施設マネジメント


【第18回】 「注目される次期介護報酬改定の審議推移」

【改定方針の審議】

 2022年11月28日、介護保険部会では給付と負担のテーマで次期改定基本方針の審議1)が行われました。今年1月に議事録が公表され、福祉業界内での関心が高まっています。やはり内容は、財務省の財政制度等審議会での改革案にほぼ沿う形で誘導されています。その内容で注目を集めている論点は、下記の6つです。

①利用者の負担は原則2割に拡大
②ケアプランや多床室の有料化
③福祉用具貸与のケアプランは介護報酬カット
④軽度者(要介護1・2)の地域支援事業へ移行
⑤特養入所制限(要介護3・4・5)の規制緩和(要介護1・2も利用可)
⑥医療介護業界の小規模事業所の再編(業務効率化も不十分のため)

 これに対し業界関係者からは、「厚生労働省も現場がわかっていないと感じているが、財務省案はひど過ぎる」「厚生労働省を応援して、財務省を抑えてもらわなくては」との意見が多数出ています。小規模事業所再編の必要性への指摘に至っては、「開いた口が塞がらない」「どうやってやるつもりなのか(無理だ)、机上の空論に過ぎない」といった反発もあり、財務省と厚生労働省とで話し合われるであろう「花火の散る予算配分の話し合い」の推移に注目が集まっているところです。

 このように福祉業界では、今まで同様に「省庁間の予算配分の都合で報酬検討がされる」といういつものパターンが続く前提で審議を眺めています。しかし、本稿を今まで読んでこられた読者の方々はわかっていらっしゃると思います。

 今や社会保障の基本的な方針を検討する場は、規制改革検討会議や全世代型社会保障構築会議となっています。介護保険部会の議事録を読むとわかりますが、全世代型社会保障会議の報告をもとに意見を言う場を与えられているだけです。厚生労働省内での改定方針の審議というものは、前述の諸会議での方針に沿って業界関係者の不満のガス抜きとして意見を参考に聞き、多少の肉付けをしたり、業界内に方針を説明したりして内容を意識づけ、浸透させる場になっているのです。

【経営判断のため重要となる論点の整理】

 医療福祉業界では、次期介護報酬改正の審議において検討が行われている論点について、「ほぼ決定事項に近いもの」と「今後の審議で見直して多少なりとも変更される可能性があり得るもの」が整理されていません。

 この分類は2つの観点で見直すと見通せます。1つ目は歳出削減の効果の高さ、2つ目は改革工程表2022のKPI 2)です。

 KPIと言うのは閣議決定の達成目標ですから、これはほぼ決定事項と思ってください。

 ただし、目標の設定に自由度の差があり、「数値目標まで設定されて強力に取り組むもの」と「前回よりも一件でも増えているなど、取り組まれていれば良いもの」「検討する期間の期限が設定目標となっているだけで多少修正が効くもの」などいろいろありますので、これらに注意しながら眺め直す必要があります。

 

 改革工程表2022のP.48、49を見てください。後期高齢者医療制度における窓口負担割合の見直しについて、その円滑な施行に向けた工程が示されていますが、介護保険制度についても併記で「応能」負担を検討しています。介護保険の利用者負担を原則2割に拡大することは今年夏までに検討して結論を出すとなっていますが、施行時期が医療保険と同時ではないだけでほぼ決定事項の扱いです。ここから、「対象とする者を判断する基準を見直すこと以外は変更を許容する予定はない」ことがわかります。

 

 また、福祉業界内で反発が強い小規模事業所の再編は、「将来的に具体的数値を達成目標として設定して強力に進める施策」と位置付けられていることから、取り下げられることはありません。

 

 これが次期改定では「政策誘導を伴う医療・介護業界再編」、つまり診療報酬や介護報酬を利用した"合従連衡の勧奨"や"半ば強制的な連携法人化"といった、業界関係者からしてみれば「想像を超えた経営上の大きな課題」を突き付けることになります。

 本連載第9回から第11回で予測した業界再編の波は、残念ながら着実に現実となってきています。今後は、サイバーセキュリティをキーワードにして2027年までにオンライン体制全体を整える方向で、さらに加速します。そこに生じる負担は機器やソフトの導入コストどころではすみません。社会保障分野の業界全体に対してBCP義務化にリンクさせ、自衛隊並みのセキュリティ対策に組み込み、災害や戦争時の抗堪性も要求してくるでしょう。これについては、次回以降で取り上げていきます。

 さらに、ケアプランや多床室の有料化も報酬に包括して組み込む方向で検討されているため、導入が前提です。

 

 一方で、福祉用具貸与カット、軽度者の地域支援事業への移行はKPIで検討対象なだけなので、消費者からの世間的な反発が大きければ変更する余地が残されています。特別養護老人ホームの規制緩和にいたってはKPIにも取り上げられていないので、財務省との今後の交渉では高い確率で譲歩させることが可能です。

 

 次回は、医療・介護保険部会で2022年を起点として"なぜ異常に財務省案(財政制度等審議会での改革案)への誘導が強くなっているか"について理由を解説します。

 ここをしっかり押さえていないと、このあと岸田政権において総理が本部長となり医療DXを利用して実際にどこまで社会保障費を搾り取りにくるのか、医療介護業界再編・災害やセキュリティ対応を要求する必要がどこまで政府内で出ているのか予測できなくなってしまうからです。

引用・参考文献
1)厚生労働省:第103回社会保障審議会 介護保険部会議事録(2022年11月28日)
  https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001035970.pdf (2023年2月閲覧)
2)内閣府:経済財政諮問会議 新経済・財政再生計画改革工程表2022(令和4年12月22日)
  https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/report_221222_2.pdf(2023年2月閲覧)