【はじめに】
4月17日、散りゆく桜と共に緊急事態宣言が全国に発令されました。日本は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染との戦いにおいて重大な局面に立たされています。各地に感染が広がる中、無症状の感染者もいることを考えると、もはや誰もが新型コロナウィルス(COVID-19)と隣り合わせのなかで生活をしていると言っても過言ではありません。
不要不急の外出自粛(ステイホーム)要請により、一人暮らしの人は孤独感や不安、家族暮らしの人は困惑、疲れなど、それぞれ置かれた環境の中でネガティブな感情が日々積り積もっているのも実情です。
そして、その不安や疲れ、ストレスから、客(患者)から従業員(医療スタッフ)に対して悪質な苦情が増加し、深刻化しています。
また、新型コロナウィルス(COVID-19)に関した職場での嫌がらせが頻発。労働組合には「コロナハラスメント」と被害を訴える声が相次いでいるそうです。(出所:令和2年4月20日付 河北新報夕刊)
このように矛先を固定できないのが怒りの感情です。新型コロナウィルスの余波をこれ以上拡げないためにも、アンガーマネジメントで、この非常事態をみんなで乗り切っていきましょう。
1.アンガーマネジメントとは
人間は、怒るとつい感情任せに大声で怒鳴ってしまったり、ドアを強く閉めてしまったりするなど、反射的・攻撃的言動を取ってしまいがちです。
アンガーマネジメントでは、このような怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングを行います。決して怒らないようにするためのものではなく、「あのとき怒らなければよかった」「あのとき怒っておけばよかった」と、怒りの感情で後悔しないことを目指しており、大切なことは、「怒る必要のあること」と「怒る必要のないこと」を見極め、上手に怒れるようになることです。
他人を傷つけず、自分を傷つけず、モノに当たらず、怒る必要のあることは上手に怒れるようにトレーニングしていきましょう。

2.不安・ストレスとの上手な付き合い方
人間はストレス要因となる刺激・圧力を受けると、それらに対抗して、心、身体、行動にいろいろな反応が生じます。
これは、自分の安心・安全が脅かされそうになったとき、怒りの感情でそれを瞬時に守ろうとする本能です。つまり、怒りは身を守るための防衛感情なのです。
そして、怒りは第二次感情であり、怒りの陰には不安、苦しい、心配、困惑といったネガティブな感情が隠れています。そのネガティブな感情のことを第一次感情といいます。

第一次感情がどんどん大きくなり、形を変えたものが怒りの感情です。
不安・ストレスとの上手な付き合い方は、今感じている不安やストレスが、「自分でコントロールできるのか、できないのか」を見極め、問題解決志向で考えることです。未だ起きていないことを「こうなったらどうしよう」「こんなことがおきたら大変だ」とマイナス思考であれこれ悩んでいても、解決しないばかりか、ますますストレスが大きくなる一方です。
ここで、『不安ログ』のフォーマットを使って、不安(ストレス)に感じていることを整理してみましょう。
【不安 ログ】
○効果・メリット
今、不安(ストレス)に感じていることについて、2つの視点から、客観的に考えられるようになる。
○使い方
1)フォーマットを使って、自分の不安(ストレス)を次の2つの視点で考える。
①自分の人生において重要か/重要でないか
②自分の力でコントロールできるか/できないか)
2)今、感じている不安(ストレス)は、4つの箱のどこに当てはまるか、その対処法を考える。
自分がコントロールできないものは受け入れ、自分がコントロールできるものは積極的にコントロールしましょう。

3.こんな時こそアンガーマネジメント!実践例
〈先の見えない現状に不安がある!〉
毎日、新聞やTVのニュースを通して新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の情報を見聞きするたび、「社会・経済的、健康への影響は今後どうなっていくのだろう」と先の見えない現状に不安を感じている人が多くいることでしょう。
しかし、不安は抽象的で無限です。それよりも、今起きている現状を受け入れ、そのうえで解決に向けてやるべきことを考えるほうがより具体的で有限です。
こんなときは、『グラウディング』や『イメージリラクゼーション』で、不安が解消するよう努めましょう。
【グラウディング】
○効果・メリット
自分の中で怒りが大きくなる過去や未来から解放され、怒りを大きくさせない。
○使い方
1)目の前にある何か(ペンや時計など)を手にする
2)それに意識を集中させ観察する
3)色は?形は?材質は?ブランドは?・・など、
意識を今、目の前にあるもの、居る場所に集中させる。
【イメージリラクゼーション】
○効果・メリット
リラックスできる場面をイメージすることで、心が落ち着き、気持ちをリセットできる。
○使い方
太陽の暖かさ、風の心地良さ、静かな波の音など、心地良い感覚をイメージ、身体で感じリラックスする。
〈こんな時に外出するなんて非常識だ!〉
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の防止策として、政府や自治体では「3つの密(密閉・密集・密接)」を避け、不要不急の外出自粛を繰り返し呼びかけています。
一部では、「自分は感染しないから大丈夫!」という誤った認識のもと、要請を無視して3密の場所で長時間にわたり飲み歩く人がいることも事実です。しかし、その少数派の人たちに対してどんなにイライラしても腹を立てたとしても、身内であれば止めることも可能ですが、一般的には他人をコントロールすることは難しいでしょう。

怒りの正体は、「こうあってほしい」という自分の理想や願望、「○○するべき」と考える自分にとっての常識・当たり前が裏切られたときに発生します。つまり、怒りは自分が生み出す感情なのです。
これには、自分の意味づけである『コアビリーフ』が深く関係しています。コアビリーフとは、自分が正しいと信じていること、譲れない価値観などを指します。
こんなときは、自分の歪んだコアビリーフを書き換える『3コラムテクニック(3段階法)』がおすすめです。
【3コラムテクニック】
○効果・メリット
第三者の視点で自分が大切にしているコアビリーを見つめることができる。
○使い方
フォーマットに次の3つの項目を記入する。
1)はじめに思ったこと
出来事が起き、そのイライラしたときの感情を書く
2)コアビリーフの歪み
はじめに思ったことから考えられる、あるいはそうではないかと思うコアビリーフの歪みを書く
3)リフレーム(書き換える)
どのようにそのコアビリーフを書き換えれば、自分や周りの人にとって長期的に幸せで
健康的になれるかを考え書く
自分の歪んだコアビリーフを書き換えてみることで、「非常識だ!」と、激怒していた怒りの感情がやわらぐことでしょう。

〈この非常時に仕事をしている自分にイライラする!〉
自分の健康、いつ感染するか分からないリスクをかかえながらも、在宅勤務できない、休めない、人のために・・と最前線で昼夜問わず仕事をされている方も多くいます。特に、医療機関の現場は、もはやひっ迫した状態にあることでしょう。
「仕事をしている自分にイライラする!」 という状態は、不満や疲れ、ストレスでパンパンに膨らんだ、いつ破裂してもおかしい風船を背負いながら仕事をしているようなものです。質の高い仕事は期待できないでしょう。
結局は、うっかりミスが発生したり、報・連・相不足で職場の人間関係がギクシャクしたり、笑顔もなく相手を不快にさせてしまったりと、負の連鎖が起きてしまいます。まずは、疲れた心身のケアに努めましょう。
例えば、疲労回復のために良質な睡眠やバランスよい食事(1日3食)をとり、アロマセラピーや入浴、深呼吸、ストレッチなどでリラックスしてみる。そして一人で考え込まず、家族や友人、先輩などに話すことが大切です。
また、このような状態では、アンガーマネジメントの『ポジティブセルフトーク』というテクニックの活用もおすすめです。
【ポジティブセルフトーク】
○効果・メリット
特定のプラス思考メッセージを自分に言い聞かせることで、自分を元気づけ気持ちを高揚させる。
○使い方
自分が元気になるフレーズを作っておき、イラッとしたときや腹が立ったときに、それを唱える。
例)「成長できるチャンスだ」「私ならきっとできる」「涙があるからこそ、私は前に進める」…など
【おわりに】
私たち国民は、今、「安心・安全リスク」「経済的リスク」「心理的リスク」の3つのリスク(将来のいずれかのときにおいて悪い事象が起こる可能性)に直面し、これらが国民の不安を煽り、情緒不安定な状態をつくっています。
新型コロナウィルス感染の余波を拡げないためにも、今こそ一人ひとりがこの非常事態を受け入れ、自分の感情と行動に責任を持って毎日過ごしていきたいものです。
アンガーマネジメントで怒りの連鎖を断ち切っていきましょう。
参考文献:一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 テキスト |