| Q1.週休3日制の導入は、人材不足解消に役立つのでしょうか? |
→ なぜ人材不足に陥っているのか、その原因により導入効果は異なります。
人材不足には必ず原因があります。そして、その原因ごとに解消方法も異なります。
例えば、「人材不足解消に向けて、介護職に選ばれるような魅力的な職場環境を整備しよう」と目標を掲げたとしても、職場に対して何を魅力と感じるのかは人それぞれです。
本連載では、週休3日制導入のPRポイントとして、「給料は変わらず休みが増える」「日勤務帯での複数配置がしやすく、業務負担の軽減や安心して働ける職場環境の整備につながる」などをお伝えしてきました。
現状の人材不足の原因を分析し、それを解消するために上記のような改善が必要なのであれば、週休3日制の導入により大きな効果を得ることができるでしょう。

週休3日制導入施設の声
〈社会福祉法人徳誠会春輝苑〉
現状として、各法人が人材確保に向けて様々な特色をアピールされているかと思います。当施設では、週休3日制を一つのアピールポイントとし、「週休3日制後の職員の声」(後述)をそのまま求職者に伝えています。
なお、当施設では週休3日制導入前より離職率が低かったため、導入後もその数値に大きな変化はありませんでした。
〈介護老人福祉施設松風〉
地域や立地により状況が異なりますので、とても難しい質問です。
私共の施設では法人理念に基づき、『週休3日導入』を華美に新聞広告などでPRしてこなかった経過が有ります。とは言え、時が経つにつれ週休3日を希望して入職される方が増えている実情が有ります。
あくまでも個人的な意見ですが、週休3日を武器にするような極端な戦略は得策ではないように感じています。ハローワークや法人HPなどに、ごく自然な形で『週休3日』で働ける可能性を示せば良いように思います。
また、我々が意識していることは、『人材確保の強化』ではなく、『職員が定着したいと思える職場づくり』の実践です。どこの事業所も抱えている悩み事であると思いますが、労働人口の低下に伴い、数と質の低下が顕著になってきています。かつては、退職した分の人材を容易に補うことができましたが、昨今の情勢はそのようにはいきません。
経営陣が職員の目線の高さで今後を見据えて戦略を練る必要がある時代ですし、そのようなスタンスに職員の心が敏感に反応するのも、最近の傾向ではないかと分析しています。
〈大田区の介護施設C〉
職員の確保に関しては、ハローワーク、紹介会社、職員紹介(とも呼び)、ホームページの採用サイトを利用しています。
ホームページに職員採用サイトを開設し、週休3日制導入していることをアピールしたところ、週休3日制を希望する入職者が増えました。
→基本的に週休3日制導入はすべての業種・形態の導入可能です。
私たちが週休3日制の導入を支援した中には、従来型の施設もあります。施設ごとの様々な事情に合わせ、導入しやすい形にアレンジすることが可能です。
〈アレンジの例〉
・勤務表を無理なく作成する
→週休3日制を希望する職員を導入ユニットに移動してもらう
変形労働時間制※に変更する
・業務負担を軽減する
→夜勤を16時間から10時間に変更
・労働時間の延長をケアする
→早番や遅番の各種手当上乗せや見直し
→日勤帯の休憩時間を増やす …など
※変形労働時間制 労働基準法では、労働時間を1週間40時間、1日8時間までと定めています。これに対し、例えば1カ月の労働時間を4週間で160時間とした場合、変形労働時間制を適用することで、第1週に44時間、第2週に40時間、第3週に36時間、第4週に40時間といったように、合計で160時間の労働とすることができます。すなわち、1週間に40時間を超えても40時間を下回っても、1カ月トータルで160時間労働ができるという事です。
また、従来型では、4フロアある中の1フロアに週休3日制を導入し、そこでの試験的な運用でリスクヘッジを図りながら、他のフロアに導入していった事例もあります。この事例では、先行して導入したフロアの職員がその良さを口コミしてくれたため、その後の導入もスムーズに行えたようです。
週休3日制導入施設の声
〈社会福祉法人徳誠会春輝苑〉
当法人は全フロア従来型で導入済です。
〈介護老人福祉施設松風〉
私共の法人では、従来型における週休3日の導入に至っておりませんので、実績に基づいた回答はできません。
僭越ながら、私のシミュレーションに基づき回答させて頂くと、導入は可能であると考えます。但し、導入の効果については、『週休2日3交代制』の事業所と対比すると大きな乖離がありますので注意が必要です。
そもそも、従来型事業所では週休2日2交代制(16時間夜勤)のシフト体制を採用している事業所が大半です。実際の勤務状況から分析してみると、『夜勤明け』(公休以外)があることから、実際の勤務日数が18日程度に留まる事業所が多いと思われます。
このような事から、職員から次に様な声が出てくることが想定されます。
「職員配置が薄くなり、1人当たりの仕事量が増えた」
「休みが増えた感覚が薄くメリットを感じにくい」(出勤日数ベースでは変化なし)
「夜勤明けが公休日になってしまうのは嫌だ」
2交代制シフトは、何と言っても16時間夜勤者が1日の3分の2の時間を拾っていることが大きなポイントです。夜勤者を軸にその他シフト職員が連携していく流れが否めません。週休3日導入により、軸になるシフトを失ってしまうことになりますので、マイナス的印象は大きくなることが想定されます。
職員が16時間夜勤の重労働から解放されるメリットは大きいと思います。しかしながら、夜勤入りの翌日が公休日になってしまうといった代償もあり、職員が前向きになれない要因になるのは間違いありません。出勤日数が変わらないといった事からも、従来型施設(2交代制シフト)の事業所が前向きに週休3日を導入していくのは難しさがあると考えます。
〈大田区の介護施設C〉
ユニット型で運用していますが、従来型でも週休3日制を選択する職員が一定程度いれば、導入できるのではないでしょうか。
| Q3.週休3日制の導入後、職員にどのような変化がありましたか? |
→ 「ケアの質が向上した」という声が多く聞かれます
週休3日制の導入にあたり、6~7割程度の職員が反対意見を持っているケースが多くみられます。新しいシステムに対し反対意見が出るのは当然のことであり、まずは丁寧に時間をかけて説明し、理解してもらうことが大切です。
スムーズな導入とするためには、「とりあえずやってみないとわからない」といったものを含め、賛成意見が7割を超えたあたりから準備を進めていくとよいでしょう。
なお、導入前に反対していた職員の多くは、「休みが増えて残業が減った」「業務が軽減された」などの現実を受け、「週休2日制には戻りたくない」と考えることが多いようです。
また、精神的、肉体的な負担の軽減は、ケアの質向上にもつながっています。
週休3日制導入施設の声
〈社会福祉法人徳誠会春輝苑〉
当施設での週休3日制導入が2020年で、導入後すぐに緊急事態宣が出されコロナ禍となったため比較しにくい状況ではありますが、多くの導入効果を得ています。
例えば、週休3日制の導入前は、会議や委員会を残業で実施していましたが、導入後はほぼ業務内に実施できています。
また、導入前は月4-5回の夜勤明け時にほぼ毎回超過勤務だったものが、現在ではほぼ定時に退社できるようになっています。1人あたりの職員の導入前後の年間残業時間数を比較してみると、8.5時間から3時間に減少しています。
さらに、夜勤業務を日勤者が手伝えるようになり、夜勤者の負担軽減も見込めるようになりました。
その他、「日勤常勤の働き方が激変した」「プライベートが充実した」「導入前の勤務形態にはもう戻れない」といった声も出ています。
その一方で、「日勤での9時間45分勤務は長い」と感じている職員もいるようです。
〈介護老人福祉施設松風〉
先ず、私共の事業所は、『多様な働き方の実現』を念頭に掲げておりますので、週休3日の働き方が一つの選択肢でしかありません。仮に、一度週休3日を選択しても週休2日に戻すことさえ自由です。
この様な状況下で導入から3年が経過しておりますが、週休3日を選択した職員や組織全体の雰囲気から「後悔している」と言った声は全く聞こえてきません。
具体的には、週休3日から週休2日に戻した職員は一人もいませんし、「二度と16時間夜勤には戻りたくない」と言った声が多く聞かれています。
職場環境や介護の質においても大きな効果が有り、時短パートの方がいないことで業務が回っていかないかつての不安感から完全に開放され、早番・遅番2名体制であっても残業する事もなく、休憩時間も余裕でとることが出来ており、安定したサービス提供に繋がっています。
週休3日を導入し、職員から最も多く聞かれたのが、「より多くの被りの時間を確保したことにより、自分たちのゆとりの時間を得ることが出来たことは大きい」と言った声です。
・被りの時間=コミュニケーションを可能にする時間
・被りの時間の増加=生産性の向上
このように考え、どれだけのコミュニケーションを取ることのできる職場環境であるか?といった視点に基づき改善のきっかけを模索してみても良いかもしれません。職員同士のコミュニケーションはケアの質向上に繋がり、利用者の幸せに繋がる事を願っています。
なお、他のユニット型施設から入職した職員(経験年数10年)が、口をそろえて『松風は時間がゆっくりと流れていてイイですね』と言います。これが、正に週休3日の効果ではないでしょうか。
〈大田区の介護施設C〉
時間外勤務が減ったことで、身体的・精神的な余裕がみられています。その表れとして、今までは時間外勤務として参加していた会議や委員会へ、至極当たり前のように勤務時間内に参加できるようになったことがあげられます。
また、夜勤が16時間から10時間へ短くなり、身体の負担が減少したことで、夜勤明けの朝に多かった、薬の間違いが減りました。16時間勤務では、集中力や判断力が落ちていたと思われます。

そして、多くの職員が「週休2日制には戻りたくない」と言います。配置転換の際、週休3日制のユニットへは異動がスムーズですが、週休2日制への異動は困難例が増えてきました。職員の定着率が向上したことも、大きな変化だと考えています。
〈事例提供・取材協力〉
※希望により、一部イニシャル表記としております。
介護老人福祉施設 松風 http://www.heisei-kai.jp/
社会福祉法人徳誠会 春輝苑 http://www.syunkien.com/
大田区の介護施設C |