介護保険制度/介護報酬


【第4回】 「プラス改定に暗雲!? 超加速する介護給付費分科会より」

1.プラス改定は夢幻か?

 本連載の中で、「新型コロナウィルスの影響も大きく、2021年はプラス改定になる可能性も考えられる」とお伝えしてきました。経営実態調査の結果も、介護事業全体の収支差率が2.4%と低水準であり、その期待は高まっていたところでした。

 しかし、その後財務省より2021年のプラス改定に否定的な意見が出されました。ここにきて、プラス改定に暗雲が立ち込めたと言えるでしょう。

 新型コロナウィルス対策の影響により、例年通りに審議会も開催されていなかったのですが、現在かなりのスピ―ドで審議が進んでいます。特に11月16日と26日の審議会では、2021年法改正の方向性がかなり見えてきました。

 今回は、それらの最新情報から、本連載の第2回でも触れた「5つの柱」について、さらに理解を深めていきたいと思います。

2.明らかになってきた5つの柱の内容

 2021年の介護報酬改定に向けて示されている5つの柱は、の通りです。


 以下、各項目の論点をふまえ、解説していきます。

1)感染症や災害への対応

主な論点(方向性)
①感染症対策の徹底
②業務継続に向けた取り組み
③地域と連携した災害への対応
④通所介護等事業所規模別の報酬に対する対応

 「①感染症対策の徹底」に関しては、運営基準への記載を求める方向で審議されています(資料1参照)。

 また、「②業務継続に向けた取り組み」に関しても同様に、運営基準に業務継続に向けた計画等の作成を盛り込むことが審議されています(資料2参照)。

 このように、運営基準を厳しくしていくことにより、事業所の負担が増すのは間違いありません。当然そこへの配慮はなされるはずですので、この部分だけ抜き取ると基本報酬を増やす可能性も否定できません。

 しかし、後述しますが、今回の改定は加算の拡充がかなり大きいので、そちらに焦点を当て、基本報酬にはあまり触れないのではないかと筆者は考えています。

2)地域包括ケアシステムの推進

主な論点(方向性)
①認知症専門ケア加算
②行動・心理症状への対応力の向上
③認知症介護基礎研修

 地域包括ケアシステムの推進と銘打ちながら、なぜか認知症に関することしか審議されていないことに少々不思議さを感じる内容となっています。

 「①認知症専門ケア加算」は施設系サービスやグループホームを対象にしていましたが、その裾野を訪問系サービスまで広げようというのが主眼となっています(資料3参照)。

 これも前項で触れた加算拡充の一環です。

3)自立支援・重度化防止の推進

主な論点(方向性)
①介護の質の評価と科学的介護の推進(CHASE・VISIT)
②リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的な運用
③ADL維持等加算
④介護保険施設における口腔衛生管理
⑤栄養ケア・マネジメント加算の強化
⑥多職種連携における管理栄養士の関与
⑦通所サービス利用者の口腔機能の向上
⑧通所サービスにおける栄養ケア・マネジメント
⑨認知症グループホームにおける栄養改善
⑩寝たきり予防・重度化防止のためのマネジメント
⑪褥瘡マネジメント
⑫排せつ支援加算s

 今回の改定は、この項目に一番力が入っています。アウトカム評価が強化されていく流れになるでしょう。

 特に注目すべきは、「①介護の質の評価と科学的介護の推進(CHASE・VISIT)」です。ここでは、現行の加算をCHASE・VISITと紐づけてPDCAサイクルで回していくために、現行の加算の上段にCHASE・VISITと紐づけた内容を新設することが示唆されています(資料4参照)。

 更さらに、これまで本項目は『通所系サービス』のみで審議されていましたが、ここにきて『施設系・居住系サービス』も対象となっていることにも注意が必要です。これは、『施設系・居住系サービス』にもアウトカム評価を求められるということであり、2021年法改正は【科学的介護元年】となる可能性が非常に高くなってきました

 また、「③ADL維持等加算」も同様に、『施設系・居住系サービス』が対象サービスに含まれました(資料5参照)。

 本加算は、算定要件の緩和・簡略化と同時に単価を大幅に引き上げ、算定率の向上を図っていくのではないでしょうか。今後、本加算の重要性はかなり増していていく可能性が高いと考えられます。

 繰り返しになりますが、本項目のメインは「CHASE・VISITとの紐づけ」です。特にADL維持等加算は対象サービスも拡大されますので、今から算定の準備は必須と言えるでしょう。

4)介護人材の確保・介護現場の革新

主な論点(方向性)
①人員配置基準における両立支援への配慮
②介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴ
③職場環境等要件
④介護職員等特定処遇改善加算
⑤サービス提供体制強化加算
⑥ハラスメント対策
⑦夜間における人員・報酬(テクノロジー活用)
⑧通所サービスにおける栄養ケア・マネジメント
⑨認知症グループホームにおける栄養改善
⑩寝たきり予防・重度化防止のためのマネジメント

 本項目では、「⑤サービス提供体制強化加算」に上位区分ができるということが大きいでしょう(資料6参照)。

 加算要件として勤続年数が新たに追加され、介護職員等特定処遇改善加算との整合性を取ろうとしているように感じます。

5)制度の安定性・持続可能性の確保

主な論点(方向性)
①区分支給限度基準額の計算方法
②訪問介護 生活援助が多い利用者等への対応
③サービス付き高齢者向け住宅等における適正な介護保険サービス提供
④福祉用具貸与・販売種目の在り方

 今回の改正では、「利用者負担の更なる見直し」や「軽度者へのサービスの地域支援事業の移行」などが見送られたため、こちらも項目は比較的おとなしい内容となりそうです。

 しかしながら、「②訪問介護 生活援助が多い利用者等への対応」や「③サービス付き高齢者向け住宅等における適正な介護保険サービス提供」のように、締め付けが厳しくなる要素ももちろんありますので、該当事業所は注意が必要です(資料7参照)。

 

3.まとめ

 2021年改正の内容はかなり見えてきました。当初は小幅な改定とみられていましたが、アウトカム評価の拡大や科学的介護の本格導入など、インパクトのある改正となりそうです。引き続き審議内容に着目していきましょう。