施設マネジメント


【第10回】 「岸田政権の誕生は
    医療介護分野へどのような影響を与えるか(下)」

介護・医療系法人は国費も投入しての再編・統合が行われる

 新型コロナウイルス感染症対策が突きつけた問題は、「単独で存在している零細な中小介護施設や病院には連携が全くないこと」です。このため、クラスターが発生した時に「玉突き支援」1)も調整できず、感染防御の設備投資を行う経営上の体力も人員も絶対的に不足しているため、緊急事態への対応能力が極めて低いのです。

 このことに関して、前回取り上げた令和3年第5回経済諮問会議2)では、経済産業研究所の竹森議員が「今回でもJCHO(地域医療機能推進機構)とか連携のあるところは、非常にうまく人員を配分してコロナに対応している。そのため、もっと大きな組織で地域的な連携ができるところ、役割分担ができるところを育んでいくことが大事だ」と指摘し、より効率的な経営に変えていく投資ができて、しかも連携が可能な大きな組織だけに経営を任せるような再編も促しています。

 また、岸田政権の組閣後、厚生労働省で10月11日に開催された第15回医療介護総合確保促進会議3)でも、コロナ禍となった令和2年度限りの予算事業であった各医療機関や地域で病床機能や医療機関の再編を行う際の雇用調整、債務承継、そして初期投資といったものを全額国費の事業とした対応について説明。地域医療介護総合確保基金の中に位置づけて、単年度ではなく継続的に再編の支援を行うことが明らかにされました。

 

先行して福祉施設系では老健で、
再編とともに統合・連携法人化が進む

 福祉分野では、医療は隣接分野とはいえ「自分たちとは関係ない」との雰囲気があります。しかし、令和3年第5回経済財政諮問会議で示された医療再編の資料には、医療法人と社会福祉法人の経営状況が併載されています。

 

 このように、介護と医療の改革は同様に扱われ、一体的に議論、改革することで検討されています。これは、2024年の医療介護同時報酬改定に合わせた一時的なものではないことに注意しなければなりません。

 岸田首相は、防衛大臣であった経歴もあり、リスクマネジメントを自身の独自色として打ち出し、得点を挙げる分野と考えています。デジタル化を進め情報を提出させる体制整備と並行して、将来的には生物・化学兵器への対応能力向上をも視野に入れた危機管理体制を国内に整備する観点で、医療介護分野にメスを入れるつもりです。

 そこでボトルネックになっているのが、設備投資を行うこともできない組織規模の零細さです。そのことが明確になっている以上、日本医師会の抵抗も少ないとなれば、大規模化させるため医療法人の統合や連携法人化を強力に進めるのは確実です。

 介護施設では、老健の大半が医療法人であり、防疫体制では治療後の体力回復途上の患者を受け入れる先となる“後方病院”としての役割を求められています。この結果、母体病院での法人統合・再編に巻き込まれる形で、老健に対して最初に大規模化・連携法人化の波が押し寄せることになるでしょう。

報酬改定による強力な誘導が再編の推進手段として
採用されると予測できる

 注目されるのは、体制加算ではなく診療報酬そのものに介護保険と同じく1入院当たりの包括払いを原則とする利益誘導を行うことで、地域医療構想に基づく業界再編を促そうという提案が行われていることです。

 

 包括払いが原則となれば、入院期間の短縮によるコスト削減を前提とした「回転率の向上」が救急病院経営の成否を左右することになります。そして、競争の激化、すなわち仕事量の上昇や患者数の確保に対応出来ない病院から、閉院や吸収合併といったことを検討せざるを得なくなる。つまり"自然淘汰"が進むことになります。

 日本医師会は、このようなドラスティックな診療報酬改定による経営危機の回避や利益保護に対応するため存在するのですから、本来であれば厚労族議員を総動員して激烈なロビー活動を行うことが予想されるところです。

 しかし、医療業界内ではコロナ禍においても能力的に弱い病院が無駄に生き延びているため、いつまでも人員不足が解消しないとして不満が高まっています。「自然淘汰で閉院が増えることで深刻な人員不足が補填される面があるならば、それも悪くない」などという意見も多い状況です。

 前回の本稿(中)で取り上げたように、日本医師会そのものから"再編を強制してほしい"と提言が出るほどですから、この流れを押しとどめるものは殆どありません。2022年・2024年の診療報酬改定では、このような誘導が本格導入され、業界の合従連衡、法人格の大規模化、連携法人化が急速に進むものと予想されます。

 一方、介護保険分野でも零細な組織規模が同じように問題視されているため、診療報酬とは別な形ですが同じく介護報酬にリンクさせる形で、法人統合による大規模化・社会福祉連携法人化が強力に推進されることになります。この議論は、2021年末から介護保険部会の次期基本指針検討で本格的に検討され議論されることになるでしょう。

 

引用・参考文献
1)日総研 介護人財Web版 新型コロナウイルス感染症のクラスター発生!介護施設への外部支援の実際と見えてきた課題(2021年4月9日更新)
2)内閣府 令和3年第5回経済財政諮問会議 議事要旨(2021年4月26日)議事(2)経済・財政一体改革(総論・社会保障)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0426/gijiyoushi.pdf(2021年11月閲覧)
3)厚生労働省 第15回医療介護総合確保促進会議(2021年10月11日)(資料2)総合確保方針の改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/index_00013.html(2021年11月閲覧)
4)内閣府 令和3年第5回経済財政諮問会議 資料3‐2 社会保障改革~新型感染症を踏まえた当面の重点課題~(2021年4月26日) 
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0426/shiryo_03-2.pdf(2021年11月閲覧)
5)厚生労働省 保険局 医療介護連携政策課 資料3 医療・介護の総合確保に向けた取組について(2021年10月11日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12403550/000841085.pdf(2021年11月閲覧)