みなさまの法人は、「雇用調整助成金」の申請は、お済ませでしょうか?

 2020年5月19日より、この助成金の申請がより簡略化されました。これは、コロナウイルスの影響で、会社(施設や事業所)が(一部)休業することにより、従業員に休業手当を支払う場合に、助成金が支給されます。下線の「休業」とは、労働者がその事業所において、所定労働日に働く意志と能力があるにもかかわらず、労働することが出来ない状態をいいます。

1.雇用調整助成金の申請とは?

 4月半ばから、「緊急対応期間(4月1日~6月30日)の雇用調整助成金」の申請が始まりました。この雇用調整助成金は、以前からある助成金の1つです。今回この制度を使って、休業をさせた会社への金銭的なサポートを行います。通常は、それなりの書類量が必要になりますが、特例として書類量を極力少なく、申請が出来ることになりました。特に、5月19日より小規模事業主向けの申請が新設され、更に申請しやすくなりました。

 具体的には、以下の2つに申請書が分かれます。
 従業員が概ね20人以下の会社や個人事業主の方を対象に
 「小規模事業主用の申請書」

 それ以外の会社(20人超)を対象に
 「小規模事業主以外用の申請書」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html
※申請書は、必ず最新版を参照してください。

 この20人というのは、いわゆる週40時間で働く正社員やフルタイムのパートの数になります。20人超の事業主は、この簡略化された申請用紙を使用しても、書き直しを命ぜられることがあるようです(助成金の計算方法が異なるため)。20人超はそれなりの書類量が求められます。詳しくは、「雇用調整助成金 ガイドブック(簡易版)」をご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
※ガイドブックは、必ず最新版を参照してください。

 また、経産省の持続化給付金のようにオンライン申請も可能との話もありましたが、現在はシステムトラブルのためオンライン申請が出来ません。郵送、窓口での申請になります。

2.対象となる会社、対象者、休業条件は

〈対象となる会社は?〉

・売上が前年度と比べて、5%以上減少している。
 例)2019年4月(もしくは2018年4月)と2020年4月の売上を比べます
・雇用保険適用事業所で、受給に必要な書類を整備、労働局に提出、保管している。
・過去3年間に、不正受給をしていない。

〈対象者は?〉

・従業員全員(雇用保険に加入していない従業員も含まれます)
 *ただし退職が決まっている従業員や解雇、退職勧奨した従業員は除きます
  (注)雇用保険に加入している従業員は、この雇用調整助成金が支給されます。
     雇用保険に加入していない従業員は、「緊急雇用安定助成金」が支給されます。

〈休業の条件は?〉

・労使間の協定により実施される(休業協定書を作成する(トラブル防止のため)。
 ただ、提出書類の実績一覧表に、経営者と労働者の署名があれば労使協定の添付は省略できます)。
・休業させた従業員に対して 「平均賃金の60%以上」を支給していること。
・対象従業員に係わる休業実施日の延日数が、所定労働日数の延日数の 2.5%以上となること
 (休業等規模要件)。
 つまり、月160時間の従業員であれば、4時間以上休業させる必要があります(160時間×2.5%=4時間)

3.助成額について

 ここでは、小規模事業所用の助成額について解説をしますので、20人超の会社は計算方法が異なります。助成額を計算するときに、小規模事業所のみ、以下の計算方法が認められました。

○助成額 =「実際に支払った休業手当額」×「助成率」・・①
 *20人超は、前年度の雇用保険料賃金総額や所得税徴収高計算書を使って、
 「従業員1人当たりの平均賃金額」の額を定めます。

 ①の助成率は、80~100%に分かれます(中小企業の助成率)。介護・医療は、自治体から休業要請が出ませんでしたので、助成率100%は選べません。

 休業手当率が100%の場合は、下記表より助成率の上限94%になります。休業手当率が60%の場合は90%、解雇などをしている場合は80%になります。

 

4.休業手当額について

 次に、「休業手当額」について解説します。算出する場合は、下記のように計算します。従業員ごとに計算が必要です。

○休業手当額=3カ月の平均賃金額 × 休業手当率(60~100%)・・②

 3カ月の平均賃金額とは、「休業日の直近の賃金締切日以前3カ月間の賃金の総額を、その間の総日数(暦日)で除す」ものです。

 尚、休業手当率60%で支給する場合はご注意ください。給与の6割程度と思われるかもしれませんが、実際は5割ちょっとです。これは、3カ月の給与総額を、労働日ではなく、総日数(歴日数)で除するからです(例)労働日22日、暦日31日)。

例1)給与の締めが月末の会社、4月に休業
1月:31日、基本給+手当25万、通勤手当1万円、残業4万円 計30万
2月:29日、基本給+手当25万、通勤手当1万円、残業6万円 計32万
3月:31日、基本給+手当25万、通勤手当1万円、残業3万円 計29万

計算式②から 30万+32万+29万/31日+29日+31日=10000円(1日あたりの金額)

休業手当は、予定された労働日(所定労働日)に休業した場合のみ支払います。
4月に全部休業(22日)休業手当率 60%とすると、22日×10000円×60%=132000円
4月に全部休業(22日)休業手当率100%とすると、22日×10000円×100%=220000円
*休業手当率100%で支払っても、実は額面どおり(満額)になりません。

 しかし、上記の様な計算を毎月するのも大変ですので、会社によっては「休業協定書」で、どのように計算するか、いくら支払うか?を決めて実施することになります。

例文1)「(基本給+手当)÷所定労働日数 で計算し、100%で支給します」
100%であれば、労働契約書の「額面どおり」ということです。
*年間のお休みが決まっていれば、平均所定労働日数を使用することも出来ます。
 平均所定労働日数=年間労働日数÷12ヶ月

例文2)「3カ月の平均賃金額 で計算し、休業手当率60%(もしくは100%)で支給します」

5.給与明細について

 助成金の担当者が確認しやすいように、休業した日の控除額、休業手当支給額を賃金明細、賃金台帳に記載する方がよいでしょう。

 実際には、給与明細等に「休業控除」「休業手当」の項目を設けて記載します。そして「休業控除」は、就業規則・給与規定の定めにより、欠勤控除と同じように計算します。

○(基本給+諸手当)÷月の所定労働日数×休業した日数・・③

 先述の例1なら、③より(25+1万)÷22日×22日=26万円を控除

 「休業手当」は、休業協定書で定めた額(平均賃金の60%以上を支払うこと)。
 額面どおりであれば26万円、休業手当率100%なら22万、60%なら13.2万円となります。

6.今後の雇用調整助成金について

 現時点では、この助成金は、1人1日あたり8330円が上限金額になっています。
そのため、支給される1日の助成額は、①の計算式より以下のようになります。

額面どおり 26万÷22日=11818円×94%=11108円 → 上限額8330円が支給
休業手当率100%     10000円×94%=9400円 → 上限額8330円が支給
休業手当率 60%      6000円×90%=5400円 → 5400円が支給

 5月27日に第2次補正予算案が閣議決定されました。国会の審議で可決されればその対策が実行されます。

 重要な変更点は下記になります。

①特例措置期間は、「4/1~6/30」→「4/1~9/30」に変更にされます。
②休業・教育訓練助成額の上限額は「8330円」→「15000円」に変更されます。
 *月額の上限は「33万円」です。
③助成率は、*解雇等を行わない場合
 「9/10又は10/10」→「10/10」に変更されます。

 この変更により、更に利用しやすくなります。

 ③の適用条件が、現状のままであれば、自治体から休業の要請をされていなくても助成率が100%になります。上記「3.助成金の助成額について」で説明した「休業手当の支払率と助成率の表1」が撤廃され、「90~94%」の助成率が「100%」になります。

 となると、上限額15000円までの人は、休業手当率100%で支給しても、会社の負担は0円になると思います。

 先ほどの支給額は、下記のようになります。
*中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、平均60%の超える支払い率で

額面どおり 26万÷22日= 11818円×100%=11818円(支給額)
休業手当率100%     10000円×100%=10000円(支給額) 
休業手当率 60%       6000円×100%= 6000円(支給額) 

 現時点で申請を考えている方は、この詳細がわかるまでお待ちになった方が良いかもしれません。書類の書き直しになるためです。

 しかし、今後この申請方法がどうなるか?遡及はどうなるのか?既に申請している会社の場合、その差額はどうなるのか?など、不明な点がありますので続報が待たれます。

 売上が昨年度と比べて5%下がっている会社は、この助成金を申請することが出来ます。

 今後の事業を継続させるためにも、ぜひご申請ください。

参考文献
1)雇用調整助成金の手続を大幅に簡素化します 5/19 厚生労働省報道発表
https://www.mhlw.go.jp/stf/press1401_202005061030_00001.html
2)雇用調整助成金支給申請マニュアル(小規模事業主)5/19 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000631526.pdf
3)雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)5/22 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000633345.pdf
4)平均賃金はどのように計算する 神奈川県労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/saiteichingin_chinginseido/heikinchi.html

5)令和2年度厚生労働省第二次補正予算案(参考資料)
p41新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置の拡大
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/dl/20hosei04.pdf