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この時期に最前線で活躍されている皆さまへ

井上ウィマラ

マインドフルライフ研究所オフィス・らくだ 主宰
元・高野山大学 教授/元・健康科学大学 教授

2020.4.23 更新

新型コロナウィルス蔓延を生き抜くための情報ガイド


《1》

 まずはコロナウィルスについて知りましょう。Youtubeにアップロードされている近畿大学医学部免疫学教室教授の宮澤正顯教授による新型コロナウィルス対策講座「感染症の時代を生きる」がとてもコンパクトかつ明晰に今回のウィルスの特徴を説明してくださり、その上で今何ができるかについて教えてくれます。
 最後の新入生に向けたメッセージ「皆さんの正しい行動が、あなた、あなたの家族や大切な人の命を守ります…近畿大学生としての自覚ある行動をしましょう。すべての人の命のために」という言葉が胸にしみます。
 「集団免疫」という言葉に注目してください。次につながるキーワードです。
(https://www.youtube.com/watch?v=aD_vMFWUf8Y)




《2》

 ワクチンが開発されるまでの間、私たちは何を信じて待てばよいのでしょうか?この時期なぜ外出を自粛しなければならないのか、その目的を明確に知りモチベーションをしっかりと持つことが、この厳しい時をみんなで力を合わせてのりこえるための重要な条件になります。
 次の情報は、笹川保健財団会長の喜多悦子さんのブログ「コロナウィルス蔓延との戦い」です。ここで集団免疫の意味が分かりやすく説明されています。生物の大きさを比較する図表が入っていたりして、小学校高学年からの教材としても使えそうです。
(https://www.shf.or.jp/blog_chair/8004)



  


《3》

 今、医療現場では何が起こっているのでしょうか? オーバーシュート(感染爆発)、医療崩壊という言葉が飛び交っていますが、どのようにして医療現場が崩壊してゆき、崩壊してしまうと何が起こるのでしょうか?
 次は諏訪中央病院総合診療科の玉井道裕医師による「新型コロナウィルス感染をのりこえるための説明書(続)」です。茅野市のHPからもダウンロードできるようになっています。マンガで子どもにもわかるように巧みに説明されています。特に18頁の「花を咲かせられないのなら根を伸ばす」の図は秀逸です。「人生会議」という言葉が出てきますが、地域医療に力を入れてきた伝統を感じます。トリアージュをしなければならない医療サイドのこころの痛み、看取れず遺体にもご対面できない家族の心の痛みを予防するためにも大切になるテーマです。
(https://drive.google.com/file/d/1f4v5DsQ4fb_2ujwuTlC4e_wMZ8lh1gM7/view)



     


《4》

 身近に感染患者が出たり死亡者が出たりすると、私たちは不安になり、その人や家族を遠ざけたいと思い、差別する心が生まれてきます。これはある意味で自然な心理なのかもしれませんが、こうした心の動きに無自覚でいると「病気→不安→差別」という悪循環が生まれ、集団としての結束が断ち切られ、コミュニティーの力がそがれてしまいます。集団的レジリエンスが低下してしまうと、ウィルスがさらに猛威を振るいやすい環境を作ってしまうことになります。
 日本赤十字社が出している「新型コロナウィルスの3つの顔を知ろう!負のスパイラルを断ち切るために」は、コロナウィルスがもたらす心理的影響や社会的影響を知り、備えるために必要な情報を提供してくれます。小・中学校の道徳や社会科などの授業で活用してほしいと思います。
(http://www.jrc.or.jp/activity/saigai/news/200326_006124.html)



  


《5》

 学校が休校になり、自宅で過ごすときに何をしたらいいのか悩んでいるご両親は少なくないと思います。そんな時にぜひ親子で読んでほしい絵本が「しんじゅがいとチョウチョのおはなし:コロナウィルスとわたし」です。
 著者のアナ・ゴメスさんはEMDRというトラウマ治療法を専門とするセラピストで、子どもの発達過程で発生するトラウマを防いだり癒したりするにはどうしたらよいのか、その具体的な手法をこの絵本の中に埋め込んでくれています。
 年中さんから小学校2年生くらいの子どもたちに読み聞かせてあげてほしいのですが、その前にゆっくり一読してみると、大人にとっても学ぶことが少なくない、こういう時のための大人の絵本でもあります。
(https://www.anagomez.org/wp-content/uploads/dlm_uploads/2020/04/OysterandButterfly-Japanesev2.pdf)




《6》

 医療現場をはじめとする最前線で働いてくださっている専門家の皆さん、仕事の調整をして子どもたちの面倒を見てくださっている親御さん、皆さん本当にありがとうございます。多様な現場のストレスに押しつぶされないためにはどうしたらよいのでしょうか。個人としてできることだけではなく、組織として取り組むべきこともあります。
 「頑張りすぎるな!」ということが無理な状況も多いでしょうが、できるだけ休みを取るようにして、つぶれてしまう寸前まで頑張っている仲間が少しでも休めるように、みんなで工夫してゆきましょう。
 そのためのガイドラインを日本赤十字社が「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対応する職員のためのサポートガイド」として作ってくれました。動画サイトもあります。様々な現場での痛みを通して学ばれてきた知恵を、それぞれの領域で広めてゆきましょう。
(http://www.jrc.or.jp/activity/saigai/news/200330_006139.html)



   


《7》

 最後にご紹介する情報は、私が東日本大震災以来JDGSという災害支援活動を共にしてきた畏友瀬藤乃理子先生のチームがWHOからの依頼を受けて翻訳してくださった資料「新型コロナウィルス流行時のこころのケア」です。
 これはサイコロジカル・ファーストエイドに基づいており、こうした取り組みを日常に常備してゆくことがさまざまな災害に対応してゆける社会を作り上げてゆく作業になると信じています。私が最初に配布を開始した資料ですが、なかなか受け入れてもらえず、どうしたらこの情報が理解され利用して頂けるだろうかと試行錯誤する過程で上記の6つの情報に出会いました。
 政治家とそのブレーンの皆さま、各界のリーダーのみなさま、子ども、高齢者や障害者のストレスを理解しどのように支援したらよいのかを具体的に知っておくことは、国民や社員を守ることにつながり、ひいては国家や法人としてのレジリエンスを高めることにつながります。
 このような緊急事態の中で各種の判断をしてメッセージを伝える時に何が大切なのか、どのように工夫したらよいのかについても記述されています。様々な支援を学ばれる皆さんのテキストとしても使っていただけるのではないかと思っています。
(https://interagencystandingcommittee.org/system/files/2020-03/IASC%20Interim%20Briefing%20Note%20on%20COVID-19%20Outbreak%20Readiness%20and%20Response%20Operations%20-%20MHPSS%20%28Japanese%29.pdf)



 最後に、私たちがどのようにしてこの危機を乗り越えてゆくかが、新型コロナウィルスの流行が終息した後にやってくる社会を作り上げてゆくのです。
 未来のためにも、厳しい現実から学びつつ、自他への思いやりを忘れず、力を合わせて切り抜けてゆきましょう。


2020.4.12.
文責
:井上ウィマラ