「オイッ! 個人情報の担当者を出せ!」
怒鳴って電話がかかってきたら誰が対応しますか?
ある会社の経営者からお話をお伺いしました。その会社は個人情報管理の社内運営に力を入れており、漏えい対策は出来ていると自信を持っていらっしゃいました。社内のコンプライアンスには十分に配慮をして、社内外に向けての契約書や誓約書関連も必要なものは全て取り揃えておりました。また業務においても、データ管理においてはシステムに十分な投資をしています。
しかし、「オイッ! 個人情報の担当者を出せ!」と顧客からクレームの電話が入ってきました。電話を受けた者は、誰にどのようにつないで良いか分からず、結局直ぐに経営者自身が対応にあたったということです。情報安全管理には経営者自身に自負があったので、突然ひっぱたかれたような気分になったということです。
どうもそのお客様は住所の記入を求められた時に、その会社にしか書いていない記号を仕掛けていたようです。従ってその記号の入った住所宛で他の企業から営業のチラシが送られてきたのは、その会社が漏えいさせたに間違いないというのです。漏えいの原因はまだ分かっていませんが、突き付けられた証拠にお詫びするほかありません。
住所と名前くらいと甘く見ていたわけではありません。しかし、どこか抜けていたことはなかったか? これで十分だと自己満足していなかったか? クレームが入った時に十分な対処が取れていたのか? 誰を叱責するわけでもなく反省するばかりで、とりあえず事故対応手順の再確認を行っているとのことです。

子供:どうして人を傷つけてはいけないの?
✖ 親 : それは警察に捕まるからだよ
個人情報管理の従業員教育はとかく面倒なものです。交通事故を起こさないように注意するのと同じで、注意する方も注意される方も「分かっているよ」という気持ちがどうしてもぬぐえません。
「個人情報保護」や「個人情報漏えい」と聞いて口には出さないけれど本音では、「相変わらずウルさいなあ。」「注意はしてはいるけど、でもこれ以上は面倒臭いな。」「これ以上心配してもキリがないよね。」と感じる人が多いのではないでしょうか?子供が親からいつも同じことを注意されているようなものでしょうか。
「スピードを出さないで。運転中にスマホを使ってはダメだよ。とにかく気を付けて!」
「カバンを忘れないで。送り主不明なメールを開けてはダメだよ。とにかく気を付けて!」
親に車の運転の注意を受けて大して気にしないことと同じで、会社の上司からいつもの注意を受けても効果的ではないかもしれません。
ウンザリさせては、注意力を働かせてもらえない。結果的に事故の確率は減らないということになってしまうかもしれません。とにかくこの手の注意を会社のルールや決め事だとして伝えても、「そんな決め事を守っていては仕事にならない」と言いながら、実際の現場では従業員達の都合の良いように作り変えてしまっていることも多いのではないでしょうか。こんな現場の実態と従業員の意識を変えるにはどうしたらよいのでしょうか?

個人情報を守ることは・・・、
人を守ること! 働く環境を守ること!
コロナ禍における在宅勤務のため、事業所以外へ情報を持ち出して作業をすることはイレギュラーなことです。管理責任者の許可や別途監督が必要なこととなります。自宅では家族に顧客情報の書類を見せないよう、テレワークの内容も聞かせないよう注意喚起しても、「そんなこと言っていたら仕事にならない」と反発されます。しかし、注意や決め事に反発する人に問いたいことは、「もし自分の情報がそのようにぞんざいに扱われたとしたらどう思うのか」ということです。
他人の個人情報に注意しなさいと問われたらそれでは自分は仕事が出来ないと言い、自分の情報が適当に扱われると他人の仕事にクレームをつける。人は被害者に一番早く変身するものです。
もし、子供に「どうして人を傷つけてはいけないの?」と問われたら「それは警察に捕まるからだよ」というように答える親がいるでしょうか。それでは本当の答えになっていません。法律の問題から他人を傷つけてはいけないのではなく、誰もが自分を大切にしてもらいたいと思うように他人も同じように大切にしなければならないということを教えるべきです。これは個人情報においても全く同じことなのです。
他人の個人情報が書かれた紙をそのままにせずに見えないように自然に裏返すことが洗練された大人のマナー。個人情報を密かに守ってあげられることが他人への優しさであるという意識が醸成されれば、それこそが「人を守る」「働く環境を守る」ことになるのです。事業において個人情報を扱う人々においてその意識が高まれば、より安全な社会へと繋がっていくでしょう。

事業者にとってますます厳しさを増す社会環境において
必要なのは意識や環境の改善
2020年6月の個人情報保護法の改正によって、漏えい事故の罰金が10万円以下から1億円以下となりました。ヨーロッパのGDPRやアメリカの賠償補償は、もっと凄まじい金額の罰金や懲罰的制裁金が課せられることと比べると、日本の罰金が1億円以下になったといっても実際は大きくないのかもしれません。欧米の法律も近年ますます厳格となり、さらに国内の社会の個人情報に対する風潮も法律もより厳しいものになるでしょう。
法的責任や社会的責任を負わされる事業者側は、サイバーアタックに対する防御策などのセキュリティに対する投資の負担も増えるかもしれません。
しかし同じ環境で働くみんなの意識を変えることで、漏えい事故を起こさないようにすることは必ず出来ます。そのために個人情報に関する業務をウルサイことだと認識させたままではいけません。自分達の仕事のために自らの情報を預けて下さった顧客に優しくすることだという本当の認識に改めなければなりません。
㈳日本個人情報安全協会は、個人情報において安全な社会への啓蒙活動に努めます。
厳しくなければ情報は守れません。また優しくなければ人は守れません。
一般社団法人 日本個人情報安全協会
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