2020年度,介護事業所では慢性的な人財不足に加え,新型コロナウイルス感染対策の業務が増え,現場はますます忙殺されています。

 現在,厚生労働省の社会保障審議会では書類の簡素化などの業務省力化を進めようとしていますが,これから議論を行う段階であり,その実施はまだ先になりそうです。また,仮に実施されたとしても,介護事業所における「アセスメント」「ケアプラン」「モニタリング」「介護記録」は専門性の確保という観点から省力化が許されず,今後も作成し続けることが求められます。

 2016年に,筆者はこのテーマについて執筆しましたが,(『地域包括ケアを担う施設ケアマネ&相談員』Vol.7,No.3)その当時と比べても,現在の利用者のニーズは多様化しており,ますます高い専門性が求められてきています。

 例えば,デイサービスでは,従来の「生活機能の維持向上」に加え,「認知症・重度者への対応」や「地域連携の拠点」としての機能を持つ必要があります。地域内の連携ではまず,事業所内の各職種が連携し,その後に他事業所との連携が必要となる場面が増えています。その各場面で必要となるのがケアプランであり,ケアプランはあらゆる連携における根幹をなすものです。

 しかし,実際には,ケアプランが形骸化し,現場スタッフが一度も見聞きすることなくケアに当たったり,その存在すら知らなかったりする場合も少なくありません。なぜ,これほど重要なケアプランを周知・共有することが難しいのでしょうか。

なぜ周知・共有することが難しいのか?

人財不足によるマニュアル介護が定着している

 令和元年度の介護労働安定センター「介護労働実態調査」によると,半数以上の介護スタッフは人手不足を感じており,それに伴って各事業所ではできるだけ省力化できるような体制を整えています。

 これまでは,時間をかけ丁寧に新人スタッフを教育していた事業所も,即戦力として働いてもらわないと現場が回らないため,マニュアルによる画一的な介護を実施せざるを得ず,それ以上の介護はスタッフに負担をかけるものとして行われない場合が少なくありません。

ケアプランを知らなくても介護業務が成り立ってしまう

 マニュアル重視の介護体制で現場業務が定着してしまうと,例えば「月曜日の午前はカラオケ」「午後からはレクリエーション」という,メニューありきのサービス提供でも成立してしまいます。また,スタッフの病欠などによりそれすら難しくなってくると,基本介護である「食事」「入浴」「排泄」が優先されるため,利用者の個別ニーズに沿うような介護が難しくなってくるのです。

立てっぱなしのケアプランの弊害

 マニュアルだけで介護業務が完結してしまう現場においては,次第にケアプラン自体の重要性が薄れていき,更新の度に日付を書き換えるだけのものになってしまいます。

 しかし,利用者の抱えているさまざまな悩みやニーズが,画一的なマニュアルだけですべて解決できるはずはありません。そうなると,本来の介護事業所としての目的を果たすことができなくなってしまいます。さらに,そのマニュアルから外れる利用者は,いわゆる「問題のある利用者」扱いされることも少なくありません。

多職種協働における情報共有の重要性

 本来介護は,利用者それぞれの悩みやニーズに基づいたサービスを提供することを目的としなければなりませんが,そうなると介護スタッフだけでそれらをマネジメントしていくことは困難となります。

 医師や看護師の医療スタッフ,理学療法士などのリハビリテーションスタッフ,栄養士などの栄養・調理スタッフが一丸となり,その利用者の生活を改善できるようなサービスを提供していかなければなりません。

 また,各専門職がバラバラにケアを行っていては効果的・効率的でなく,統一したケアを提供することができません。そこで,それらの情報を集約し,役割分担と何をするのかを明文化したものがケアプランなのです。

ケアプランで重要なことは,次の3つです。

・各専門職のアセスメントを深める
・アセスメントによって導き出されたニーズを共有する
・目標達成までのプロセスを明確にする

多職種協働によるカンファレンスの実際 ~通所介護の事例

 それでは,実際に私がかかわった事例を紹介いたします。

【事例】
 90代,男性,要支援2,独居。パーキンソン症候群による歩行障害あり。ヘルパーの利用も拒み,現在の生活維持が困難にならないように,リハビリ特化型の通所介護の新規利用について相談を受けた。

アセスメント
 自宅での生活は,食事はインスタントラーメンなど簡単なものは自炊でまかなえており,生活空間はきれいに使っている状況でした。本人も「特に困ったことはない」とのことでしたが,浴室の段差が大きく,入浴が十分に実施できない状況でした。

 そこで,本人と相談し「安全にシャワー浴ができるようになる」という方向性で,利用をスタートすることとなりました。

事業所内カンファレンス
看護師:高血圧,糖尿病などの基礎疾患はないか→なし
理学療法士:家の中で,段差によるつまずきやふらつきによる転倒はないか→時々ある
生活相談員:独居による不安があるか→話し相手が欲しい
介護スタッフ:睡眠,食事は十分か→十分ではないものの,生活に支障はない

サービス提供内容
 まずは,歩行を安定させるために,理学療法士により下肢を中心としたトレーニングを提案しました。また,長年使用していた杖の長さが合っていなかったため調整しました。

 食事がインスタント中心で,偏食傾向だったため,看護師からホームヘルパーの利用を勧め,週に1回,食事の援助ができるようになりました。加えて,生活相談員や介護スタッフが生活状況の聞き取りを行い,本人もこれまであまり気にしていなかった家の中での転倒に気をつけるようになり,下肢トレーニングにより歩行もずいぶんと安定してきたことから,半年後にはシャワー浴が行えるようになりました。

事例のまとめ
 この事例では,本人の身体状況と生活状況をそれぞれの専門職で共有しながら,生活の改善につながるサービスを提供したことで,当初の目的が達成できました。ホームヘルパーなどの他人が家に入ってくることを嫌がる方は多いのですが,その必要性について,「あなたができないから,代わりにやる」ということではなく,「栄養状態を良くすると,歩行も安定する」という専門的な見地からアプローチすると,しぶしぶであっても受け入れてくれることがあります。

まとめ

 本稿では,多職種協働によるケアプランの周知徹底と情報共有の実践について,実際の事例を踏まえて解説しました。人手不足の中,コロナ対応の業務が増えていく中で,一人ひとりのニーズを大切にし,それを共有しながらサービスにつなげていくのは,大変なことです。

 しかしそれらは,私たちにとって,本来の仕事の目的であり,欠かすことのできない視点です。このような時期だからこそ,今一度,確認していかなければなりません。