施設マネジメント


【第5回】 外国人スタッフの本音②

 各論第五回目は、実際に当法人が支援している日本語初級者の留学生に話を聞き、それをもとにお話していきたいと思います。

各論第三回の検証

専門用語の理解には他職種の協力も不可欠

 1年目のグループホームでのアルバイト時は、介護の専門用語はほとんどわからなかったといいます。従来型特養で、専門用語をベトナム語に訳した書籍を使用したことと、介護福祉士養成校での授業が始まったことで徐々に覚えていったようです。

 例えば、"アルツハイマー"という言葉はベトナム語にもありますが、それは医療関係者しか知らない単語でした。ベトナム人留学生Bさんは、母国で看護学校を卒業しているのでベトナム語のアルツハイマーは知っていましたが、日本語の発音と微妙に異なるため、当初はアルツハイマー型認知症とベトナム語のアルツハイマーにあたる単語が同じことを指しているとわからなかったそうです。

 また、2人の留学生が口を揃えて言うのは、"看護師が使用する専門用語が特にわからない"ということです。介護職が緊密に連携する看護・リハビリ・栄養など他の専門職が使用する用語の理解については、新たな課題だと感じています。

職員10人によるチェック表が自信をつけた

 従来型特養で勤務を開始した当初は、"わからない単語を質問し、それでもわからない場合はやってみせてくれたことで理解できた"といいます。しかし、"自分が聞き取った日本語の指示通りできているか""自分の移乗介助はご利用者を危険にさらしていないか"ということに不安を感じながら働いていたそうです。

 その後、"10人の職員のチェックをうけてから移乗介助や排泄介助の独り立ちする"というシステムにしたことで、今では自信をもってできています。

新たな課題

記録の課題

 介護福祉士養成校の実習中には実習記録を記載します。実習記録は手書きではありますが、おおよそ決められた内容を記載すればよいので、留学生もそれほど難しいと感じなかったようです。また、現在は非常勤職員という立場であるため、現場では何か気づいたことがあれば手書きのメモを作成し、それを基に日本人職員が代わりに記録しています。

 しかし、介護福祉士養成校を卒業して正職員となれば記録をしなければなりません。また、パソコン入力の場合でも、キーボードがベトナム語やクメール語とは異なる上、留学生たちは大半の日本人が使用するローマ字入力に不慣れです。直接日本語入力をする場合でも、文字の配置を覚えなければなりません。その練習方法の確立が大きな課題となっています。

 なお、当法人では、記録の作成などにスムーズに取りかかれるように、「すみだ日本語教育支援の会」と協力して、ローマ字入力、漢字変換方法、簡単な文章の作成と入力ができるよう、約1か月間、1日2時間の短期集中講座を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染予防期間になってしまったため、残念ながら中止となりました。

事故や急変時の対応

 2人の留学生に"今一番心配なこと、身につけたいことは何か"と質問したところ、2人とも"事故時の対応や自分のミスで事故を起こしてしまうこと"を心配しており、"介護技術をもっと身につけたい"と答えました。特に、誤嚥性肺炎をおこしやすい利用者の食事介助や、移乗介助時に落下させてしまわないかを心配していたようです。

 現場では、一日の中で状態が変化する利用者について、朝の申し送り内容をプリントしたものを渡して持ち歩くように指導していますが、特に注意が必要な内容は日本人職員がマーカーを付けて説明しています。これについては、ルビがなくても理解できています。

 また、転倒している利用者を発見した時に、その様子を伝えるのは簡単な言葉を使えばできると言いますが、容体の急変や熱発に気づいた時も含めて"周りに職員がいない時に対応できるか"をしきりに心配していました。これは、日本語の問題というよりも、日本人の新人職員にも共通することです。

 来日1年目は日本語の問題から、介護という仕事をどのようにとらえているのか、私たちも確認が難しいと感じていました。しかし、今回のインタビューを通して、専門学校や現場での指導により、"介護が命を預かる仕事であること"や"安心安全が第一であること"が十分伝わっていることがわかり、彼女たちの成長を感じました。

日本語上級者のOJT

 すでに正職員として働いている元留学生(N2、N1レベル)のOJTはどうでしょうか。日常のコミュニケーションがほぼ問題なくとれるようになった日本語上級者であっても、勉強は続いています。

 特に、カタカナで表記された物品名や外来語には苦労しています。また、漢字圏出身者であっても、献立や食材名は読めてもどのようなものなのか、文化の違いから想像ができないと言います。

 例えば「白和え」は白と和えは読めても、豆腐と野菜を和えたものとはわからないのです。また意外だったのは、漢字圏出身者にとっても「魚へんの漢字」はわからないということでした。

 このような細かい学習は、その都度辞書で調べたり、見て覚えたりしていますが、職員の手助けが必要なのはやはり記録の作成です。日常の記録はなんとかできても、ヒヤリハットや事故報告書を作成する際に、利用者の状態を誰が読んでもわかるように文章で説明することが一番難しいと言います。

 その時は、「本人が表現したいこと」と「日本人が読んで理解していること」にズレがないか、留学生から口頭で説明してもらい、ズレがなくなるまで何度も書き直ししてもらうことが大切です。

 前述したように、非常勤職員だった時は事故の記録を正職員に任せておけば良かったのですが、正職員となった今は、日本人の非常勤職員から事故の状況を聞き取り、文章にまとめなければなりません。この作業では、自分の頭の中にあるイメージだけでなく、「人が話した状況をイメージして文章にする」必要があるため、難しいと感じているようです。

 それに加え、記録を読み込むようになると、他職種が記入した記録にも目を通すことが増え、日本語上級者であっても他職種が使う専門用語も最初はわからなかったと言います。やはり、外国人介護スタッフの最終的な課題は読み・書きにありますが、日本語上級者のフォローアップについては、まだまだ模索が必要です。

まとめ

 第4回、第5回と日本語初級者の留学生介護職にインタビューし、日本人(日本語講師、グループホーム管理者、従来型特養介護主任)が考えた配慮や工夫について、実際の留学生が有効だと感じた点を検証しました。早い段階から、わからない所をそのままにせず、いつでも何度でも質問できる環境づくりが、結果として日本語能力の不足による事故のリスクを減らすのではないかと思います。

 また、日本語上級者であっても、業務の独り立ちまでに日本人の新入職員より長めに時間をとる必要がありました。外国人介護職の育成には、より時間をかけて丁寧に行うことが最終的には近道なのだと感じています。