
村瀬崇人
まごころステーションすくらむ 代表 主任介護支援専門員/社会福祉士・精神保健福祉士
第14回
苦手意識のあった栄養ケアマネジメントに取り組んだ事例①
分かっていても回避しにくい増悪リスクとどう向き合うか
Dさんが心筋梗塞を起こし救急搬送され,ICUに入院したのは2カ月ほど前のことです。この時は非常に危険な状態に陥ったため,介護支援専門員が遠方に住む娘に連絡を取り,緊急に病院へ向かってもらうこととなりました。
治療の結果,入院前とそれほど大きく変わらない状態で自宅に戻ることができましたが,一時は長期入院や重度化も想定される事態でした。
これ以前にDさんが入院したのは約1年前で,その際の主症状は呼吸苦でした。さらにその1カ月前にも同じ症状で緊急受診,さらにそれ以前にも,全身のむくみや倦怠感,呼吸苦などで短い入退院歴があります。
Dさんの場合,従前より,主治医から慢性心不全と慢性腎不全が指摘されていました。心機能の検査結果はここしばらくは横ばいであるという医師の説明でしたが,腎機能については,場合によっては1年程度で人工透析が必要になる可能性があるとのことでした。
また,塩分の摂取を少なくするように,利尿剤を出しておくが水分を摂りすぎないようにと指導がありました。
さて,今回,Dさんが重症化した際に筆者が思ったのは,率直なところ,「分かっていたけれど,防げなかった」ということです。さまざまな慢性疾患を有する高齢者の生活支援を行うにあたり,利用者の嗜好なども反映した食べる楽しみと治療上の必要性に基づいたカロリー制限,塩分制限,水分制限などへの対応を両立させることは,介護支援専門員にとって重要な課題ではありますが,実際には非常に難しい問題であるとも思います。
Dさんの場合も,少なくとも2年くらいの経過の中で何度となくDさんとやりとりをし,配食弁当による塩分制限食の導入やデイサービスでの食事提供,ヘルパーの調理支援など対応してきましたが,結局は,Dさん自身が配食弁当を断ってしまったり,それ以外に好きな物を買ってきて食べたりするため,主治医による治療上の指導や指示については,残念ながら十分には実践できていませんでした。
このことは筆者も気になっていましたが,解決のための有効な具体策が思いつかず,大きな残存課題としていました。そのような状況の中で起こったDさんのICUへの入院は,ある意味では筆者の予測の範囲内であり,だからこそ,分かっていながらも防げないという無力感さえ覚えました。
実は,栄養面について利用者への支援を行いたい,行う必要があると思っている,あるいは,何とか少しずつ取り組んでいる,しかし,残念ながら思うように成果が出ないという結果は,筆者にとって初めてではありません。過去にも複数回ありました。
そういった経験から,筆者自身の中に栄養ケアマネジメントに対する苦手意識もあったのが正直なところです。今回も同様の挫折をしてしまった,そう感じた部分も否定できません。
ただし,今回の事例については,筆者はまだ諦めたくないと思いました。それは,Dさん自身が,なかなか貫徹はできないものの,食生活の改善を頑張ろうという気持ちは持っているという話をよくしてくれており,実際に,途中で頓挫してしまっても,その都度,いったんはDさんなりによく取り組んでいたからです。
押しつけない,しかし,諦めない栄養ケアマネジメント
さて,今回の退院時,Dさんより「今度こそ頑張りたい」と塩分制限食の配食弁当を続けたいという意向が示されました。筆者はすぐに配食を手配しましたが,これまでの経過から,本人の意欲に頼るという一手だけでは十分な対応が続けられないのは明白でした。
そこで,配食弁当の継続が難しくなった場合の対応策について検討し,管理栄養士と連携した居宅での栄養ケアマネジメントを採用しました。
もちろん,病院に行けば外来で栄養指導を受けることはできます。しかし,Dさんはほとんど自宅で食事を摂っており,また,Dさん自身が買い物をしたり,簡単な調理をしたりすることもありました。そのため,Dさんの生活の場である居宅において,Dさんの日々の食事の様子などをより詳細に把握し,その嗜好やライフスタイルに合わせた栄養指導を行うことが望ましいと考えたのです。
そこで筆者は,管理栄養士の居宅療養管理指導を活用し,Dさん本人や調理の支援を行うヘルパーへの助言・指導ができるように,その準備に取り組みました。
(②へ続く)
※本記事は『達人ケアマネ』2024年4-5月号(vol.18 no.4)の誌面に掲載したものです。
村瀬崇人●居宅介護支援事業所を開設、運営している。認知症の独居者に対して定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを用いた365日24時間の在宅支援、高次脳機能障害者へのリハビリテーションや就労につながる支援、認知症の人とご家族のためのACP支援、多数の在宅看取りの支援などさまざまなケアマネジメントを手がけた。地域では介護支援専門員協会地域支部長として活動している。