担います。2人で力を合わせると,連帯感が生まれ,関係づくりの支援にもつながります。また,手が使えなくても,口で吹くゲームには参加できますし,下肢に障がいがあり蹴ることができなくても,代わりに手で投げる,あるいは新聞紙などでゴルフクラブを作り,手で打つなど,足の代わりはたくさんあります(①ペアで大掃除②みんなで大掃除④空き缶転がし)。

ベッドからでも参加できる

 最近まで当デイに,ベッドの上でレクリエーションに参加していた利用者がいらっしゃいました。元校長先生だったその利用者は,クイズやパズルなどのレクリエーションになると真っ先に手を挙げて正解を出してくださったものです。

 寝たきりでも,ベッドをフロアに運んで,ラジオ体操をしたりゲームを楽しんだりすることは可能です。医療職と相談の上,本人の意思を確認して「参加したい」と言う利用者にはどんどん参加してもらいましょう!

 また,両手両足を動かすことができず,「投げる」「転がす」「蹴る」などの動作ができなくても,「筒」を使ってボウリングに参加することは可能です(③筒でボウリング)。バリエーションとして,カーリングなどで「ボールをたくさん中心に近付けた人が勝ち」というルールのゲームも楽しいですよ。