通所リハビリテーションに求められる機能と社会参加支援加算
通所リハビリテーション(以下,通所リハ)は,1つのサービスで完結するのではなく,「地域完結型」として利用者を地域で支えるネットワークが重要であり, その中核となる役割が求められます1)。そのため,通所リハでは,さまざまなサービスとのつながりを持つことにより,社会参加支援加算の算定に結びつきやすくなるのではないかと考えています。

通所リハ「卒業」を目指す支援体制の構築
当施設が社会参加支援加算を取得するに当たり,3つの課題がありました。
慣れない場所には行きたくない
1つ目は,通所リハが利用者同士のコミュニケーションの場となっていたことです。卒業に向けての取り組みを行おうとすると,「次の施設には友達がいないから辞めたくない」「慣れた施設の方がいいから辞めたくない」などという声が多く聞かれました。
そこで,既存の利用者に対して取り組みを行うのではなく,まずは新規利用者に対してできる限り通所介護を併用した利用を勧めるようにしました。具体的には,新規依頼がきた際,利用者の身体機能や生活状況などの情報を基に,理学療法士である管理者が卒業に向けた取り組みができそうと判断した場合には,通所介護との併用を勧めることにしました。利用契約は支援相談員として配置している作業療法士が行い,自宅の家屋環境,身体機能や生活状況,利用者や家族のニーズなどのアセスメントを行い,卒業に向けてのおおまかな取り組みの説明を行います。
通所介護と併用することによってコミュニケーションの場を2つつくることができ,卒業後も慣れた環境(通所介護のみ)に通うことができるため,卒業に向けた取り組みを行っても,前述のような声が聞かれることが少なくなり,円滑に進められるようになってきました。
リハビリテーションがなくなることが不安
2つ目は,利用者や家族から,卒業してしまうとリハビリテーション(以下,リハビリ)がなくなってしまうのが不安なため通所リハを継続したいという声が多く聞かれたことです。そこで,「卒業後の安心感」を与えるために,リハビリ会議の場を利用しています。
リハビリ会議では,次の3つのことを伝えています。
①医師から通所リハでのリハビリ計画を説明してもらい,卒業後の生活の共有を図る。
②リハビリ継続の希望がある場合,当グループはリハビリ機能強化型デイサービスとして通所介護の
運営も行っており,機能訓練指導員としてリハビリ専門職が配置されていることを伝える。そして,
卒業後も当グループの通所介護を利用することによって,リハビリ専門職がいる施設でリハビリを
継続できることを説明。
③「卒業=終了」というイメージを持っている人が多いため,卒業後も必要であれば再度通所リハを
利用できることを説明。(なお,私たちは卒業ではなく「修了」という言葉を使うように心がけている)
これらをリハビリ会議で利用者や家族,介護支援専門員に説明し共有を図ることによって,卒業後のリハビリがなくなってしまう不安感が軽減され,通所介護へ移行できるようになってきています。
介護支援専門員も通所リハの「卒業」に不安を感じている
3つ目は,介護支援専門員によっては,通所リハは「卒業を目指していく事業所」であることは認識しているものの,利用者が通所リハを卒業するまでの流れや卒業後のイメージがわきにくく不安を感じていることがありました。そのため,前述の2つの取り組み以外に,介護支援専門員に当事業所の卒業(修了)への取り組みを知ってもらうためのチラシ(資料)を作成して営業で説明し,卒業(修了)に対する不安感を少なくしたり,地域の介護支援専門員の研修会などに参加して意見交換を行ったりし,介護支援専門員と顔の見える関係づくりを行うことによって,安心と信頼のもとで利用していただける事業所を目指しました。顔の見える関係づくりを行うことによって,新規利用の相談の際に介護支援専門員から通所リハを使うべきか通所介護を使うべきか悩んでいるなどの相談を受けることも増え,通所介護との併用を勧めることも増えてきており,卒業(修了)につながることが多くなってきています。

利用者の「卒業」に向けたアプローチ
事例1:Aさん 脳梗塞後遺症による軽度の運動麻痺
回復期病棟から退院後,当通所リハに利用希望の依頼があり,「畑仕事を再開したい」という希望があった。Aさんの運動麻痺は軽度であり,歩行可能で日常生活動作は自立していた。早期に目標が達成できる状況と判断し,通所リハを週2回,当グループの通所介護を週1回利用することを提案し,利用開始となった。
通所リハでは,居宅訪問を行って畑仕事をする上での導線や動作を確認し,屋外歩行練習や畑動作練習,身体の自己管理ができるようになるために自主練習を提供して,通所介護でも同様の運動を行えるように通所介護のリハビリスタッフと協力した。
利用3カ月後,畑仕事が再開できるレベルにまで達したが,Aさん本人の気持ちとしては「もう少ししてから再開したい」ということだったため,定期的な身体の評価や動作は通所介護のリハビリスタッフで行うこととなり,通所介護のみ週2回の利用を続け,通所リハは卒業となった。
事例2:Bさん 脳梗塞後遺症による中等度の運動麻痺,軽度の高次脳機能障害
回復期病棟から退院後,当通所リハに利用希望の依頼があり,家族より「留守番ができるようになってほしい」という希望があった。脳梗塞後遺症にて中等度の運動麻痺,軽度の高次脳機能障害による注意障害があるものの,車いすを使用し見守りでのトイレ動作が可能であった。集中的にリハビリを行ってほしいという家族の希望があり,通所リハを週4回利用することとなった。留守番の課題として,トイレ動作の自立と昼食の準備が挙がった。利用開始から毎月行われるリハビリ会議にて,自宅でのトイレ動作の状況を確認し,昼食の準備について相談を行った。
利用開始後3カ月目のリハビリ会議にて,Bさんは車いすでのトイレ動作が自立し,昼食も家族の協力のもと一人で可能となった。そのため留守番が可能となり,通所リハの利用が週2回となった。
4カ月目のリハビリ会議で,Bさん本人から一人で歩けるようになりたいという希望が挙がった。当通所リハは,定員80人の大規模事業所であり,人数も多く施設も広いため,高次脳機能障害があるBさんが歩行自立になるのは難しいが,人数が少ない当グループの通所介護であれば歩行が自立するのではないかと判断し,通所介護との併用となった。
その後,通所介護では歩行が自立し,徐々に自宅でも歩行が自立するようになったため,通所リハを卒業となった。
通所リハ利用者の「卒業」後の移行先との連携
通所介護を併用している場合は,通所介護スタッフのリハビリ会議への参加や電話連絡などを活用し,リハビリの進捗状況や運動内容を共有し,徐々に通所介護のみに移行できるように調整しています。
利用者が安心して通え,ニーズに合わせた移行先を提案できるようにするために,地域ケア会議などに参加し,介護支援専門員や通所介護スタッフから地域にある通所介護事業所の特徴について情報収集をしています。
通所リハスタッフは,同グループ内のみであるが通所介護と小規模多機能型居宅介護の生活機能向上連携加算による訪問を行っています。卒業先に通所リハスタッフが訪問することで利用者の安心感につながり,施設のスタッフと利用者の情報交換の場となっています。
社会参加支援加算の算定に向けた課題と
これから算定する事業所へのエール
社会参加支援加算を算定するためには,利用者を卒業させなければならず,同時に収入を安定させるためには利用者の獲得も並行して行っていかなければなりません。そのため,通所リハは地域に出て活動する必要があると考えます。地域の通所介護事業所と生活機能向上連携加算を取得する体制づくりを行うことができれば,移行先の施設の状況が把握でき,利用者へ卒業先の提案がしやすくなり,状態が落ちた利用者を獲得しやすくなる可能性もあります。
また,地域ケア会議など多職種が集まる機会に参加することにより,顔見知りが増え事業所間や介護支援専門員との情報共有が行いやすくなり,新規利用者の獲得や卒業が円滑になると感じています。
通所リハスタッフは積極的に地域に出て,ネットワークをつなげるための体制づくりの中核となることを期待したいです。
引用・参考文献
1)一般社団法人全国デイ・ケア協会 配布資料 |