利用者が安心して在宅生活を継続していくためには,食事,入浴,排泄,移動といったADLを安定して行えることがまず大切になります。そのため,デイサービスでは,職員が利用者一人ひとりの動作能力や生活環境を知り,それに合った個別機能訓練を提供することが求められています。デイサービスにおける個別機能訓練は,利用者の在宅生活を維持するために,今後ますます重要視されてきます。

 ただ,実施する職員の中には,機能訓練を病院などで行う治療目的でのリハビリテーション(以下,リハビリ)のイメージでとらえている人がいます。そのため,「なぜ筋力アップを目指すのか?」「なぜ歩行訓練をするのか?」といった目的が明確化されておらず,漫然と訓練を繰り返しているだけのように見受けられることがあります。

 このことが問題視され,2015年度より,利用者一人ひとりの居宅を訪問した上で自宅での生活状況やADL等の状況,生活環境をしっかりと確認することが必要となりました。個別機能訓練にかかわるデイサービスの職員は,ぜひ視野を広くし,頭を柔らかくして機能訓練メニューについて考えていただきたいと思います。

 生活場面で役立つ機能訓練メニューを実施できるデイサービスは,これからの超高齢社会の中でとても重宝されることでしょう。

 本稿では,個別機能訓練を現場でスムーズに導入できるように,明日からすぐに実践できる効果的な生活期のリハビリメニューの考え方と具体的な実施方法を紹介します。

個別機能訓練は評価することが求められる

 デイサービスで個別機能訓練を行う(加算を算定する)には,定期的に(3力月に1回以上)進捗状況について評価することが求められています。つまり,利用者の居宅を改めて訪問した上で,居宅での生活状況を確認するとともに,一定期間での前後の比較を行い,実施している機能訓練メニューが適合しているかの評価が必要なのです。そして,機能訓練メニューの継続あるいは変更を検討していきます。変更する場合は,今後どういったことを目標とするかということを明確にして個別機能訓練計画に記載する必要があります。

 個別機能訓練計画には,ケアプランと同様に長期目標と短期目標を記載する欄があります。長期目標には,概ね6力月後の本人の状態を思い描いて,生活の目標や心身機能の目標を記載します。一方の短期目標には,概ね3力月後の本人の状態を思い描いて,長期目標に到達するために何ができるようになればよいかを考えて計画を立てていきます。個別機能訓練計画を立案する際は,「居宅訪問チェックシート」や「興味・関心チェックシート」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000080901.pdf)なども活用するとよいでしょう。その上で,機能訓練メニュー,実施時間,実施者を記載していきます。

居宅訪問の際,何をどのように確認するか?

 デイサービスでの個別機能訓練のキーワードは「利用者一人ひとりの生活環境を知る」「多職種で連携する」の2つです。

 機能訓練指導員やプログラム作成者の方は,利用者一人ひとりの居宅の状況が思い浮かぶでしょうか? 玄関の上がり框の高さ,居室からトイレまでの動線や距離,手すりの有無,杖や歩行器を使用しているか否か。それらの情報を持ち寄り,多職種で共有して機能訓練のメニューを作成する必要があります()。


「居宅訪問チェックシート」の活用

 利用者の居宅を訪問したら,まずは先述の「居宅訪問チェックシート」を活用して,現在のADLの状況や家族の介護状況を確認しましょう。在宅での生活を知るため,特に食事・入浴・排泄の様子と,移動の状態について確認します。そして,このシートを記載していくことで,長期目標や短期目標となるものも見つけていきましょう。

 例えば,トイレでのズボンの上げ下げを家族が介助していることが分かったなら,デイサービスで身の回りの動作を練習していくことで,トイレ動作の自立度を高められるかもしれないと考えます。そこから,長期目標として「トイレでのズボンの上げ下げを自分でできるようになる」,短期目標として「手すりを持った立ち上がり動作が安定する」など,関連した目標を挙げていきます。

「興味・関心チェックシート」の活用

 「興味・関心チェックシート」は,広く趣味活動まで記載されているため,項目を見ながら,本人や家族に興味のあること,昔やっていたこと,過去の仕事や趣味などを知り,今後取り組みたいこと,生活の目標などを考えるヒントにします。

 話しているうちに,本人の今後やりたいことが浮かび上がってきた場合,それらを長期目標に入れてみることをお勧めします。現状の身体機能とあまりにもかけ離れている場合はともかく,目標に掲げることでモチベーションがアップしたり,生活空間が広がったりするような内容を話し合って,計画に記載していくことがコツです。

 例えば,「遠くにいる孫に会いに行き,欲しいものを買ってあげる」といった大きな目標がある場合,その目標を達成するためのスモールステップを用意することを考えます。長期目標を「公共交通機関を使って孫の家まで行くことができる」とし,短期目標を「孫の家まで車の助手席に乗っていけるよう体力をつける」とする,といった具合いです。

 すると,長期目標があることによって「孫に会える」という楽しみが生まれ,短期目標を達成するために屋外に出ることによって閉じこもりを防止し,生活空間が広がる可能性が生まれます。

 このように,本人にとってこの先が楽しみになったり,生活空間が広がったりする目標を用意できると理想的です。

ADL維持・向上を目的とした個別機能訓練の具体例

 それでは,デイサービスでの個別機能訓練の具体例を見ていきます。Aさん(女性,80代)があなたのデイサービスに来るとして,「アセスメント⇒目標設定⇒機能訓練メニューの作成⇒実施⇒評価」の流れで考えてみましょう。

アセスメント

 実際の居宅での生活を聞き取りながら「環境面」と「身体機能面」に分けてアセスメントしていきます。

《例》
【環境面】
 ・玄関に段差がある。
 ・普段はベッド上で過ごしており,居室からトイレまでの距離が約10m。
 ・夜間のトイレ回数は約5回。寝起きに歩こうとした時の転倒が心配。
 ・役割と言えるものがなく,日中は寝て過ごしており,昼夜逆転傾向。
【身体機能面】
 ・歩行が不安定で,トイレのドアを開ける時に転倒したこともある。
 ・独歩は困難で,歩行器を使用してなんとか歩いている。
 ・段差は手すりを持てば見守りにて昇降可能。
 ・歩行は足を引きずって歩き,10mの歩行に1分以上かかる。

目標設定

 機能訓練と言うと身体機能面にばかり目が行きがちですが,個別機能訓練では「活動・参加」を目標としたプログラム設定がとても大切です。

 玄関の段差を昇降できれば,外出につながります。すなわち,段差昇降の訓練メニューは,それだけを見たら単なる筋トレのように感じますが,実は社会参加のためのプログラムと言えるのです。また,Aさんの場合,昼夜逆転傾向にも配慮し,日中は家庭で洗濯物を畳むなど「役割を持つ」,孫とメールのやり取りをするなど「社会性を維持する」,といった視点で目標設定をしていきましょう。

《例》
【長期目標】
 「日々の生活動作が安定する」
【短期目標】
 「歩行器を使っての歩行が安定する」「玄関の段差昇降ができる」
 「洗濯物が畳めるようになる」「孫とメールのやり取りができるようになる」

機能訓練メニューの作成

 日課や役割としてできることなどについて実際の場面を想定し,それに必要と思われる動作を模倣した機能訓練メニューを立てるのがコツです。また,座ってできる作業的メニュー,運動メニューなどを複数用意することをお勧めします。そうすることで,体調に合わせて運動の強度などを調節してメニューを提供することができます。さらに,実施中の様子も見ながら,その利用者に最も合ったメニューを継続していけるとよいと思います。

 Aさんに対しては,次のようなメニューが考えられます。

《例》
 ・歩行器や平行棒での歩行の練習
 ・段差昇降練習
 ・転倒シミュレーション体操(写真1
 ・洗濯物をたたむ上肢の体操


実施

《例》
 ・Aさん宅の玄関の段差の高さを測り,同程度の高さの段差を昇降する(写真2
 ・洗濯物を畳むことを想定して施設のバスタオルを畳む
 ・孫とのメールのやり取りを想定してタブレットを使う

 

【コラム】住宅改修や福祉用具も視野に入れて
 例えばAさんの場合,絶対に歩行器で歩いてトイレに行かなければならないとは限りません。トイレまでの要所に手すりをつけ,安心して行ける環境をつくる,あるいはポータブルトイレを導入し,歩かずともトイレに行けるようにするなど,その方にとって暮らしやすい環境を考えていくことも大切です。ぜひ,家族やケアマネジャーと相談して,現在の環境のまま頑張ることが本当に最善なのか考えてみてください。


評価・モニタリング(記録の仕方・変化の見つけ方)

 利用者の生活状況を点数化する評価用紙として,「バーセルインデックス(BI)」が使いやすいでしょう。数値化して記録しておくことで,機能訓練メニューの変更あるいは継続などの判断材料にできます。

 また,実施前に立てた目標について「未達・一部達成・達成」に丸をつけ,コメント欄に実際の状況を記載します。

《例》
 「 未達 ・ 一部達成 ・ 達成 」
 段差昇降では,在宅の段差が手すりを持てば見守りで昇降できるようになった。
 さらに安定して段差昇降が行えるように,機能訓練メニューを継続する。

まとめ

 令和3年度の介護報酬改定により,通所介護における個別機能訓練加算は「より利用者の自立支援等に資する個別機能訓練の提供を促進する観点から,加算の取得状況や加算を取得した事業所の機能訓練の実施状況等を踏まえ,従来の個別機能訓練加算(Ⅰ)と個別機能訓練加算(Ⅱ)を統合し,人員配置基準等算定要件の見直しを行う」とされており,これまでの「活動・参加」の促進を目標とすべく,個別機能訓練加算(Ⅱ)が加算(Ⅰ)に包含される形となるようです。したがって,今後の個別機能訓練加算では,身体機能の維持・向上はもとより,「活動・参加」につながる機能訓練メニューをいかに提供できるかということがますます大切になってくるということです。

 現時点で公表されている令和3年度からの個別機能訓練加算の単位数や算定要件などについては,資料を参照してください。


 ぜひ,利用者の生活の楽しみや生きがいなどが増えるデイサービスを目指してください。応援しています。

引用・参考文献
1)厚生労働省:第199回社会保障審議会介護給付費分科会(令和3年1月18日),参考資料1「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」